**** 『りぼん』と新人漫画家の関係 ****

  『りぼん』のデビューシステムは、りぼん新人漫画賞の2部門化(2000年12月号)、りぼん漫画スクール2001の開始(2001年1月号)と変革期を迎えています。
『りぼん』では、1967年の「りぼん新人漫画賞」の創設を期に、新人の育成に力を注ぎ、今までに多くの才能あふれる漫画家を世に送り出してきました。雑誌内のマンガ賞でデビューした人以外は、『りぼん』に作品を発表されることはほどんどなく、『週刊少年ジャンプ』は徹底して新人育成し起用する編集方針のようですが
(「マンガ界のウラの裏がわかる本」「さらば、わが青春の『少年ジャンプ』」)、似たような方針を『りぼん』も取っているものと考えると、『りぼん』にとって新人を育成することはどんなにか大切であるか想像できると思います。

発行部数と新人漫画賞応募数の関係

  上記は、1984〜2000年の発行部数とりぼん新人漫画賞の応募数(注1)の関係を表したグラフです。発行部数と新人賞応募数の変化の波には共通点があるようです。ただし、漫画スクールの方の応募数は増加の傾向にあるようです。

        1984 1985 1986 1987 1988 1989 1990
デビュー数 - - - 9 6 7 10 7 7 7
デビュー率 - - - 1.8 1.0 1.3 1.2 0.9 0.9 1.0
  1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000
デビュー数 12 16 15 21 14 9 13 19 9 9
デビュー率 1.4 1.5 1.6 1.9 1.2 1.3 2.2 2.6 1.5 1.3

  上記は、『りぼん』でデビューした人数とデビュー率(注2)を表にしたものです。新人賞応募数が増加していた時期には、デビュー率は下がるのではなく反対に上昇していました。そのあおりで、1998年は2.6%だったデビュー率は、1999年は1.5%と急激に低下する反動がでましたが、2000年は1.3%と落ち着きを取り戻しつつあります。 

『りぼん』と新人漫画家の関わり デビュー
:デビューした人数

単行本
:単行本を発行した漫画家の数

本誌掲載
:『りぼん』本誌に作品が掲載された漫画家の数

本誌連載
:『りぼん』本誌で連載をした漫画家の数

  上記は、1984年〜2000年にデビューした漫画家と『りぼん』での活躍を示したグラフです。(2001年1月号現在)『さらば、わが青春の『少年ジャンプ』』文庫版と組織論のようなものにあるように、デビュー3年以内である1998年以降にデビューした漫画家は未確定要素が多いので、1984〜1997年にデビューした漫画家と『りぼん』での活躍について考察していきます。

  デビューした漫画家がメジャーになるには、3つの段階があると私は考えています。

  1. 単行本を出すこと
  2. 『りぼん』の本誌で作品を発表すること
  3. 『りぼん』で連載を経験すること

たとえ、デビューを果たしたとしても単行本を出すこともなく、本誌に作品を発表することなく消えてしまえば、その漫画家は読者の記憶に残ることなく、忘れ去られてしまうものなのです。

  グラフによると、「本誌掲載」は「デビュー」と比例関係にあります。新人漫画家に対して一定にチャンスを与えていることがわかります。しかし「本誌連載」は、各年度ごとに3人前後でほぼ一緒です。つまり、「デビュー」が多い年度であっても増えることはなく一定であることから、活躍することない漫画家の割合が1980年代の後半よりも増えていることとなります。

  また、『りぼん』漫画家デビューリストを見てみると、『りぼん』で活躍中の漫画家の割合は、1994年デビューと1995年デビューとの間に開きがあります。また、活躍中の漫画家は「単行本」を出している漫画家がほとんどであることから、『りぼん』で活躍しつづけるためには、“デビューから5年以内に単行本を出す”ことが最低条件だといえます。

  『りぼん』に投稿している方のHPから察するに、『りぼん』はマンガ賞での講評を非常に細かく丁寧に行っているようです。しかし、丁寧であることだけが漫画家を目指す少女にとってためになるのか私は疑問に思います。

  1984年の「りぼん漫画スクール」を見て愕然となったことがあります。講評は今とは比べものにならないくらい厳しいのです。例として、矢沢あい先生で挙げたいと思います。矢沢先生が投稿歴が長いのは知っている人が多いと思います。最初はCクラスだったのは有名な話です。
さて、1984年の12月号に発表されるりぼん新人漫画賞でデビューする矢沢あい先生はりぼん漫画スクールに投稿を重ねていました。デビューする前の1984年5月号のりぼん漫画スクールにこんな記述がありました。

175回の作品批評を始める前にちょっと一言

175回の作品審査を通して、私たち編集部はちょっと考えさせられてしまった。今回の入賞はもうひと息賞10編である。その10編のうち6人までが数度の受賞歴を持ち、努力賞も受賞している。6人の才能を評価し、私たちは「期待」していたのである。が、なぜか、足踏み状態がつづいている。確実に上達はしているが、何度も指摘した欠点を直せないでいるのだ。私たちの批評に至らない所があったのだろうが(反省しよう)それにしても進歩が遅い。批評をもう一度読み直してほしい。欠点から目をそらさずに、立ち向かってほしい。克服する力はあるはずだ。あせらずに、質の良い作品を描くことです。
じっくりと考えてもらう意味で「問題の人々」を次の436Pでまとめて批評してみた。なお誌上批評には限界があるので、6人には担当編集者をつけた。頑張って下さい。

