雑誌記事

6.2003年2月号『出版月報』〜「コミック市場最新動向」について

「Love Dream Smile」は『りぼん』のファンサイトです。しかし、私は『りぼん』の出身漫画家である一条ゆかり(『りぼん』におけるピーク時期:70年〜90年)・太刀掛秀子(『りぼん』におけるピーク時期:74〜82年)・本田恵子(『りぼん』におけるピーク時期:83〜86年)のファンサイトや、『りぼん』の大人気連載作品であった「ときめきトゥナイト」(82〜94年)に関する文章、少女マンガの発行部数等(過去15年ほど)も取り上げているページを持っています。

サイトの紹介をしていただいたり、掲示板や日記でサイトを取り上げられることがよくあるのですが、取り上げられている内容を見るとむなしくなる時がたまにあります。それは、

「昔の『りぼん』は素晴らしかった。今の『りぼん』はつまらない。」

という論調のものが少なからずあるからです。

私は「また会う約束」で、『りぼん』をいろいろな時期に関して、様々な角度から取り上げようとしています。この運営方針が、逆に『りぼん』の元読者に過去の『りぼん』への懐かしさだけでなく、今の『りぼん』への不満へつながってしまうようです。

2003年2月号『出版月報』の「コミック市場最新動向」の記事をキーワードにから、現在の『りぼん』の取り巻く環境、『りぼん』内で起っている変化についてまとめておきたいと思います。

2003年2月号『出版月報』の「コミック市場最新動向」では

<トピックス>
(略)「雑誌は長期低迷、単行本は横ばい」。コミックス市場を一言で表すとこういう状況だ。つまり、「コミックス雑誌は買わなくなったが、コミックス(単行本)は買う」という読者が増えているのだ。(略)コミックスを一気に読む楽しみを知った読者が、連載形式のコミック週刊誌やコミック月刊誌など定期雑誌から離れつつあることだ。(略)
『出版月報』(2003年2月号)P4より

<コミックをめぐる諸問題>
少子化が進む若年層において懸念されるのがコミック離れだ。(略)これまで確実に下から底上げしてくれた小学生の読者は、コミックに対し、情熱を持ってないからだ。ゲームもコミックもアニメも同格で、どちらが上ということがない。そのとき面白いのが上位という程度だ。テレビアニメ化も効果は薄れてきた。(略)
『出版月報』(2003年2月号)P11より

と、(1)「マンガ雑誌の定期購読性の低下」、(2)「読書スタイルが雑誌からコミックス(単行本)へシフト」、(3)「若年層のコミック離れ」ある事実が指摘されています。

『りぼん』では、昨年9月号に発行部数を『ちゃお』に抜かれトップから陥落しました。現在の『りぼん』がいかに厳しい状況にあるかを示すデータとして、発行部数ほど明確に表れている部分はないと思います。細かく見ていきます。

2002年12月号の『出版月報』の

子供向けは月刊誌が同2%減。小学生の女の子がメイン読者の『ちゃお』が9月号で推定発行部数が100万部を突破し、『りぼん』を抜いてジャンルトップ誌となった。『なかよし』は下げ止まったが、『りぼん』は厳しい。この3誌合計の発行部数は、このジャンルピーク時(92〜93年)には毎号500万部あったパイが現在250万部にまで縮小した。少子化に加え、娯楽の多様化、ファッションに興味が向くなど、コミック誌以外の楽しみが増えたことが要因。
『出版月報』(2002年12月号)P17より

と、雑誌発行部数から見えるもの発行部数最新データ

『ちゃお』はいまだ絶好調で、ついに80万部を突破し、推定82万部となった。『なかよし』は、付録効果が成功し、同52万部。『りぼん』は同126万部で前年よりも約10万部部数減。
『出版指標年報』(2002年4月25日発行)

から、各雑誌の部数は、『ちゃお』100万、『りぼん』95万、『なかよし』55万と推定できます。
そうなると、『りぼん』の発行部数は、
2001年4月136万部→2002年4月126万部→2002年9月95万部
と、1年半で40万部、特に2002年には半年で30万部も減少したことになります。にわかには信用できない数値です。

さらに、

(略)「新しい才能がコミック界に入らなくなったときが怖い」とは以前から囁かれてきたが、その怖れが現実になってきたようだ。絵は上手だが、ストーリーテラーとしての質が低下しているというのだ。したがって、大部数を刊行する雑誌は部数安定のために、実績ある作家を再々起用することになる。これは、従来の読者には読まれるが、新しい読者にとって魅力ある雑誌に移らない。
『出版月報』(2003年2月号)P8より

と(4)「新人作家の質の低下と、実力作家を起用した雑誌の伸び悩み」が指摘されていますが、『りぼん』においてはどうでしょうか?

