作品レビュー・紹介

6.テーマ:○月
“○月”がタイトルに入る『りぼん』の作品を調べてみました。
3月、5月、6月は多く、2月、12月は1作もありませんでした。

「1月森のTiffa」(高田エミ)

「3月わかれ雪」(佐藤真樹)
「3月のパートナー」(藤井みほな)
「3月*花のころ」(西谷祥子)
「3月、河のある町で」(北原菜里子)
「3月はミステリアス」(高橋由佳利)

「4月のひまわり」(倉橋えりか)
「4月の幻想」(篠沢こずみ)

「5月のお茶会」(水沢めぐみ)
「5月の約束」(矢沢あい)
「5月のゆううつ」(千明初美)
「5月の頃」(浪速珠美)

「6月のシロフォン」(太刀掛秀子)
「6月の風にゆれて」(小椋冬美)
「六月歯医者」(おーなり由子)
「今6月の草木の中の」(清原なつの)

「7月のワンダー・ワールド」(紺野ひろこ)

「8月のシンフォニー」(篠崎まこと)
「8月に雪が降る」(渥美理絵)
「8月のメッセージ」(森本里菜)
「8月のエトランゼ」(浦川まさる)

「9月のポピィ」(一条ゆかり)

「10月には鳥になる」(浦川まさる)
「10月の冠の少女」(水沢めぐみ)
「10月の生徒手帳」(倉森明子)

「11月の副作用」(ごのうえたきえ)

オススメな作品を紹介します。

  • 矢沢あい「5月の約束」(RMC「バラードまでそばにいて」【後編】収録)

「5月の約束」を発表していた1989年当時、矢沢先生は乙女ちっくによった作風でした。
当時の『りぼん』は「星の瞳のシルエット」(柊あおい)、「空色のメロディ」(水沢めぐみ)など、乙女ちっく全盛期に強く影響を受けた若手の作家が活躍しており、矢沢先生も刺激を受けたのか、描けると感じたに違いありません。
矢沢先生の苦悩の時代といえるかもしれませんが、私はこの作品は好きです。
ヒロインと同い年だったということもかなりあります。初潮ねたとかすごく新鮮でした。一見、乙女ちっくっぽいんですけど、乙女ちっくにあらずという要素がある作品です。

  • 太刀掛秀子「6月のシロフォン」(RMC「ひとつの花もきみに」収録)

「雨の降る日はそばにいて」(集英社文庫コミック版「ミルキーウェイ」収録)の続編として描かれた作品です。好きな読み切り5本選べといわれたら私は入れるほどの大傑作だと思っています。太刀掛秀子先生の読み切りでは「星聖夜」に続いて傑作でしょう。(これが私の読みきりNo.1です。多分一生変わりません)
「雨の降る日はそばにいて」の発表時期は1977年、「6月のシロフォン」の発表時期は、1984年と、7年の期間が空いているのですが、登場人物も、太刀掛秀子先生も成長されたという感じがします。
「雨の降る日はそばにいて」のようにドラマチックな展開がないだけに、涙・涙ということはないのですが、静かな、優しい感動を与えてくれます。
入手は難しいと思うのですが、「雨の降る日はそばにいて」は(「ミルキーウェイ」で文庫になっているので、そちらを読みつつ、是非読まれたことがない方は読んでいただきたい作品です。(季節もピッタリですし)

  • 篠崎まこと「8月のシンフォニー」(RMC、全1巻)

篠崎まこと先生は70年代後半は、陸奥A子・田渕由美子・太刀掛秀子と4人並べられて評価されていたのですが、何故か今となっては、さっと上がらない方となってしまわれました。かくゆう私も3人を一通り読んでから読んだ口です・・・
最初はコメディタッチで始まるので、軽い話かなと思っていたら、途中人間関係がこじれてきて、面白い作品です。最後はハッピーエンドなのですが。
これも入手困難もの。

  • 浦川まさる「10月には鳥になる」(RMC「いちご金時れもん味」【後編】収録)

泣けます。
浦川先生ってこんな作品も描ける方だったのかと関心させられました。
ただ、「12光年のMOTOKO」(本田恵子、RMC全1巻)とちょっと重なることが気になりました。「12光年のMOTOKO」の方が発表時期が早いので、残念なから「10月には鳥になる」の評価が落ちてしまうのですが・・・
でも、「10月には鳥になる」は本当にいい作品です。

こういう一見くだらないことを調べてみるのは、意外な発見があるので面白いです。
今度は色がタイトルに入るものとかも調べてみようかなとも思っています。


佐伯茜
『りぼん』に関して取り上げたい話題は山とあり、漫画家1人1人を細かく取り上げるということを今までしてきませんでしたが、今後は好きで、かつ、あまり取り上げられていない漫画家をいろいろな切り口で取り上げていきたいと思います。
最初は、佐伯茜先生です。

佐伯茜先生というと、まず14歳でデビューした漫画家という印象が強くあります。私は佐伯先生と同い年なのですが、当時同い年で漫画家としてデビューした人ということをとても驚いたのです。また、1991年にデビューしたにも関わらず、単行本が2冊しかないという非常に寡作な方でもあります。