熱意あふれるコメントです。編集部の新人に対する並々ならない意気込みに驚きました。同年9月号のさくらももこ先生の作品への講評でも、講評の文が枠を飛び出すほど気合が入っていました。
そして、「問題の人々」と指摘し講評するとはなんて厳しいのでしょう。ちなみに、指摘を受けた方は全員「もうひと息賞」です。りぼん漫画スクールでは、「もうひと息賞」は投稿者の中で上の方に位置する方々です。その「問題の人々」に矢沢先生は筆頭に出てきます。
それ以前に矢沢先生は、何度も努力賞を受賞しており、初投稿であればその投稿作品も努力賞だったと思います。それを「もうひといき賞」に落として一喝しているわけです。

あい君の欠点のストーリー性のなさ(濁点つきで強調)と、キャラの個性のなさ(濁点つきで強調)は今回も克服できていない。何回となく指摘したのにどうにもうまくいかない。この失恋話は構成が単純すぎる。
今回は、絵の進歩があまりみられない。しっかりしたペンタッチで丁寧に描いてみよう。絵もムードに流れるな。

と書かれてありました。「辛口批評でいくぞ。」の言葉どおりのコメントです。
私は、この状況に立たされて投稿を続けられたというのは、矢沢先生は、プロ意識がすでにデビュー前からかなり出来ていたのではないかと感じました。

  また、以前は漫画賞での受賞作品が必ずしもデビュー作品になるわけではありませんでした。吉住渉・森本里奈・長谷川潤・小花美穂各先生は書き直した作品がデビュー作です。漫画賞で入賞したとしても、デビューが保証されてはいなかったのです。
新人の作品作りには時間がかかるといいます。「さらば、わが青春の『少年ジャンプ』」によると最低でも10回の打ち合わせをするとありました。多くの場合は、そこまでいかなくてもやはり手間がかかると思います。それでも描き直しをさせているということは新人をまさに「育てる」という気持ちがあるからだと思います。

  しかし、ここ5年は、受賞作は即デビュー作になります。『りぼん』に増刊号が出たり、オリジナルも隔月化されたりと誌面に余裕が出たことが一つの理由だと思いますが、不安に感じる部分です。もちろん、マンガ賞での上位入賞者は、デビューとならなくても、担当編集者が付き、指導をを受けているでしょう。そのような人のデビューが決定したとしても、あくまでもデビュー前のことです。りぼん新人漫画賞では準入賞、りぼん漫画スクールでは準りぼん賞以上とかの上位入賞者以外には、即デビューではなく作品を指導するべきなのではないかと感じます。

  小花美穂先生のコミックスのフリートークで、さくらももこ先生のアシスタントをしていたときに、デビューの話が来なくて不安で、さくら先生に励まされたエピソードがありました。小花先生には、さくら先生からデビュー前の微妙な時期に様々なことを学んだことが、今の小花先生にとっても大切な部分を占めているのではないかと私は感じました。デビューしてからも、新人は作家のところにアシスタントに行きますが、その前にするという体験も学ぶ事が多いのではないかと思います。デビューが漫画家にとってのゴールではないのですから急ぐ事はないと思います。

  本誌で連載できる漫画家の割合は変わらないのに、漫画家の人数は増加しています。もちろん、たくさんの漫画家が限られた掲載ページを求めて切磋琢磨しているのなら、よりいい作品が手元に届くかもしれません。しかし、数だけ多いという状況にならないとも限らないのです。今以上に関連誌が増えるという事は考えにくいことですし、かつてのような発行部数に戻ることもないでしょう。厳しい状況の中で、漫画家には高いモチベーションを持って作品の制作に当たってほしいですし、新人を使い捨てにしないような状況が必要だと思います。

  最後に、『りぼん』の新人に対する熱い想いを表すコメントを2つ紹介します。まず、具体的にどのような新人を『りぼん』では望んでいるのかについては、「少女コミックを描く」(P88)の『りぼん』元編集長(現『コミッククリムゾン』編集長)、山田英樹氏のコメントに以下のようにあります。

見やすくて好感が持てる絵であること、そしてオリジナリティ。これが入選作品を選ぶポイントです。絵がダメでもストーリーが面白ければ残します。その逆も残します。(中略)
  今漫画を描いている人達には、いわゆる「漫画バカ」にはならないでほしい。(中略)漫画がのびる人というのは、いろいろなことに関心を持っていますね。
  才能のある作品というのは突然でてくるものなんです。こちらの計算通りには上手くいかない。だからこそいつも目をこらして若い人の投稿作品を見ています。才能を見つけて伸ばしていくのがこちらの仕事ですからね。

また、『プ〜タオ』2000年冬の号(P66)で『りぼん』編集長、今井鈴人氏のアンケートで解答に以下のようにあります。

「新人作家で、期待されているまんが家は?」
・・・ここ2〜3年にデビューした新人群。

  私が『りぼん』を買いつづける理由の一つに、新人がキャリアを積み、真に実力をつけていく過程を見る楽しさがります。「目新しさ」だけが武器の新人が、どのように読者の心を掴んでいくかという漫画家の成長を見るのは楽しいことです。
  『りぼん』では新人漫画家は優遇され、チャンスを与えられます。しかし、デビューして3年経てば新人漫画家として優遇されることはなくなります。進化を続けない(深めていけない)漫画家は、『りぼん』では次々にデビューする新人に押され、生き残ることはできません。その厳しさをどのように力に変えていけるかどうかが漫画家に求められています。『りぼん』はデビューことも難しいのですが、何よりも生き残ることが難しい雑誌なのです。

(注1)
りぼん新人漫画賞は1987年度より年2回になりました。そのため、2回の新人賞の応募数を合計した値を、その年の応募数としています。また、2000年12月号(第47回)より、ストーリー部門と、4コマ&ショートギャグショートストーリー部門に分かれましたが、2つの部門を応募数を合計した値を応募数としています。

(注2)
デビュー数には、漫画スクールでのデビューも含まれていますが、デビュー率は、(デビュー数÷新人賞応募数)×100で算出しています。


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