『Cookie』2000年7月号感想

『Cookie』の発売日だった5月26日は、私の未来にとっての分岐点になったであろう日。
就職関係でいろいろあって、頭の中はぐちゃぐちゃ。『Cookie』を買っても、とても開くことなどできず、袋を明けず思考は他のところに飛んでいました。
買う前の期待はいろいろあったのですが、いざ発売されるとどうでもいいやと思ってしまっていますね。ぺらぺらっとめくった感じでは、“次号は買わない”という予感がする始末。
さて、この予想はどうなることやら。

◆矢沢あい「NANA-ナナ-」
感想は『Cookie』第2号と一緒でした。

「NANA-ナナ-」という作品には、「この作品面白くない〜」というのが言いにくい、ずるい作品だと思います。
矢沢あい先生はレベルの高い作品を、安定的に出せる作家ですが、私は「NANA-ナナ-」は、ここ10年の最近の矢沢あい先生の作品の中では一番興味をひかれません。
ずるいよな〜とか思ってしまうのです。

東京に生きる女の子を主人公とした有名な作品に「東京ガールズブラボー」(岡崎京子)があります。1980年代初頭、北海道から東京に出てきたニューウェーブと呼ばれた世代の女の子を主人公にスポットを当てた物語です。
本が描かれたのは1993年だったので、1980年代初頭の東京は時代が変わっていました。今は不況でもあり、古典を読む感覚に近いと思いますが、私は女の子の心の呟きに感動するものが多々ありました。

「NANA-ナナ-」は、岡崎京子先生の流れではなく、紡木たく・いくえみ綾先生の流れを汲んだ作品です。紡木たく・いくえみ綾先生の関係について触れられている詳論家は多いのは、いくえみ先生が今注目され、雑誌が『別マ』であったりと比べなくては評価できないからでしょう。
矢沢先生はいくえみ先生の影響も強く受けていらっしゃいますが、「NANA-ナナ-」を読むと紡木たく先生に近いと思ってしまいます。

現状までを見る限り、“自分のことををわかって欲しいけどわかってくれない→さみしい”という理由で反発しているヒロインは、誰かに頼らないと駄目な甘ったれに見え、周りから逃げてるだけに思います。現実に、そういうことを感じている娘が多いので、共感もされるのかもしれませんが、私はイライラしてきます。この感覚が、私が紡木たく先生の作品を読んだ時のイライラ感と一緒で苦しい。

途中、“人との関わりが下手な自己中心的なヒロイン”が、“周りを傷つけてばかりいたわがままな自分”に気付き、“周りへの思いやりとか感謝の気持ちを感じたり”したりして、読者は「すごく感動した」って人が出てきたりするのでしょうね・・・とか思ってしまっていました。

もちろん、エンターティメントの要素もしっかり作品には入っています。外したらさらに“紡木たく”先生モード。
キャラのパターンは「ご近所物語」ですでに確立されている路線のようですし、「NANA-ナナ-」は“飛躍する矢沢あい先生”を見ることはできるとは私はあまり思えません。3、4巻まででギュッと凝縮した方がいい作品になるでしょうけど、すっきりさっぱり読ませてくれるような作品を書いてほしかった。若くないってことかもしれません。
矢沢先生はレベルの高い作家なので、私のような例外を除いてはきっと感動させてくれると思います。私の予想が外れることを祈って。


◆あいざわ遥「カラフル・パレット」
あいざわ先生は、『ぶ〜け』で作品を描かれるようになって以降、すごく好みの作風になりました。『りぼん』増刊号での『Cookie』でもそうでしたが、今回の作品も本当に楽しませていただきました。
100点満点に近い満足度

どこかで見たようなヒロインの性格でその点面白味は欠けるのですが、小道具の使い方、エピソードの組み込み方、まわりのキャラの配置、コマ割り、コマ構成など素晴らしかったです。いつからこんなに器用な作家になられたのでしょうか?(以前はあまり器用な作家とは思えなかった。今は余裕さえ感じる)


◆池野恋「リング☆リング」
扉の煽り文句がすごい!「スーパービックネーム初登場」「歴史的超大作「ときめきトゥナイト」発売中!」。
池野恋先生って本当に
マイペースな方なんだな〜と感じる作品でした。『Cookie』だからとかまったく関係なく、いつものペースでの作品だったので、反対に驚いてしまいまいました。(『りぼん』に載っていて全然おかしくないという意味で)
不幸なことが重なったヒロインが、ひょんなことがきっかけで幸運なことが起こっているけど、最後は上辺の(ものや、名誉)ではなく、身近な幸せに気付くというストーリーは何度となく、少女漫画のモチーフにされています。
個人的にP293のあかりの幸せ3連発(食事に自分の好きなもの(それも中華飯)・体重が減る・隠していたお金が出てくる)が受けました。池野恋先生の人柄をうかがわせるエピソードではないでしょうか?