しかし、私は、佐伯先生の変わりになるべき漫画家を『りぼん』の大勢の漫画家の中に見つけることはできないのです。以前、佐伯先生の作品を読んだときには、あまり印象に残らなかったのですが、今になって読み返していると、心の奥に作品が残っていることに気づかされています。『りぼん』は漫画家の人数が多くて使い捨て状態なのですが、佐伯先生のような漫画家は残ってほしいものです。
また、単行本のフリートークは私は作品を評価する上でプラスにもマイナスにもならないのですが(マイナスになりそうな漫画家の単行本は最初から買わない。
単行本の柱参照)、佐伯先生の柱トークはプラスになっています。大人な部分と純粋な部分がある漫画家だなと感じます。

今、佐伯先生の作品で読めるのは2冊・9本のみ。Tail's Home Pageによると単行本未収録作品が4本あるので、早くもう1本描いていただき単行本にしてほしいものです。作品数が少ないので、1作品毎に紹介します。ネタバレはありません。

花の降る日に…1993年5月19日初版発行

  • ルナ−天使の魔法使い−(1991年『りぼんオリジナル』早春の号掲載)

デビュー作。1990年12月号で発表された第27回りぼん新人漫画賞で佳作を受賞しています。7人の漫画家のコメントがあるのですが、褒められてもいますが、問題点もズバッズバッっと指摘されていて、これを読むと私がコメントするのは馬鹿らしいのでパスします。

  • 雨あがりの恋模様(1991年『りぼんオリジナル』初夏の号掲載)

デビュー作はファンタジー路線だったのですが、2作目は学園ラブコメです。学園ラブコメがその後の主流の作風になります。
なぎさが傘もささず雨を見つめる谷口にひかれるシーンが、なぎさが谷口にひかれる理由があとで説明されるまでわからなかったので見せ方に工夫がほしいと思いました。雰囲気のあるエピソードなりそうだったのに残念です。てるてるぼうず・こげたクッキー・いちごみるくキャンディーなどをキーワードに、佐伯先生のオリジナリティーのあるエピソードがたくさんでてくるところが楽しめます。
しかし、P131からの展開に不自然さ・唐突さを感じて、そのためクライマックスでの盛り上がりに欠ける感じがしました。

  • 貴方がいる宇宙で(1992年『りぼん』2月号掲載)

本誌初掲載作品(別冊ふろく)。私が始めて読んだ佐伯先生の作品です。1992年2月号の別冊ふろくは、谷川史子・小花美穂・佐伯茜先生という組み合わせで今でもつい手にとって読み返してしまうお気に入りの1冊だったりします。
作品を書いた当時、佐伯先生ご自身が本当に転校されています。私は転校経験がないので転校というものをわかっているとは思えないのですが、そんな私でも感動できました。

前2作で見られた“かわいいけれど平面的で書き込み不足が感じられた絵柄”と“イメージ先行でしっかりとした筋がない弱い印象のストーリー”という欠点がかなり解消されていて、フレッシュさを残しつつ、素人くささが抜けてきています。

好きなエピソードは、手の落書きです。最初・中盤・終盤と使われていて効果的でした。タイトルにもなっている星に絡んだエピソードは、「星の瞳のシルエット」のような強烈な印象のある作品を読んでいるためか弱く感じられました。P61のネームでは盛り上がるべきなのでしょうが、もう一歩押しがほしかったです。
好きなシーンは、P65の優光と麻紀乃のけんかです。唐突な展開ではあるのですが、感情がついていってしまうのは、私が女だからかもしれません。口に出さなくても同じようなことを思ってしまうときってありますから。(男はただ優しいだけだったりして…)このシーンから、クライマックスにかけての盛り上がりが上手いと思います。

  • あの雲が消えるとき(1992年『りぼんオリジナル』夏の号掲載)

「貴方がいる宇宙で」の続編。佐伯先生唯一の続編ものということで、本誌掲載ということもあって、「貴方がいる宇宙で」の反響が大きかったのではないかと思われます。

「貴方がいる宇宙で」のヒロイン・優光の友達・麻紀乃が主役の物語です。続編にも関わらず、麻紀乃は正憲をどうして好きなのかといった話の骨格となるべき部分のエピソードの魅力が不足しているように感じます。絵柄的にも正憲の顔は完全に脇役の顔ですし、強力なエピソードを入れてほしかったです。(P90のは弱いですよね…ネームはいい感じなのですが何故か。)麻紀乃っていい女の子なので、正憲も格好よくしてほしかったのです。

ただし、2人の関係が優光が登場で変化していくという微妙な話の流れは不自然なく読むことができました。
また、クライマックスで、女友達・誕生日プレゼント・髪の毛・宿題・ケンカ友達etc.今まで出てきたエピソードをたたみかけてくる部分は一気に読むことができました。

  • 花の降る日に(1993年『りぼん』2月号掲載)

デビュー作での池野先生のコメントに、「絵がらは、あいざわ遥先生の影響を強くうけているように感じた」(1990年『りぼん』12月号、P394)とあるのですが、確かに当時のあいざわ先生の絵柄を見ているとわからなくもないのですが、私は北原菜里子先生の影響を強く感じました。また、影響とは違うと思いますが、作品から受けるイメージ、特に心理描写・内面のセリフに、本田恵子先生の作品から受けるロマンチックさと、古さも感じます。