新人作家の起用、若手作家の抜擢は、

  • 2001年11月号〜2002年1月号「泥棒リング」(加月るか)
    本誌初登場、初連載→以降、本誌未掲載
  • 2002年2月号「無限♪ハートビート」(日河まゆき)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2002年5月号「ドキドキのおまけ」(福米ともみ)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2002年8月号「ナチュラルビューティー」(おおいま奏都)
    本誌初連載→以降、本誌未掲載
  • 2002年9月号「いちごオムレツ」(半澤香織)
    本誌初登場、初連載→連載中
  • 2002年10月号「ともだちだから…」(ミトウナオキ)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2002年11月号「侍ダーリン」(春田なな)
    本誌初登場、初連載→2003年5月号「いとしのご主人さま」初巻頭カラー連載開始
  • 2002年11月号「駆けぬけて青春」(いしだ彩)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2002年12月号「キラキラリン!」(武内こずえ)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2003年1月号「家出のつもり」(萩わら子)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2003年2月号「永田町ストロベリィ」(酒井まゆ)
    初巻頭カラー連載開始
  • 2002年2月号「チュキ・チュキ・CHU!」(樫の木ちゃん)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2003年2月号「ホップ☆ステップ」(水樹菜緒)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載
  • 2003年3月号「あいごころ。」(桜原あくる)
    本誌初登場、読み切り→以降、本誌未掲載

と、デビュー間もない新人の本誌掲載が多く(武内こずえ、萩わら子、水樹菜緒、桜原あくる)、酒井まゆ先生や、春田なな先生のように一気に本誌常連の仲間入りした作家がいるなど、若手の抜擢・活躍が比較的目立っているように感じます。
ただし、読みきりを掲載した作家の中で、本誌連載を今後出来る人は半分にも満たないでしょうし、さらに連載の常連になるのは非常に厳しく、1、2人いれば良い方なのが現実です。
そのため、少ないキャンスを、フレッシュさだけでデビュー間もない新人に与えるのではなく、デビュー間もない新人はアンケートでとてもよかった人以外は避け、デビュー3〜5年目の新人漫画家の人気度合いを冷静に判断し、キャンスを与えてほしかったなとも感じました。
とはいえ、若手に活躍の場を与えても部数にはまったく反映されないものなので、若手の抜擢をするには、強力な本誌連載陣があってこそ成り立つものであることを露呈していたように感じます。(「グットモーニング・コール」、「GALS!」の穴を、新人で埋めていたわけですが。)

ここで指摘されている問題は、まだ本誌連載の経験のない無名の新人作家のことを言っているだけでは当然ありません。雑誌の枠を超えてヒットする作品を持つ若手の作家のことも指していると思います。
これについては、現在の『りぼん』の看板作品「愛してるぜベイベ★★」(槙ようこ)が当てはまると思います。これについては、槙ようこ先生、猛プッシュ!で指摘したように、プッシュされているわりに、単行本の売り上げはイマイチです。“絵は上手だが、ストーリーテラーとしての質が低下”という部分も、槙先生そのものという感じてしまいました。槙先生は、悪くはないと思うのですが、『りぼん』を引き上げたり、引っ張るほどのものは、まだまだまったくもってない状況です。
「愛してるぜベイベ★★」第2巻から、担当編集者がとうとうM、つまりモリーへバトンタッチしたようです。)

では、昨年からの大抜擢で本誌常連作家になった、酒井まゆ先生、春田なな先生について私が考えている印象を書いておきます。

酒井まゆ先生は、とても落ち度のない作家だと感じています。新人特有のネームの違和感が少なく、コマ割りは少々読みにくい箇所もありますが、絵もオリジナリティーが出てきて、話のテンポもあり、新人離れしていると感じます。

ストーリー的にも、王道で読みやすいのですが、「ボクたちの旅」は、これは新鮮だと感じたものですが、「ナインバズル」「永田町ストロベリィ」と続くにつれ、どこぞかで読んだような設定の組み合わせと、毎度似たようなキャラに、エンタテイメント色をプラスしたような味付けに、新鮮味の欠ける印象を感じてしまいます。
落ち度がない分、酒井先生の生み出す新鮮さや、酒井先生しか持ち合わせていない絶対的なものが物足りないように感じてしまうようです。

