毒々鰻41さんから素晴らしい小説をいただきました♪

是非お読みください!!

(本作品は、同タイトルのオンライン投稿作品の加筆修正版です)


 

逢瀬〈Books版〉

作:毒々鰻41さん

内容:志保×新一 (名探偵コ○ン)


 




 某県某市某シティホテルの一室で、一人の青年が、携帯電話を使っていた。


「本気で……反省して……(うっ)……るんだ。……資料はついさっき全部仕上げたから……(!!)……FAXで送って……(ぇあ)、とっ……にかく、明日の朝ぁ……(ぅうっ)……一番で帰るよ」

 声がいささか上擦っている。苦痛ではない何かを堪えるように、しばしば不自然に言葉が途絶える。

「ちょっと新一。声が変だよ。大丈夫?」

「もっ、勿論……大丈夫さ。……(ぅぅ)……蘭」

「本当に大丈夫? 明後日には結婚式なのに」

 電話で話しているこの青年。名を“工藤新一”と言う。

 年齢は、今年21歳になった。

 職業は、名探偵(この肩書きでテレビ出演もしているから、これでいいのだ)!

 明後日のクリスマスには、幼い頃からずっと(一時期、彼が訳有って失踪していた最中も)愛を育んできた相手、そしてこの電話の相手、毛利蘭との結婚式を控えている。

「ごめんな……蘭。今日中には帰れると踏んでたんだ。けど、収録に時間かかりすぎた……。あのディレクター、細かいトコこだわりすぎなんだよ! ったく。バイクに乗って来りゃよかったぜ」

 どうやら彼は、TVの撮影か何かでこの地に来たらしい。そして時刻が遅くなり過ぎ、帰れなくなったというところか。

「それは……お仕事だもの。しょうがないよ。それに夜、長い距離を運転するのは危険よ」

「バーロー。世界一愛してるお前と離れてる時間は、短い方がいい。だろ?」

「……(ぽっ)……。もうっ、新一ったら!」

「あ〜あ、俺に翼が有ったらな。そうすりゃ、たとえ稲妻が邪魔しても、今直ぐ蘭の傍に飛んで帰るのに。……ぅう、痛ぇ!」

 立ち昇ってくる刺激が中断したのをいいことに、ケータイを甘露煮にしようとしていた新一の台詞は、唐突に途切れた。

「どっ、どうしたの新一? 何があったの?」

「いやなに。大した事じゃないんだ」

「だからどうしたの? 新一、怪我してるの?」

 電話の向こうで早くも涙声になっている“最愛の”女性に、新一は苦痛を堪えて取り繕う。

「あ〜実はな。この電話とる前に、画鋲ぶちまけちまって」

 一瞬の沈黙。

「そういう事は先に言うの! ……それで大丈夫? 刺しちゃったの?」

「大丈夫だ、こんぐらい。それよか本当、明日アサイチで帰るから」

「うん、解かったわ。あんまり遅くなるといけないから、そろそろ切るね。怪我した所、ちゃんと消毒してから休むのよ」

「ああ、そうするよ。何と言っても、俺の花嫁さんが言うことだからな」

「……もぅ(ポッ)。じゃね、新一。おやすみなさい」

「おやすみ。……愛してるよ」

「……私もよ。新一」

 最後には言葉と一緒に容量一杯のハートマークを運んで、電話は切れた。だが新一は用心深く、重ねて切断を確認する。彼が再び口を開いたのは、漸く安心することにしてからだった。

 用心した手つきでケータイを二つに折りたたみ枕元に置くと、電話の間ずっと彼自慢の愛肉棒に刺激を与え続けた――しかも、最後に軽く噛んだ――相手を、新一は睨んでみせた。

「何してるんだよ、志保」

 新一はベッドで横になっていた。バスローブに袖を通してはいるが前を合わせようともせず、ガバッとあけ広げている。殆ど素裸に等しい格好で、大の字になっていた。股間からは大きさこそ人並みなれど、カサが張り、黒々隆々とした男根が垂直に聳え立っている。

