◇◇◇ 「BSマンガ夜話」レポート ◇◇◇

-- Return --
--
←その2 ---- その4→ --

フリートーク3
大月: (略)割とこれ僕の偏見かもしれないんけど、女の漫画家って例えばメカ描けない(注23)とかようありますよね。或いはそういう具体的なディテールってのも、やっぱその、男の我々が見ているディテールとは違うのを見てはるから。 (注23)
一条先生は車がお好きなようで、自動車はしっかり描かれているとは思うのですが、ここれは描かれてない例になっています…
弓月光・新谷なおる・聖悠紀先生などの男性の漫画家さんに一条先生はいろいろとアドバイスを受けたり、描かせたというエピソードも多いです。
  (略)  
いしかわ: この人ね。少女マンガで最初に劇画を取り入れた内の何人かの1人なんだよね。(略)  
大月: そういう位置づけになるわけですか。  
岡田: 劇画取り入れたというのはどういう。  
いしかわ: 劇画的な用法を。それまでの少女マンガの背景って前にも1回話したことがあるけれど、(注24)ほんとに記号だったんだよね。あのー、冗談でも何でもなくて、ビルっていうと、四角が描いてあって、田んぼって描いてあって、窓が描いてあるとそれがビルだった。これ、ほんとにみんなウソだと思うけれど、ほんとなんだよね。 (注24)
一条ゆかり先生がゲストにいらしていた「エースをねらえ!」の時にいしかわさんは同様の内容で熱弁を振るわれています。一条先生ちょっと気恥ずかしそうでした…(ご自身では、少女漫画界の転換期だったとか、今まで少女マンガになかったテーマをとかいう内容を結構発言されているのですが、面といわれると別物でしょう。)
夏目: ほんと、ほんと。  
大月: ある時期までまったくそうだったわけですだね。  
いしかわ: その世界から、ある日いきなり劇画っぽい絵が入ってきた。それはね。もりたじゅんと一条ゆかりが大々的に取り入れたんだよね。  
大月: やっぱりその世代なんだ。  
いしかわ: もりたじゅんは、(略)完全に劇画の絵を描かせていただけれど、一条ゆかりは、劇画・風に描いていたんだよね。もりたじゅんは、完全に劇画にしてて、たぶんそれがこうじて、本宮ひろ志と結婚することになったと思うんだよ。そういう方向に自分のリアリティがあったんだよね。一条ゆかりは劇画の手法を取り入れて描いていたんだよね。ちゃんと、これは使えるなと思ったら、それを、1回自分の中に入れて、少女マンガ風にして使っているんだよね。でね。そんなに、絵にこだわりはない。(略)現在描いている背景とかでも、もんのすごい上手い背景ではないんだよ。(注25)きちんと取材して、きちんと描いてる以上じゃないんだよね。あの、過不足なくきちんと丁寧に描いているんだけれど、さっきも言ったけれど、絵に因してないタイプの人なんだよ、この人は。 (注25)
「バックも仕上げもアシスタントがやってくれるから、一条は人物を描くだけ。(略)自分の仕事が終わったら、仕上げだってもちろんやるし、たま〜にはバックだって描くこともある・が・はっきり言ってバックはアシちゃんの方がよっぽど上手。これはくやしい。くやしいけどめんどくさいから練習しない。先生がバックが下手なんてこの世界じゃ常識よ!掟やぶりは内田善美くらいのもんよ。あら、松苗あけみもそうだな。おっとお、大友克洋もそうだと聞くし、困ったな、いっぱいいるみたい…」(一条ゆかり「一条さんちのお献立て」)
背景は専属アシスタントの真弓さんがほとんどすべてまかされているようです。背景にこだわりがないのは、「めんどくさないから練習しない」という言葉でで十分わかります。
なんたって、「私がなりたいのは常にトップよ。それ以外なら最低も同じだわ」
(一条ゆかり「デザイナー」)という亜美の言葉は、一条先生自身の言葉なのですから。自分がトップでなくていいとあっさり認めているということは、そう興味はないことなのだと考えてさしつかえないのではないでしょうか?
  (略)  
岡田: (略)視点に感情がこもらずに、客観描写っぽく見えるんだけれど、実はアニメっぽく、全部輪郭線が描いてある、補強してあるみたいな絵を描いてますよね。  
夏目: すごくわかりやすくて、よくわかる。ビルだなとかさ。  
岡田: あとね、素人眼にも絵が上手ってわかる描き方。  
夏目: 素人眼“に”絵が上手いとわかる。  
いしかわ: あのー男の劇画家ってね。背景を描くのが生きがいな奴っているんだよ。そいつらはね、ほんとに1枚絵として優れた絵を描こうとしちゃうんだよ。そうすると人間が負けるんだよ。一条ゆかりは、背景はすごく丁寧にきちんと描けばそれでいいと思っているんだよ。それはね。人間を際立たせる小道具なんだよね。その辺はね。ちゃんと演出意図としてね。きちんとしたもの持っているんだよね。  
大月: やっぱりバランス感覚とか、プロデュース感覚とかちゃんとあるわけですね、そういう意味でいうと。  
岡田: いしかわ番付でいうと、一条ゆかりって絵が上手いんですか。  
いしかわ: 絵はね。つまり、画力という意味でいったらそんなに上手くはない。(注26)そんなにというか、決して上手くはない。デビューの頃から、そんなに上手くはなかったけれど、ついに、画力という意味で限定して言ったら、ついに上手くはならなかったんだけれど、でもね。漫画の描き方が上手いんだよね。 (注26)
翌日の「BSマンガ夜話」で、(注11)とこの発言とを受けていしかわさんが
「昨日、この番組で、一条ゆかりは絵があんまり上手くない、かもしれないな、とちょこっと言って、うちに帰ってメールを見ていたら、「家は無事でしたかというメールが随分来ていましたが、お陰様で無事でした。(略)」
と言われていましたが、“ちょこっと”ってここは断定口調でした。しかし、「上手くはならなかった」って言い切ってしまっていますが、昔に比べたらすごく上達しているというのに、スパッと来たなと思いました。(みんなそう感じたからいしかわさんにメールを送ったのでしょう。)
岡田: 画力じゃなくて、漫画力が高いわけですね。  
いしかわ: 漫画ってやっぱりいろんな要素があるから、時々言うことなんだけれど、何か1つの要素に突出したものがあれば、すべてカバー、他の部分をすべてカバーできるんだよね。で、もちろん一条ゆかりの場合は、何か1つじゃなくて、演出面とか、構図とか、セリフとか、アイデアとか、いろいろなところが優れていんで、(注27)その画力としてはそんなでもないんだけれど、トータルとして見ると漫画としてすごく優れている作品なんだよね。 (注27)
この具体的な部分は、その後の「夏目の目」のコーナーですべて夏目さんが整理されて説明されていて、感動しました。
大江: 絵が上手い漫画家の人ってというのは、例えばどういう。 (注28)
お3方とも一条先生のアシスタントをされていたというのがすごいです。一条先生はこのお3方の絵の才能を認めていらっしゃいます。
おおや先生に関しては、「デザイナー」の柾をすべて任せた(一条テイストにするのではなく、明らかにおおや先生が描いたものだとわかるように頼んだ)わけですし、松苗・内田先生に関しては、(注25)で触れた通りです。
いしかわ: 例えば、少女漫画で言ったら誰だろうな。一条ゆかりのところにいたおおやちき(注28)とかね。
大江: 書き込みがすごいっていう。
いしかわ: 書き込みってのと関係ないけれど、あと、松苗あけみ(注28)とかね。
夏目: 内田善美(注28)とかね。あの、絵に因しちゃうっていう。
  (略)  
岡田: 絵が上手い漫画家って、必ず絵が進化して、崩れていきません、なんか。(注29)適当なところで止めることがみんなできなくて、自分の表現になっちゃって、そこから先、絵画になってしまうから、必ず崩れていく。 (注29)→(注19)
松苗先生と同じことを岡田さんがいわれています。
大月: お話が負けるのね、絵に。絵の力の方が突出しているから、話が生きなくなってしまったり、止まっちゃったりとかありますよね。
夏目さんはどう見ます?一条さんの漫画力の部分でいうと。
 