人間いいことと悪いことがトントンになるようにできているね。就職活動が終わってホッとしている今ならそんなものだろうと思えまますが、3ヶ月間もひたすらに就職活動を続けて参っていたつい最近までは納得できなかったかもしれません・・・

池野恋先生の新作に期待しています。『りぼん』の本誌で連載作品が読みたいよ〜


◆谷川史子「魔法を信じるかい?」
『りぼん』にあった『Cookie』の宣伝での、広告の煽り文句(
自分の代表作にしたいと意欲あふれる谷川史子先生のシリーズ登場。りぼんでは描ききれなかったちょっぴり大人のテイストが香る!)のインパクト度では、谷川史子先生がNo.1でした。
『りぼん』増刊号のvol.2では、『りぼん』では描けなかったものに微妙に挑戦している感じがしましたが、とても挑戦的にはなっているようには思えなかったので、なんだか気合入っているよ〜と思ったわけです。

「リング☆リング」にダブって「いい事と悪いことは交互に来る」というネームがあるのですが、谷川先生が挙げた幸せ3連発は、無理だと言われていた大学合格・バイト即決で1人暮らしが順調・タコヤキ1個もらったらタコが2切れ入っている、でした。これも、谷川史子先生の人柄が伝わってくるような気がします。(特に3つ目)池野恋先生と比較しても面白いです。
彼氏が出来たというのは、「リング☆リング」でも最後の切り札なのは一緒ですし。

志賀くんの最初のカットで、うっわ〜谷川史子先生のキャラでも魅力的なメガネの男の子でくらくらしてしまいました。
種子島助教授は、「動物のお医者さん」の漆原教授系ですが、漆原教授には負けているように感じられて面白いとか感じませんでした。
死神はとにかく顔をお耽美系にしているようですが、もう一歩というところ。描きなれたら凄みが増してくるような気がします。

マンガでは読者を作品の中に入れ込む効果や、主人公の心理状態を表すために、実際の世界とは異なる歪んだパースを用いることがありますが(松本大洋、高野文子先生他多数)、谷川史子先生もP362、P358、P373とか、最近の作品ではたくさん使っているように思います。
P380〜384までの先生お得意の横に切るコマ割り、P387〜389のネームの上手さは、やっぱりすごいなと思いました。はさみの切る音の「
しゃく しゃく」というのもいい感じでした。

しかし、『りぼん』では描けないものってファンタジー系とは驚きました。初連載の「きもち満月」以来のファンタジーの連載ものです、原点に戻るという意味合いもあるのでしょうか?谷川史子先生は、清原なつの先生が好きで、清原先生がいたから『りぼん』に投稿したと言われています。
清原先生は、ちょっと不思議系の作品に名作が揃っているので、谷川先生自身はあま描かなかっただけでこの手の作品は好きなのかもしれません。

死神うんねんという少女漫画は非常に多く、「エリザベート〜愛と死の輪舞〜」みたいにミュージカルもあります。(今、一路真輝さんの上演されて話題になっていますよね。宝塚でも3回も上演を重ねている定番作品ですし)そのため、ストーリー面での新鮮味はありませんでした
技術と素質で持っていったという感じがしました。


ちなみに、『Cookie』創刊号での
私のNo.1は、「空に恋する」(おかざき真理)。あいざわ遥先生も、谷川史子先生も素晴らしかったのですが、印象度の高さはこちらでした。

おかざき真理先生は好きな作家です。「空に恋する」も表紙からはまってしまいました。おかざき先生のセンスはすごく好きです。絵も非常に透明感があって引き付けられます。
「冬虫夏草」(ラポートコミックス)や、HPのイメージからだと思いますが、おかざき先生は、草(緑)の絵が素晴らしいですね。見ていると恐くなってくるというか、植物に感情を感じるのです。


『りぼん』増刊号としての『Cookie』。独立した『Cookie』。
あまり変わってないようで、編集人、発行人の欄を見ると、『りぼん』から離れていることに気付かされます。

私は『りぼん』以外の雑誌を定期講読した経験がありません。
『りぼん』以上に面白い雑誌はないと思っているので、たとえ、いい作品が載っていたとしても、雑誌としての退屈さは作品にマイナスの要素をもたらしてしまう。単行本で純粋に読んだ方が全然作品がよく思ってしまいます。

「格闘するものに○」(三浦しをん、草思社)P173より

「判型が変わって大きくなってから、無理して内容を明るくポップにしているようで、ちょっと物足りない気もしていました。前みたいに、文学臭の強いものももうちょっと載せてほしいです。せっかく『多感な少女』をテーマにした、ある意味王道の『少女漫画』を載せていらしたのですから」
「そうだねえ。最近売れないから、いろいろ試行錯誤しているんだけど、僕も昔の『花束』の色合いが好きでね。戻したいとは思うんだけど、これが売りたいものと売れるものが違う、難しいところなんだよ」
編集長は苦笑しながら教えてくれた。

以上は、小学校の時のクラスメートの書いた小説の1部分です。
漫画が好きで出版社への就職を目指す主人公が、集英社をモデルにした集A社での面接のときに面接官が『ぶ〜け』をモデルとした『花束』の編集長だということが偶然わかって、編集長が「最近の『花束』とどう思うか」という質問への答えと、編集長のコメントです。
しをんちゃんは自分の就職活動を元にしているので、近いやりとりが実際にあったかもしれません。

コンセプトが不明確(個人的にコンセプトが合っている、合ってないの前段階で不明確の雑誌は性格的に好きではありません。コンセプトがあることが何事もスタートラインだと私は思っていますから)で、雑誌としての個性がなく、作家のネームバリューと人気で創刊させた雑誌というイメージが『Cookie』にはあります。『ぶ〜け』を潰してまで生まれ変わらなければならかったのは、売れる雑誌として転換するためだったのでしょう。出版社はボランティアではなく、利益を上げるために雑誌を出版しているわけなので頭では理解できても、なんだかすごく寂しいことのように思います。集英社だけでなく、少女漫画雑誌全部が厳しい状態なのですが。

私は非常にシビアな少女漫画好きなので、漫画雑誌活性化のために雑誌を買おうとかちっとも思いません。マンガは私にとってお金をかけない趣味なのです。
やはり、次号は買う必要のない雑誌のようです。

好きな作家の作品は単行本で追います。


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