 彼の両太股の間に、一糸纏わぬ姿で蹲る女が一人いた。

 その女、宮野志保。

 赤みを帯びた茶髪をした彼女は、新一のいかにも固そうなペニスを可愛がりつづけていた。

 志保の左手は、新一の陰嚢を柔らかく包み、ゆっくりと優しく揉み解していた。

 志保の右手は、白い細指を駆使し、肉茎を何度も擦りあげている。緩急をつけ……。強弱をつけ……。

 そしてチロチロとよく動く志保の可愛らしい舌は、亀頭から裏筋へと舐め伝い、今は傘裏の襞を丹念に舐め続けていた。

「志保」

 もう一度名前を呼ばれ、彼女は恨みがましそうな視線を新一に向ける。

「フェラチオ。若しくは、その類似行為」

「何だよそれ……」

「今、私がしていること……。男性器、特に陰茎部分を舌・唇・歯・口腔によって刺激し、オルガズムをもたらす行為。俗に、尺八とも言う」

 志保の口調は、抑揚を押し殺した事務的なものだ。口調と言葉の中身との間に、あまりにも大きなギャップがある。

「いや、そうじゃなくてだな……。よりによって電話の最中だろ。そんな時ぐらい……休んでろよ……」

 新一の口調は、穏やかならぬ志保の視線の前に尻窄みとなってしまった。

「私のこと仕込んだのは……こういう風に調教したのは、あなたじゃない。それとも蘭さんからの電話に私が出て、『新一さんは今、宮野志保とセックスの真最中です。終了した頃にかけ直してください』とでも言えばよかったの?」

「ちょっ、調教って……。志保……お前、怒っているのか?」

「当たり前でしょ……」

 上体を起こした志保は、新一から視線を逸らせた。

 ベッドに突いた両腕に挟まれて、形いいCカップの乳房が窮屈そうに寄り添っている。

 スレンダーな美女として知られている宮野志保だが、こうして見ると、着痩せするタイプだと言う事がよく解かった。

 キュッと締まったウェストから続くヒップラインは、存外ふくよかだ。きめ細かな肌の瑞々しさと相俟って、彼女のお尻を揉んだら素晴らしい感触を味わえるだろうと、男に期待させてやまない。

 やはり自分も起き上がり、ベッド上で胡座をかいた新一は、忌々しげな表情で頭を掻いた。かなりの愚問をしてしまった自分が、舌を噛みたいほど腹立たしいと見える。

「あのな、解かるだろ……」

「今更、そんな猫撫で声出さないで!」

 怒らせてしまった志保のピシャリとした物言いに、さすがの新一も沈黙してしまう。

「別れたくなったなら、そう言えばいいじゃない……」

 沈黙をもたらしたのが志保の言葉なら、沈黙を破ったのも彼女の言葉であった。

「私も……冷たい湖に沈みたくないし……」

「ちょっと待て。お前、何言って……」

「あら、一時間五十分程度のサスペンスでは能くある話じゃない。結婚で邪魔になった愛人を……」

「バーローッ! 俺は探偵だぜ」

「名探偵だからこそ、完全犯罪もできるんじゃないかしら……。イヤッ、放して!……んんっ!」

 ベッド上をグッといざった新一は、志保を抱き寄せた。

 抗うのを無視して、強引に唇を重ねる。

 志保の華奢で小さな握り拳が、新一の胸板を何度も叩いた。

「んん!……んっ……んっ……ん……ん……」

 打つ音が、段々と小さくなっていく。

 反比例して大きくなっていくのは、粘ついた水音。

 新一の舌は巧みに動いて、志保の口内を舐め潰していく。

 歯茎を蹂躙し、彼女の舌を、表も裏も無く舐め回す。

「……ん……ふはぁ……ぁん……んん……はぁ……ぃや……ん……」

 ニチュ、ヌチュ、ニュム、ニチュ……。

 抗おうとすれば、抑えられる。

 逃げようとすれば、追いかけてくる。

 いっそ、抗わなければ楽になる。

 いっそ、逃げなければ楽になる。

 いっそ、受け入れてしまえば・・・・・・、屈服してしまえば楽になる。

 組織を壊滅させて以来の日々が、新一への屈服そのものである様に。

 息継ぎのたび拒絶の吐息を漏らしていた志保が、自分も舌を絡めだしたところで、新一は舌を引き抜いた。

「え? ……ぁ……やっ、やだ」

 突然の喪失に物欲しげな表情を浮かべてしまった志保は、悪戯な笑みを浮かべた新一の視線に気がついて、慌ててそっぽを向いた。

 羞恥で、見る見るうちに耳まで赤く染まっていく。

「探偵云々以前に……俺が、そんなことするわけねーだろ。愛してるんだよ……お前を」

 今もって初々しい羞恥を見せる志保を抱き締めて、耳朶を唇で愛撫するかのように、新一は囁く。

「披露宴開いて、籍入れるだけが愛じゃないだろ」

「あなたが誰ともそうしないなら、頷けるでしょうけれど。ぅん、ぁやあ」

 腕を緩めた新一は右掌を、志保の太股から腰、背中と這い上がらせた。

 スルリと二人の間に滑り込ませ、左右の乳房の下側を交互に撫ぜる。

 時折伸ばした人差し指と中指の先で、硬く尖った乳首を挟み軽く引っ張る。

 弱いところを責められて、志保の全身に戦慄きが走った。

「……うん……ひゅ……ひゅあ……あ、やぇ……ぁあ」

「前に言ったろ。男には、母親と妻と愛人が必要なんだって。蘭と式を挙げるのは、過去と未来へのケジメの為さ。俺には志保、お前が必要なんだよ。お前に俺が必要な様に……。命の片割れとも言うべき存在のお前がな」