夏目: いや、だからほとんど、いしかわさんと変わらない。要するに僕も、少女漫画というものに対して非常に偏見を持っていた若い頃、があったわけですよ。だけど、この人は非常に作りが論理的なんですよ、大体が。男性的な部分が非常にあるんですよね。客観的な部分が。現実っていうことに対する異常な執着がどっかにある。で、男の読者ってそこから入りやすいので、だから割と僕は少女漫画の入り口の1つなんですよ、これ。(注30) (注30)
「それまで少女マンガには正確な都会風景や自動車や飛行機は、あまり描かれなかった。欧米コンプレックス丸だしの人物に書き割りの背景というのが通り相場だったが、一条の絵には青年劇画並みの正確なメカや都市が描かれていたのだ。それに一条のコマ割りはかなり読みやすく整理されていた。」(夏目房ノ介「青春マンガ列伝」)
当時、夏目さんが同棲していた彼女に少女マンガの面白さを教えてもらったいきさつが書かれている章の最後の方に一条先生に関する記述があります。
私はこの記述を以前から読んでいたので、「エースをねらえ!」のとき、背景やコマ割りの話になっていたときに「あのことね」と思ったのでした。
大月: 男が読みやすい少女漫画の何か。  
夏目: わかるの。具体的にいうとコマ割りが非常に論理的なの。それから、車は車でちゃんとしてるの。(略)ちゃんと種類もわかる車なの。これ自体は昔は非常に珍しかったんです。(略)それでもう馬鹿にしていたんだもの、僕らは。  
  (略)  
視聴者からのFAX&E-mailコーナー
  (略)  

-- Return --
--
←その2 ---- その4→ --

Presented by Eiko.