◇◇◇ 「BSマンガ夜話」レポート ◇◇◇

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フリートーク2
いしかわ: 一条ゆかりはね。あざといよ。(注10)あざといというのは、別にけなしているわけではなくて。 (注10)
一条先生は「ありのままの私を辛口で」(「おしゃべりな唇」)とあとがきを頼むような方だから、いしかわさんの褒め方は結構満足いったのではないかと思うけれど、真偽のほどはわかりません。
岡田: あざといとまで。今頃君の家は火の海。(注11) (注11)→(注26)
いしかわ: (笑)あざといというのは、一条ゆかりは本当にもう、デビュー直後からず〜と最前線に居続けているじゃない。(略)まあ、『りぼん』ではさすがに苦しくなってきたけれど、また『コーラス』に移って、自分にあった年代で、まあ相変わらずヒット出しているじゃない。この「正しい恋愛のススメ」も、プロフィールによると大ヒットって書いてあるんだけれど、俺、どれくらいの大ヒットなんだかわからないんだけれどね。
その時代、時代によってさ。ちゃんとさ、絵柄もそうだし、テーマも、一番受けそうなものをちゃんとすくってくるんだよ。その時代のアクを上手くすくってくるんだよ。言葉みたいのも、自分が狙っているターゲットの琴線に触れるようなものをあざと〜く、あざと〜く出してきて。う〜ん、なかなか上手いものだなと思って、歓心して読んじゃうよね。(注12)
(注12)
「いしかわのマンガをはかる重要な基準のひとつは“つねに進歩をはかる”“いつも現在を描く努力をする”ということである。これは作家の姿勢である。いしかわは批評家であるよりも作家なので、この基準から辛口批評をする。それが彼の場所だ。」(夏目房ノ介「マンガの力」)
一条先生に対してのいしかわさんの絶賛ぶりには「BSマンガ夜話」を見慣れている人は驚いたと思います。(いつも辛口なのです。)いしかわさんが一条先生を絶賛したそのヒントを夏目さんの文章から読み取ることができます。
一条先生はマンガに対して努力を惜しまず、常に第1線にいようとされ、今を描こうとされています。だから、歓心などしてしまうのではないでしょうか?
大月: いしかわさんは、相当古くから読んでいるわけでしょう。まさにデビュー当時から。  
いしかわ: 俺はね〜デビュー当時も、何も新人賞から見てるよ。(略)『りぼん』の新人賞の準入選が一条ゆかりと弓月光で、佳作がもりたじゅんだった。(注13)それ以降のマンガを変える3人がそこにいたんだよね。本当にその3人が、それ以降の10年くらい少女マンガ界をひぱっていったんだよね。その3人が出てくるところに立ち会って、俺はすごい感動したんだけれどね。(注14)
あのね、一条ゆかりって名前ね。今聞くとさー。そんなに、こう、とんでもない名前じゃないじゃない。俺ね、初めて新人賞の入選で、名前を見たときにね、いちじょうゆかり〜って、5コ下の妹がいるんだけれど、妹と2人でプッて笑ったんだよ。(略)もう一人が弓月光なんだよ。ゆづきひかる〜ってプッて笑ったんだよ。
(注13)
1968年12月号に第1回りぼん新人マンガ賞が発表されました。入賞だった弓月光もりたじゅん先生は、共に現在も漫画家として活躍されています。

(注14)
新人漫画家のブレイクする瞬間に立ち会えるというのは、『りぼん』を読む楽しみの1つではないかと思います。
この時代以降、『りぼん』は前の方が(自分達が読んでいた頃)面白かったといわれ続けています…

  (略)  
いしかわ: (略)一条さゆりってストリッパーがいる。(注15)(略)ストリッパーが名前に使うのと似たセンスくらいあざとい名前なんだよ、一条ゆかりって。本人怒るかもしれないけど、それは、つまり、アピールする名前なんだよ。 (注15)
「「一条ゆかり」嬢は有名な蝋燭ストリッパーとしょちゅう間違われていたそうだか、改名せずガンバリ抜いた甲斐あって、いつしか向こうが引退してくれ、最近は被害を受けなくなったそうだ。」(みなもと太郎「漫画の名セリフ」)