「単に……私は……あなたにとって都合のいい女なだけでしょ。まだ調教し足りないの……」

 言って聞かせる台詞に責めが中断され、まだ息を乱しながらも、恨みがましそうに志保は新一を見つめる。

「そんな風に言われるのは、心外だな」

 新一の口調に怒気はなかった。

 むしろ穏やかな笑みを浮かべている。

 まるで、籠の中で拗ねる愛らしい小鳥を見つめるように。

 限りない慈愛に満ちた、圧倒的優位者の笑みを。

 新一には、「志保を己が肉奴隷にするべく調教した」覚えなどない。

 全くない。

 確かに、コナンから新一の姿に戻った直後、幼い身体でいた間に溜まってしまった性欲を解消するまで、志保には工藤邸に滞在してもらった。

 三週間ほど……。

 しかし、新一にしてみれば、お互いが抱いている愛情を確かめ合いたかっただけである。

 脅しつけて滞在させたのではない。望めば何時でも志保は、邸外に出られた。

 同じベッドに連れ込む時も、きちんと彼女の意思を確認している。無理強いなどしていない。

 父、優作の隠し倉庫から借りた小道具――ロープだの、革手錠だの、鎖付き首輪だの――を使ったこともあったが、ちょっとした“アクセント”としてである。

 さらに言えば、“三週間”の後から今までの“デート”を、志保が拒んだことはない。いつも連絡を取った際には文句を言うものの、約束の時間・場所をきちんと守って、彼女は新一を待っている……。

「あなたは……卑怯者だわ……」

 胸中に甘い疼きを覚えつつ、志保は再び視線を逸らせた。

 新一の腕の中に捕えられたまま、やや俯いて、「解毒剤なんて作らなければ良かった」と呟く。コナンと哀のままでいれば良かったと。

 アポトキシン4869。

 かつて志保が、とある組織に研究・開発を強要された薬だ。この余りにも特殊な劇薬は、極稀に人間の肉体を小児化させる。

 その奇跡めいた効果が、新一と志保を巡り合わせた。即ち、小学生同士の、“江戸川コナン”と“灰原哀”として……。

 小児の姿をしていたからこそ、巨大で無慈悲な“組織”の目を眩まして、逃げ隠れできた。新一などコナンの姿を利用して、反撃の機会を掴もうとしていたほどだ。

 しかし、組織の恐ろしさを叩き込まれて育った志保は、新一ほど未来を楽観視できずにいた。普段どんなに、クールでシニカルな“灰原哀”として生活していても、襲い来る恐怖に震えが止まらなくなることもあった。

(一体、いつまで逃げ続ければいいの……。組織の影に怯える暮らしが、いつまで続くと言うの……。消えない……。私から……組織の匂いは絶対に消えない……)

 未来に希望を持てず、絶望に押し潰されそうな日々が続いた。

 ある事件に新一ともども関わったとき、志保は爆弾の仕掛けられたバスから降りようとしなかった。自ら命を絶とうとしたのだ。

(最初からこうすれば良かったんだ。私って馬鹿だよね……おねえちゃん……)

 亡き姉に語りかけ、微笑みすら浮かべていた彼女を、強引に助け出したのは新一だった。

「バッキャロー! 俺が、お前を守る! だから……逃げるなっ! “許されざる罪”だの、“運命”だの。そんなつまんねぇモン理由にして、お前の人生から逃げてんじゃねぇ!」

 気の利いた台詞から程遠い、粗暴な、しかし、それだけにストレートな怒声。

 幼いコナンの姿をしていても、そう啖呵を切った新一の瞳は力強い光を放ち、冷え切っていた志保の心を射抜いた。

(あの時……確かに私は、あなたから生きる力を貰った。でも、あれからずっと私は……)