酒井先生に不足していると感じるのは、ヒロインの周りの“女の子のキャラ”(友情と対立)と、“切なさ”(恋愛と生き方)。女の友情を描けないと作品は盛り上がりません。また、人生に対して前向きな印象が多く、非常にいいと思いますが、ヒロインが(ヒーローが)成長し、前向きに成長する過程の描き方がまだまだ甘く、特に“切なさ・苦しみ”の部分が弱いのでそこをつくって、盛り上げれば、さらにレベルの高い作品となっていくと感じています。

春田なな先生は、あまりにも普通すぎて、何かを指摘しようと思えばいくらでもできますが、指摘するのもつまらない箇所が多いように感じ、若い(高校生だ)ということ以外に、飛びぬけた印象はありません。とりたたて何が下手だというわけでもないので、普通にかわいい絵に、王道なおとめちっくなストーリーを淡々と読んでいます。

春田先生に関する事で最も印象的だったのは、漫画家志望の方からの話です。
彼女は、『りぼん』編集部へ持ち込みへ行ったところ、担当編集者に「今の『りぼん』の研究をするように」と言われ、春田先生の絵柄が今一番人気あるとのことで、春田先生のコミックスをもらったそうです。

本当に、春田先生の絵は一番人気があるのでしょうか?この漫画家と同じ絵がかけるというのならば、種村有菜・吉住渉・槙ようこ・酒井まゆ先生の絵柄の方がリクエストが多そうに思います。春田先生の絵が好かれる理由は、モーニング娘。が若い娘に人気があるのと同じように、自分でも慣れるかもしれない上手さ、親しみやすさがあるからのような気がします。

春田先生の印象は、強み、売り出され方の面で水沢めぐみ先生と重なります。(ちなみに、槙ようこ先生は吉住渉先生…2001年4月号の感想参照、酒井まゆ先生は椎名あゆみ先生…2001年9月号の感想参照

水沢めぐみ先生は、1979年高校1年生の時、「りぼん漫画スクール」で準りぼん賞でデビューされました。80年代初頭に、『りぼん』で何作が読み切りを発表。煽り文句は、「現役高校生」でした。
好きな漫画家が“りぼん乙女ちっく御三家”のひとり、太刀掛秀子先生ということもあり、ストーリーは王道をいく乙女ちっくもの。ただし、太刀掛先生のような人の抱える淋しさ・かなしさを浮き彫りにしたり、ドラマチックな展開のものというよりは、あくまでも温かさ、童話的な柔らかさ感じる作風の漫画家です。(アニメの方にも興味があったようで、「天空の城ラピュタ」等の宮崎駿監督作品の影響も感じたこともありますが。)

春田先生は、オリジナリティーという面で、これだという明確な形を掴み取ることはできません。長年、少女漫画で描き続けられてきたテーマを、今風のかわいい絵で、素直に描ける漫画家という印象です。
「侍ダーリン」の最終回、『りぼん』2003年1月号のP351の1コマ目「コレがオレの好きな亜美子」というセリフがありますが、まさしく、乙女ちっくの大原則「そのままの君が好き」そのままで、感動すら覚えました。
この法則は、少女マンガ最初の評論本である「花咲く乙女たちのキンピラゴボウ」(橋本治、著)の中で、“りぼん乙女ちっく御三家”のひとり、陸奥A子先生の評論の中で指摘された事柄で、少女マンガ評論本・風刺本のどれもに触れられている、少女マンガの基礎とも言える法則です。以前に、少女マンガにありがちのパターンという文章を書きましたが、その筆頭にも挙げています。)
春田先生の最大の武器はその素直さであり、最大の欠点は素直さだなと感じます。

『りぼん』では、新人作家の質が低下しているかは判断が難しいところです。上がってはないのは確かですが、急降下ということはないだろうとは思います。とりあえず、今後どう化けるはわからないけれども、新人は出て来ているという状況だとは思います。


逆にベテランの起用では、

  • 2002年4月号「ちびまる子ちゃん」(さくらももこ)読み切り
  • 2002年9月号別冊ふろく「ぴよぴよ天使」(水沢めぐみ)読み切り
  • 2002年12月号「ぴよぴよ天使」(水沢めぐみ)読み切り
  • 2002年12月号「ちびまる子ちゃん」(さくらももこ)読み切り
  • 2003年5月号「POCHI 〜MIKE編〜」(小花美穂)連載
  • 「ウルトラマニアック」(吉住渉)テレビアニメ化決定
  • 「桜ヶ丘エンジェルズ」(高須賀由枝)のプッシュ→早期連載終了
  • 「ペンギン☆ブラザーズ」(椎名あゆみ)連載早期終了→「ダイス」カラー落ち
  • 藤井みほな、新連載未定