北原先生の影響に話を戻すと、作品のやわらかな印象(ただし、北原先生の作品で見られる人間の暗い部分・本質をさっと見せる部分は佐伯先生はない)と「花の降る日に」は北原菜里子先生の「シフォンのささやき」と花屋の息子というキャラが重なったので、特にそんな感じがしたのかもしれません。
本田先生に関しては、私は本田恵子先生の作品が好きなわけですが、佐伯先生の作品からは本田先生の作品から受ける、本質部分で好みというか、心にピタッとくる感じがするのです。ちなみに大胆な構図の使っての心理描写も、私のツボにくるようです。

佐伯先生の作品全般にわたって言えることなのですが、作風が古いんです。90年代前半の作品で、しかも若い漫画家が描いているとは思えない作品だと感じます。絵柄が古いというわけではないのですが、80年代の雰囲気を感じさせる作風なのです。

「花の降る日に」は、“花”、“雪”といった、柔らかで優しい雰囲気を持った、佐伯先生の作風と重なるものをモチーフにしたという点で成功していると思います。(おまけに、“バレンタイン”というベタベタの甘さもプラスしている。)

■ファインダーの向こう側…1998年4月20日初版発行

  • ティーンズ ティアーズ(1993年『りぼんオリジナル』4月号掲載)

P174に「このタイトルは傑作だ」とありますが、確かにいいタイトルだと思います。涙ものの傑作タイトルというと私は本田恵子先生の「ティア・ドロップス−涙のつぶ−」を思い出すのですが、なんか重なるでしょうと思ってしまうのです。ヒロインの名前も理央で、本田恵子先生の「月の夜 星の朝」のヒロイン・りおと一緒ですし。

好きな男の子が、友達の彼氏になったという使い古されてテーマの話です。岸本の描写が雰囲気だけで曖昧になっている部分にもどかしさを感じましたが(ピントが完全にヒロインのみにあっている)、理央の内面描写が丁寧で緊迫感が出てて楽しめました。P144、P148、P153〜155など構図も好きです。

最近、吉住渉先生風に表現するなら、男女なくフランクな付き合いが少女マンガの主流なのですが、女同士の関係は少女マンガで盛り上がる重要な要素だと思うので、流されてしまう最近の流れに残念に思います。私は、男女の恋愛→家族との関係→女同士の友情の順番で描くのが難しいと思っています。女同士の関係を描ける漫画家によく上手さを感じます。

  • ひとりぼっちの夜に(1993年『りぼんオリジナル』12月号掲載)

北原菜里子先生とイメージが重なるのは、学園ラブコメの他に、この作品のようにファンタジー路線の作品があるからのように思います。(北原菜里子先生の作品では、同じく天使をモチーフにした「天使にキッス」があります。)

「ひとりぼっちの夜に」は、今読める9作の中で2番目に好きな作品です。デビュー作以来のファンタジーものですが、成長したな〜と感じました。展開が斬新、かつ、佐伯先生独自のカラーを感じて、最後に感動もできます。
それまでの作品は、作品の奥にある深さ・暗さの部分がほとんど見られなかったのですが、この作品では読み返す度に自分の心理状態によって、いろいろな部分、特に深さや暗さを感じ取れるのです。

  • 瞳に伝えて(1995年『りぼん秋のびっくり大増刊号』掲載)

佐伯先生の作品の中で最も好きな作品です。P180に「高校時代の親友が(中略)一言「気に入った」といってくれた」とありますが、その気持ちがよくわかります。私もこれはいい作品を読んだなと思いました。

まず、作品の最初の入り方が、構図、ネームともに絶妙。このようなシーンは佐伯先生が好きだということですが、好きなだけで雰囲気で流してしまうのではなくしっかりと作品の中でテーマの1つとして活かされていたのがよかったと思います。

絵柄も、ストーリーの骨格も、ヒロインもヒーローの性格も今までにない佐伯先生のよさが出ていて、目が離せない作品になっていると思います。特に、P85、86のはいいです。少女マンガだと強く思っていた方が、より相手を理解した方が両想いなんて都合のよい展開がよくありますが、このあたりは通常の展開の裏をついていて、元々大胆な構図を利用した演出は上手い方なのですが構図の効果もあり、盛り上がっていました。
オススメの作品です。

  • ファインダーの向こう側(1997年『りぼんオリジナル』12月号掲載)

ヒロインとヒーローの性格とイメージからだと思いますが、初期作品の佐伯先生の作品の王道の延長戦上にあるような作品です。
典型的ではありますが、ロマンチックなエピソードも多く、上手くは出来ている作品なのですが、前3作の成長ぶりから今後どうなるのかということを期待していたので、普通の作品に思えてしまいました。単行本のタイトルにもなっていますし、最初に読むのはこの作品なのですが、初の単行本「花の降る日に」と続けて読むと、自然にはは入れました。(絵は4年空いているので、すごく上達されてはいますが。)


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