 魅せられてしまったのだと思う。

 以来、志保の胸中で、新一の存在は大きく揺るぎないものになってしまった。そう思う……。

 それからと言うもの……。

 幼い哀の姿をした志保が震えを止められずにいると、コナンの姿をした新一は彼女を引き寄せ、やはり幼い身体で抱きしめるようになった。

 すっかり冷え切ってしまった彼女を、自分の胸で温めるように……。

「安心しろ。俺が、お前を守ってやっから」

 そう言う彼に、小さくなってしまった背中を撫でてもらうと、きまって志保の震えは収まった。

 しかし……。

 恐怖心を拭う為の抱擁であった以上、目的が果たされたなら、直ぐに二人は離れてよかった。だのに、哀の姿をした志保は、コナンの姿をした新一の抱擁から、なかなか抜け出せなくなるのが常だった。

 志保は、新一を慕い続ける蘭の存在を知っていた。

 それでも新一を、特別な存在として意識するのを止められずにいた。

 哀とコナンの姿をした二人の行為は、志保自身の言う「幼児が行うには余りにも不自然な行為」であった。だが、幼い姿故に、止める者がいなかったのも事実である。

 傍目には、ふと我に返った哀が怒ったようにコナンから離れて、時には「えっち」などと(コナンにしてみれば)理不尽極まりない評価を下して、抱擁を終了させるのが常だった。それでも、彼女が抱擁を求めてしまう回数は、確実に増えていったのである。

 志保は自分のらしからぬ行動に戸惑うばかりだったが、初めて蘭の目前で(コナンの姿の)新一と抱き合ったとき、否応なく自覚した。

 抱擁の事実に、幼い少女であるはずの自分が、頬を染めるのを。

 背中を撫でる行為は愛撫となって、自分が女の吐息を漏らすのを。

 半ば倒錯した快感の中で、志保は漸く、自分が性欲の解消或いは昇華の為に抱擁を求めていたことに気が付いた。

(……私は、あの頃から工藤君に抱かれたかったのよね……)

 自嘲気味の思いに耽っていた志保は、新一が、手にしたバスローブの布ベルトを、こっそり自分の背後に回したのに気付かなかった。彼女の両手首に、柔らかな布の感触が走る。

「え?」

 こういう時の新一は、呆れるほどに手際が良い。

 抗議の声を上げる間も無く、志保は両手首を背後で重ねて縛られてしまった。

「やっ、ヤダ。ちょっと、解きなさいよ!」

「折角結んだのに、どうしてだい?」

「こういうのは“結ぶ”じゃなくて、“縛る”って言うのよ! それより早く解いてよ!」

「成果を上げない内に、為した行動を反故にする気にはなれないな」

 ここで志保は、新一が唇でメフィストフェレスの微笑を作るのを見た。

「それに……こうすると志保は、“とても敏感に”なる。だろ?」

「……わっ、私が異常性癖者みたいな言いかたしないでっ!」

 不自然な格好を強要されて、意地悪な男の胸に身を預けてしまう志保。

「そんなこと言ってないぜ。ただ、共同研究の成果って奴さ」

「こんなの研究じゃ……あっ……だっ、駄目……」

 抗う志保の柔腰を左腕でしっかり抱いて、新一は彼女の首筋に舌を這わせた。

 下から上に。逃げるように仰け反るのを追いかけて、顎へと責め上げていく。

「……んぁ……こんっ……なの……やぁ……」

 一方、新一は右手で、愛しい女の程良く潤っている秘所に触れていた。

 焦ってはいけない。

 先ずはゆるりと、掌全体を使って、志保の恥ずかしいところ全体をナプキンのように包み、揉み解す。

 始めは、力を均等に配分して優しく揉む。奥で息づく淫ら花に、じっくり熱を送り込んでいく。

 もみゅ。むみゅ。もみゅ。むみゅ。

 根気よく揉み解す。

「……んっ……んっ……やめ……て……」

 唇で耳朶に触れる。

 熱い……。

 志保の躰内に、蕩けるのに充分な熱の溜まった証拠だ。

「声、色っぽいぜ」

「そっ、そん……ひぁ!……んっ……あっ……あぁ!」

 新一は、右手をほんの少しだけずらした。力の配分も、中指の付け根へと集中していく。

「ん〜、志保。なんだかヌルヌルしてるぜ。お漏らしじゃないみたいだし。これは一体、何だい?」

 答えの無いことは、始めから分かりきっている。

 淫魔めいた笑みを浮かべた新一が掌を前後に動かすと、志保の腰は、つられたように動いてしまう。

 志保は無意識の内、新一に右手だけで、淫猥なダンスを踊らされ始めた。

「いやぁ……しって……るぅ……あっ……くせにぃ……ひっ……ひああ!」

 粘っこい水音が、リズミカルに響き始めた。

 それまでは割れ目に食い込ませる事で、たっぷりと濡らしておいた中指を、新一は、第一関節まで志保の中に差し込んでいた。余り奥まで差し込んでしまうと、彼女を苦しがらせるばかりだと心得ている。