大月: 本人意図的でしょう、おそらく。  
いしかわ: でも、その時代だとね。ちょっと、アピールしすぎじゃないのっというぐらいの名前なんだよね。(略)この名前をね、最初からつけてくるところに、私は狙っていくという姿勢がすごく見えるんだよね。(注16)狙いつづけて30数年。ちゃんと狙って当ててきているというのがやっぱりすごいよ。 (注16)
ペンネームの由来はHPのプロフィールで「誰でも読め、見てキレイ、音がキレイで、同じ活字でも大きく見え目立つ。“一条”が一番位が高い」と書いてあるように、一条先生は思いっきり狙ってつけたものです。
一条先生の本名は藤本典子です。「有閑倶楽部」の白鹿野梨子は、悠理や可憐と違って一条先生から遠いイメージを受けるのですが、連載開始当時、髪型が同じだからといって同じ名前をつけたというのはちょっと意味深かなと思ったりします。
ちなみに、弓月光先生の本名は西村司です。
  (略)  
夏目: 自分がプロデュースできる人だと思う。(注17)娯楽作家としては、あざといっていうタームは「BSマンガ夜話」的なんだけど、娯楽作家としては絶対褒め言葉だからさ。(略)やっぱりすごいですよね。 (注17)
「6人兄弟の末っ子なもので、じつはすごく甘えん坊なんです。だけど甘ったれてばかりいたら仕事はできないですよね。それで仕事を続けているうちに、気づいたら新しい自分、しっかりしていて姉御肌の人格が出てきた。いわば、一条ゆかりという人間は、素の自分、藤本典子がつくった人間。素の私がプロデュースしているマンガ家なんです。」
(『婦人公論』1998年2/22号)
一条先生自身でプロデュースしていると言われているのですから、そう見えるのは当然のことと言えます。しかしこの事は、一条先生のインタビューを読んだことがある人でないと、“女王様”という言葉に隠れて意外と気づかないことなのかもしれません。
いしかわ: 自分がさ。何が出来て何が出来ないかすごく知っているじゃない。  
岡田: 描くことと描かないこととはっきり分けていますよね。  
いしかわ: そうだね。絵の表現とかでもさ。こういうもの描けないなと思ったら、全部言葉で説明したりするんだよね。その辺の上手くすりかえるのが、上手いんだよね。(注18)同業者だとやっぱりそれがわかるけど、読者はたぶん気づかないで読んでる。こういうところ上手いなーと思って読むんだよね。 (注18)
どういうところをすりかえているのか具体的に聞きたかった。岡田さんの突っ込みを期待していたのに、残念…
読者としては、一条先生が絵と言葉を上手く使い分けているのはわかっているし、描くところと説明している部分を明確に分けているなというのはおぼろげながら気づいています。具体的には判断できかねるし、そこを同業者の目でスパッと切ってもらえたら面白かったと思います。これまでは知っていることの補足だったけれど、これはわからなかったのに残念です。
岡田: これってあれでしょ。なんか、もうちょっと絵が描けちゃったら、絵で表現しているところ多いですよね。この巻数で収まらなくてもっと表現的になっちゃうじゃないですか。  
夏目: だから、絵に突っ込んでいっちゃうだよ。絵の細かいところに突っ込んでいっちゃう。(注19)だけれども、やっぱこの人話で全部もっていくから。プロデューサーなんだよ、たぶん。 (注19)
一条ゆかり先生のアシスタントだった松苗あけみ先生はインタビューで
「絵がもっとうまかったら自滅したと思うんですよ。でも、そこまではいかないっていう感じだったんで続いてきたのかな。絵がうまい人ってだいたい描かなくなっちゃうじゃないですか。絵のレベルが上がっていって、なんか一人の人間の手に負えないような質になっちゃうと描けなくなっちゃう。」
(別冊宝島「ザ・マンガ家」)