と、新人と比較すると、“控え目・抑え目・落ち目”と感じられると思いますが、『りぼん』という雑誌は、私が知る30年間ずっと、新人優先できている雑誌なので、普通だと思います。
一番華やかなのは、「ウルトラマニアック」(吉住渉)のアニメ化、一番ポイントとなのは、小花美穂先生の『コーラス』進出だと思います。
小花先生については小花美穂先生フリーにで触れたので、個人的に注目している椎名あゆみ先生のカラー落ちについて触れておきます。

現在、私が現役の『りぼん』の漫画家で最も好きな漫画家が、椎名あゆみ先生です。
椎名先生がナンバー1となったのは、「ペンギン☆ブラザーズ」の番外編「3days」を読んだ時からです。私が『りぼん』を読みつづけているのは、間違いなくこの手の作品(“王道乙女ちっく作品・『りぼん』最新バージョン”ともいうべきか)が好きだからに他なりません。

椎名先生は、華麗なステップで『りぼん』の連載陣に加わり(先ほどにもあげましたが、2001年9月号の感想参照)、「ベイビィ☆LOVE」(1995年9月号〜1999年5月号)で『りぼん』で2番手までいきました。(前半は「こどものおもちゃ」・「ご近所物語」、中盤は「ミントな僕ら」、後半は「神風怪盗ジャンヌ」があったので、トップにはなれていません。)
急激な変化が起こったのは「ペンギン☆ブラザーズ」からでした。連載開始直後に連載休止。さらに、原稿が荒れ、原稿一部落ち(単行本ではスランプとのこと)。続いて、本誌打ち切り、『りぼんオリジナル』にて完結(中途半端という声も多数。)
2003年6月号にて連載が終了した「ダイス」は、明確に連載作品のカラー落ちでした。「ピーターパンの空」、「マインドゲーム」ではありましたが、それ以降はカラーが当然という位置でしたので、デビュー初の陥落という印象がする

私は漫画家を直感で、“漫画家としてのプロ意識”(マンガに対する取り組みだけでなく、読者との接し方、後進へのアドバイスを含めての総合値)と、“個人のプライドの高さ”の指標で判断することがあります。
私の考える椎名先生のイメージは、ぞれぞれ5点満点とすると、プロ意識3、プライド5という、漫画家としてよりも、個人的なプライドが優先されるタイプというものです。根拠としては、「ペンギン☆ブラザーズ」第5巻の「最後だから、もういいや。ぶっちゃけトーク」からがわかりやすいと思います。

その他の漫画家では、

種村:プロ意識2・プライド5
槙  :プロ意識4・プライド4
吉住:プロ意識3・プライド3
小花:プロ意識5・プライド3
亜月:プロ意識4・プライド2
酒井:プロ意識4・プライド3
倉橋:プロ意識3・プライド4

という感じです。漫画家同士を比較するよりも、主にどちらがどれだけ重いかを比較する私なりの指標です。

椎名先生は「プライド先行タイプ。上昇時期は、プロ意識も4レベルでしたが、スランプに陥ると、“スランプ≠天才肌”ですので、弱い面がでてプロ意識もダウン。」という印象を持っています。
椎名先生はスランプを乗り越えようとしていらっしゃいますが、私が作品を読んで気になるのは、全体的な荒さです。絵も構成もキャラも設定も。パワー・勢いがあれば、多少荒くても、ヒット作は生まれるものですが、パワーがない時の作品の荒さは見苦しいものです。

椎名先生は『りぼん』での第一線で活躍してきた漫画家としての証として、ここ10年長編を描きつづけてきました。椎名先生の変換しなければならないこととして、今までよりも全体をコンパクト、かつ濃密にする必要があると思います。コンパクトでよい作品を作るのは、荒さや無駄を省いていかなければならないと思います。椎名先生はすでに気づかれていることと思いますので、次回作ではこのあたりにも注目して読みたいと思います。

椎名先生は、『りぼん』をすぐに出ることはないと思いますが、どこに出られようと追いかけるつもりです。その価値・魅力は充分ほどある漫画家だと思います。

以上のように、「新人作家の質の低下と、実力作家を起用した雑誌の伸び悩み」という問題はなく、『りぼん』では「新人作家の抜擢の無計画さと、実力作家・ベテラン作家のの伸び悩みと再出発」というところだと思います。

今の『りぼん』は、コミック市場全体の流れそのものではありませんが、かなりの面で対応している部分もあるように思います。


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