 深さはその程度に、新一は熱い膣内を、中指の腹で擦り始めた。

 締め付け、本能的にもっと奥へと誘おうとする、膣壁の感触を味わう。

 肉襞の間、一筋一筋から、次々と恥蜜を掻き出していく。

 しとどに濡れそぼった秘花の中を掻き回されて、志保は躰を、ビクビクと痙攣させてしまう。堪らず、目を閉じた。

「ひっ、んんっ……あ、あぁっ……いやっ……やあ、ああぁ!」

 これ以上は無理というぐらい、充血しきっているク○トリス。

 突然、恥ずかしいくらいに大きくなっていた肉珠を、親指の腹で押されて、志保の全身に電流が走った。

 軽いタッチ……ではない。新一の右親指はグリグリと、志保のもっとも敏感な肉珠を、乱暴に躙りまわす。

 鉤のように曲がった中指が、それに連動して膣の内壁を擦る。委細構わず奥に送り込もうと、賤しく淫らな蠢きを続ける肉襞を掻き分け、志保の恥蜜を容赦なく汲み出し続けた。

「ひゅあっ、あっ、うっ、くふっ、いあっ、やあ、ひぁああ!」

 志保は未だ、喘ぎ声に僅かな“抗い”の微粒子を塗している。しかし、明確な拒絶の意思表示からは、ほど遠いものだった。

『淫猥さを増すための、わざとらしい抵抗』

 今、彼女の声には、そう決めつけられても言い訳できない悩ましさが満ち満ちている。

 普段なら、冷然とした態度から“ドライアイスの麗人”とまで呼ばれている志保が、今や、男の指技に蕩けていた。新一の腕に捕らえられ、逃げることもできずに、悶え乱れている。

 志保の唇は半開きになり、その端から少しずつ涎が零れている。声にあわせて見え隠れしている舌が、彼女が溺れる快楽の深さを物語っていた。

「うれしいな。俺の手に合わせて……お前……動かしてるぜ……腰。志保がエッチでよかった」

 楽しそうな新一の言葉。ほんの少し、コナンだった頃のお返しを含んでいる。

「ひっ、ひお、ひっ、っうああ!」

 酷いと言いたいのだろう。既に、舌の回らなくなっている志保は、フルフルと首を振る。

「そうかぁ? それじゃ……」

 新一は、「このまま、一回いかせるか」とでも考えたらしい。ますます笑みを深めて、右手の動きはそのままに、彼は、志保のツンと尖った胸の蕾を吸うべく降下した。

 その時だった。

 ♪♪〜〜♪〜〜♪〜〜♪♪〜〜

 鳴り響いたのは、着メロ。

 『時間どおりに協会へ』

 この部屋の今の雰囲気にまるで似合わない、陽気な旋律は、新一のケータイから流れ出ていた。

通常の呼び出し音ではなく、昔の映画で使われたこの曲がかかったなら、誰からの電話か決まっている。

 同時に、志保の顔色が変わった。

 快楽に酔っていた朱から、心に冷水を浴びた蒼へと。

「蘭のやつ……どうしたんだ?」

 まさに昇りつめようとしていた腕の中の恋人が、現実に引き戻されてしまったのだ。新一が、舌打ちしたのも無理は無い。

 それでも、さっさと気分を入れ替えて、左手をケータイに伸ばしたのは、何ともはや……。

 抱擁を解いた左腕に替わって、志保の腰には、彼女の愛蜜が滴る右手を回している。

「イヤッ!」

 響いた声の大きさには、言われた新一よりも、言った志保自身の方が驚いた。それでも彼女は、続きを止められなかった。

「嫌って……おい、志保」

「イヤッ! イヤッ! イヤッ! イヤッ!」

 なり振り構う余裕など無く、志保は新一の胸に身を預けて、幼子のように、かぶりを振っていた。

「嫌なの……出ないで……電話に出ないで……」

「……バカだな。俺は……」

「ええ馬鹿よ! どうせ私なんて……馬鹿よ。三文メロドラマみたいな台詞吐く男と、ずっと……こんなこと……してるんですもの……」

 志保の口調は、だんだんと弱いものになっていった。困惑した新一が見ると、彼女の双眸は光るものを、今にも溢れんばかりに湛えていた。否、たった今こぼれた滴が、フタスジの線を引く……。