と「BSマンガ夜話」で一条先生について指摘していることを同じようなことをご自身について分析されています。
このインタビューの最後は
「私はもう一条先生にくっついて、みたいな。うふふ、とか言って(笑)」
で締めくくられています。このような見方は、一条先生に多少なりとも影響を受けて出てきたのではないかと想像してしまっています。
いしかわ: 絵に因してないもんね。  
大月: 編集者的というか、プロデューサー的というか、そういう才能をどこかに持っているから、自己経営できるんですよね。  
夏目: アシスタントの使い方も上手いと思うよ。(注20) (注20)
一条先生のアシスタントで有名なのは、松苗あけみ・内田善美おおやちき先生。他にも、のがみけい汐見朝子風間宏子・聖悠紀先生、みなもと太郎先生の奥さんで『りぼん』の読者コーナーを担当されていた後藤静香さんなど大勢いらっしゃいます。後藤静香さんに関しては、翌日の「BSマンガ夜話」のみなもと太郎「ホモホモ7」でいしかわさんが話題に上げられました。
後藤さんに関しては、RDC「一条ゆかり長編傑作集」第3巻のあとがきで一条先生が「後藤静香ちゃんは私の親友で、昔ずっとアシスタントをやってくれた人です。(略)彼女はすごいりっぱなアシスタントで、わたしゃずいぶん楽をさせてもらったのですが、今じゃナァントみなもと太郎さんの奥さま兼アシスタント…」と言われたり、集英社文庫コミック版「すくらんぶる★えっぐ」の解説エッセイで姫野カオルコさんも触れられています。
現在のアシスタントは、真弓さん・設楽さん・サミーさんの3名です。
(一条ゆかり「マダムゆかりのダマールな日々」)
いしかわ: そうだねえ。  
  (略)  
いしかわ: ちゃんと世の中見ているよね。(注21)(略)あのー内事をやっているとね。段々視野が狭くなってくるんだよね。毎日机の上しか見てないからさ。そうなると、ベテランの漫画家って、やっぱり段々描くものも、狭くなってきて袋小路に入っていってしまう人が多いんだけれど、一条さんはちゃんと世の中を見ているよね。だからこれ「正しい恋愛のススメ」においても、ちゃんと今街をどういうこが歩いていて、どういうこが生きているかを、ちゃんと見ているところがね。そこら辺がやっぱり偉いよね。 (注21)
「一条は、自分を客観観する姿勢を絶対に崩さない。漫画家は若くして社会に出て、人とほとんど接しなくてもすむ職業である。売れると莫大なお金が入ってくる。世間知らずになる要素は山のように揃っている。だからこそ一条は、世間の感覚と自分のそれのギャップを厳しく見つめる。」(『AERA』99’1.18)
世の中を見て、さらにそれを作品に落とすまでいくのは自分も、世の中もしっかり見てないと出来ませんよね。絶賛モードです…
  (略)  
視聴者からのFAX&E-mailコーナー
  (略)  
笹峰: 私も一条さんすごく好きなんですよー。 (注22)
一条先生ファンは、マンガマニアというよりも、深くは知らないけれどマンガに慣れ親しんでいているとか、普段マンガをあまり読まないけれども一条先生の作品は読む続けているちいったタイプの人が多いように思います。
笹峰さんの年齢から考えてみても、本人の性格もあると思いますが、一条先生のファンにはこのタイプの人は結構多いのではないかと感じました。
私も24年組のファンページを作っているような方にはひっくりかえってもかなわない、王道路線しかマンガは読まない浅いマンガファンです。(でも、一条先生は大好き!)
いしかわ: さっき話していたらね。愛ちゃん、単行本全部持っているんだよね。
笹峰: そうですよー。私は「有閑倶楽部」から全部持っているんです。
岡田: 持っているのに、そのリアリティのなさ。
笹峰: 心からの言葉なんですけれどね。おかしいですね。(注22)
  (略)  

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Presented by Eiko.