「だからって……、だからって……。私……覚悟はできてると思ってた。でも……目の前であんなこと……また言われたら……惨め過ぎるの……だから……お願い……」


「……志保……」

 百人のペテン師より滑らかに回転する新一の舌も、さすがに動きが止まってしまった。

「体が目当てでもいい……。好都合だからでもいい……。今だけでも、私を愛してるなら……。その電話に……今は蘭さんからの電話に……出ないで……」

 堪えきれなくなってしまったのだろう、新一の胸に額を押し当てて涙を隠した志保は、震える声で訴えた。

「……解かった。出ない」

 枕元に置かれたままのケータイに伸ばした左手を、新一は引き戻した。

 二人はまるで、コナンと哀に戻ってしまったかのようだ。

 新一は、嗚咽して小刻みに震える志保の体を支え、その背中を黙って撫でていた。


 もう、曲は鳴り止んでいる。

 素肌のまま抱き合った二人の部屋を、時間だけが通り過ぎていく。

「工藤君……」

「二人きりの時は、“新一”でいいって言ったろ」

「……新一……」

 面を上げた志保の、眦で光る涙。

 それを新一は、キスで拭う。志保の細い肩を一回そっと抱きしめてから、彼女の背後に両手を回した。

 衣擦れの音……。

 柔らかくも、志保の手首を拘束していた圧迫感が無くなった。

「え……、もう縛っておかなくていいの?」

「もう……必要ないだろ。まあ、志保が『もっと……縛って欲しい』って言うんなら、縛りなおすぜ」

「……バカ……」

 新一は、愛しい女を抱き寄せた。

 右手を彼女の背に回し、左手で首筋を撫で上げて、志保の後ろ頭にあてがった。

「自分をもっとよく見てくれ」と、言わんばかりに。

 志保は、自分が慕う、この世で唯一人の男の首に、腕を回した。言いたくて仕方のない、それでも言えない一言を、口にするかわりに……。「世界中の誰よりも、蘭さんよりも、私があなたを愛しているの」と、言うかわりに……。

「……捨てないで……」

「俺に、そんな事できる訳ないだろ。俺達は、“二人で一人”なんだぜ」

 二人は、お互いを求めて唇を重ねた。

 まるで、そうしなければ死んでしまうと思っているかの様に、お互いを貪る様に、舌を絡め合う……。

 心の片隅。その渇きを癒す為、志保は新一の唾を飲み込む。

 温もりが欲しくて、ただ新一を夢中にさせたくて、息継ぎも忘れて懸命に、彼に応えて舌を動かした。

 長い、本当に長い接吻は、糸をひいて終わった。

 頬を紅潮させ、疲れたように離れた志保の額に、新一は優しくキスをする。そっと身体を入れ替えながら、彼女を横にさせた。覆い被さる前に、じっと志保の顔を見つめる。

「……どう……したの」

 新一は微笑んで見せた。

「志保が、すっごく可愛いなと思ってね」

「な……なによ、急に……。機嫌をとってるつもり?」

 折角素直になりかかったのに、志保は、ついつい強がった台詞を重ねそうになる。

少し拗ねて見上げてくる志保に、新一は構わず続けた。

「本当に可愛いのさ……。愛してるよ、志保」

「……もう、そればっかり。あっ、ひゅあぁ!」

 襲ってきた刺激に、志保は思わず嬌声を上げてしまう。

 恐るべき硬度を誇る新一のペニスが、志保のク○トリスを突付きまわしていた。

 愛蜜で恥ずかしく濡れている肉の花弁が、早く自分の奥に欲しいと、淫らに蠢いている。

 新一は腰を動かし、ペニスの先端で、可愛らしいピンク色の花弁をなぞっていった。しっかりと亀頭に、志保の芳しい愛蜜を塗っていく。あたかも筆に、たっぷりと墨を吸わせるかのように。

 いまだ膣には入れていない……。

 今や志保の淫ら花は、パクパクと物欲しげに蠢き、はしたなくも愛蜜を滴らせていた。

「そぅ、んぁっ、あっ、もう……いじわる……しないで……」

 無意識に、男を蕩けさせる色香を込めてしまうのは、女の性だろうか。

 志保は唇をわななかせ、すがるような目つきで訴える。

「それじゃ……いくぜ……」

 新一は、もう一度軽めのキスをしてから、ぐっと腰を突き出した。

 黒光りする彼自慢の逸品が、志保の奥深くへと沈み込んでいく。

「あっ、あっ、あっ、あっ……」

 強い抵抗は、大きく張ったカサが関所を通過するまで……。

 志保の膣は、待ち焦がれていた愛しい男のペニスをすんなり受け入れる。

 歓喜に沸き立つ肉襞は、蠢き、絡みつき、更なる奥へと新一を誘って止まない。

 新一を包み込む膣壁は温かく、柔らかく、それでいてキュウキュウと、きついぐらいに締め付けてくる。

「くっ、はっ、いつもながら……スゲェ……ぜ」

(やべ……、すぐイッちまいそうだ)

 内心で少し焦りつつ、新一は腰を動かした。

「くぅう……ふ、ふぅん。んう? ぅあ! あぁっ、あああ!」

 熱く滾る蜜壷の奥――子宮口にコツリとペニスの先端が当たるまで、深々と志保を貫き、そのまま腰で円を描く。

 新一の逸物は、すりこ木のように、志保の膣内を擦りまわった。

「そっ、そんぁあ! うっ! ひゅん! ひゅあ! あひゅあ!」

「どう……だ……志保! お前の中……すげぇ……熱い……」

「しッ、新一こそっ、あっ、熱くて! ああああっ!」

 クチュクチュと、二人の繋がった部分からは、いやらしい水音が響く。

「音……聞こえるか? 志保の……ラブジュース……もう……大変なことに……なってるぜ……うっ!」

「だって……ぁアッ……だって……新一が……あっ! ああぁ! あっ! あっ!」


 腰の動きを、新一は少し速めた。

「俺の……所為だって……言うの……かい?」

 今度は、動きを緩める。

「そっ、そんな! ちっ、違うのぉ!」

「何が、どう違うのかな?」

 自分のすぐ上で揺れる新一の微笑み。その確信犯ぶりに、志保は観念したように目蓋を閉じた。新一の顔を見たままでは、とても言葉を紡げないから。

「……新一だからなの……。あなたとだから……、私、こんなに濡れてしまうの……。私、いつも電話を待っているわ……。あなただけに、抱かれたくて……。あなたと会う約束すると、嬉しくて……、待ち遠しくて……。だからお願い、もっと……もっと、もっと私を犯して」

 目を閉じていても、新一がどんな顔をしているのか、志保には想像がついてしまう。快感で朱に染まっている頬に、羞恥心から来る紅が加わっていく。

「あなたならいい。あなただからいい。新一になら何をされても……。新一の……熱いあなた自身で、もっと激しく私を貫いて。お願い……。私を今以上に、あなただけのモノにして。真っ白に……あなたで、私を一杯にして! お願いよ。お願い……んっ! ひゅんん! ああ! あっ! あっ! あっ! あああああぁっ!!!」

 ピンク色をした肉花から、カサが見えるところまで、半ば引き抜かれていた新一のペニスが、勢い良く志保の膣内へと打ち込まれた。それも、円を描きつつだ。

 黒くて硬い、新一御自慢の肉棒は、志保の蜜壷内を螺旋状にえぐるようにして突き進み、子宮口に当たって止まる。

 行き当たれば、直ちにペニスは引き戻される。

 大きく張り出したカサが、引き止めようと蠢く膣壁を、これでもかと掻き回す。絡みつく肉襞を、引き千切らんばかりに掻き分ける。

 打ち込んでは、引き戻し。引き戻しては、打ち込み。

 大量の愛蜜が、次々と汲みだされている。

 新一は、腰の動きにスパートを掛けていた。それでも志保の密壷は、止めどもなく愛蜜を湧き出させている。結果、シーツは、じっとりと濡れていく。

「ひっ! ひぎっ! あっ! あかぁっ! すっ、すごひぃっ! ジュボ、ジュボいって……! えぁ! あっ! あああっ! ごんごんっ、当たってるのぉおおお!」

「つっ! 辛くないか、志保!」

「ひぁああ! ああっ! あっ! あっ! ああっ、大丈夫。新一となら、辛くないっ! あああっ! 頂戴! もっと、もっと頂戴! あなたをもっとー!!!!!」

「ああっ、ああっ、勿論だ! そこまで、言われちゃあな! 今夜はっ、ザーメン枯れるまで、注ぎ込むからな! 覚悟しろよ!」

「ふぁああっ! うっ、嬉しい! 嬉しいの! ザーメン全部! 新一の全部! 私に! 私だけにぃいいいい!」

 志保は、無意識の内に両脚を、しっかりと新一の腰に回していた。一滴たりとも、彼を逃さないと言うように……。

(新一のザーメン。蘭さんに……蘭さんなんかに……一滴だって残さないんだから!!!)

 その思いがどれほど非現実的であるか、志保には解かり切っている。それでも、彼女は、そう思わずにはいられなかった……。

「うくっ、うっ、くおっ、くっ、うっ、ううぉ!」

「ああっ! ひぁっ! あっ! うぅあ! ああっー!! あっ! あっ! あひ! ああああっー!!」

 よがり声と言うには獣じみていて、悲鳴にも似ている二人の声が、部屋に響く。

 今の志保と新一は、自ら肉欲の海に飛び込んだ、雌と雄に他ならない。

 激しくぶつかり合う若い二人の肉体から、汗が滴る。それすら何かの意志が宿ったかのように混じり合い、新たに強烈な香を放つ媚薬と化すのだ。

 激しい突き上げは、志保の体を、上へ上へと押し上げていく。

 新一は、子宮口にまでぶち当たるピストン、否、彼のペニスが描く軌跡を考えれば、ドリル運動(!)の勢いを逃がさぬ為に、志保の背中に回していた腕で、きつく彼女を抱き締める。本能の赴くまま、志保の首・肩に、キスの雨を降らせる。

 至福色の笑みを浮かべる志保の唇は、緩んだままになってしまっていた。溺死寸前のような息づかいのまま、チラチラと舌がのぞく。

 時折、数ミリグラムの涎が、志保の口端からこぼれ落ちる。その様は余りにも淫猥で、彼女の躰が骨の髄までピンク色に染まっている何よりの証拠だった。

 つま先まで悦楽に震える志保の両脚は、ますます強く新一の腰に巻き付く。

 志保の両腕は、彼女の意志と無関係に、新一の背に回っている。愛撫の波に翻弄されながらも、愛しい男の背に、しっかりと爪を立てていた……。

(ああっ……。新一ったら、こんなに夢中になってるわ……。私の躰に溺れてる……。私だけ……。私だけが、新一を夢中にさせられるのよ。私の……。新一は、私の……。私の新一!! 新一!!!!!)

 二人の脊髄を駆け上り、快楽中枢を容赦なしに揉みしごく、激烈にして甘美な、桃色の電撃!!

 志保の背筋を仰け反らせ、新一の目蓋を強制閉鎖させた一撃は、巨大な津波の前触れだ。

「あああっ! 新一! 私! ああっ、私! イキそう! イク! イッちゃぅうううう!!」

「おっ、俺もだっ! 出すぞ! 志保! お前に……」

「イイの! イイの! あああっ! 熱いのを! あっ! あっ! あなたの熱いのをぉおお! あなたを思いっきり! わっ、私にチョウダイ! お腹いっぱい! お腹さけちゃうくらい! あひっ! いっぱい! いっぱいそそぎこんでぇええええ!!!!」

 既に限界まで深く差し込んだ己の分身で、新一は志保の子宮口を、グォングォンと押し上げる。

「あっ! あひ! あひぁ! ひぁああ! あぃいい! イク! イク! イク! イク! イクぅううううう!!!!!」

「志保!!!」

「ひゅああああああああああああっ!!!!!!!!!」

 ドドッ! ドドドッ! ドドドドドドドドッ! ドピュ! ドピュピュピュピュウウウウ!!!!

 津波……。

 正に津波だ。

 人間の良識など消し飛ばさんばかりの、猛々しい津波。

 正気と狂気の境界線すら嘲笑う、灼熱の津波。

 恐るべき、新一の白き奔流!

 どうして背骨が折れないのか不思議なほど、志保はその身を仰け反らせ、絶頂を迎えた……。

 子宮を満たし、膣を満たし、収まり切らない新一の精液が、二人の繋がった部分からドブドブと溢れ出している。

「あっ……あっ……あっ……あっ……あっ……」

 火照り切った志保の躰は、ヒクヒクと痙攣したままでいる。

(ああぁ……アツイの……ザーメン……新一のザーメン……私……こぼしちゃ……だめぇ……)

 志保の意識は、真っ白に染まり、遠のいていく……。

「志保っ。志保っ。おいっ。大丈夫か!」

 彼女の名を呼ぶ声。

 少し荒っぽいけれど、堪らなく甘い、優しい声……。

「……ぇ……ぇあ……?」

 霞のかかったまま、心配そうな新一の表情を映す、志保の瞳。三度、四度と瞬きを繰り返して、漸く彼女の瞳は、知性の光を取り戻した。

「あ……あれ、やだ……私、眠っちゃったのかしら……」

「あのな……。失神してたんだぞ、お前。……まぁ、もう眠った方がいいと思うけどよ……」

「あら……どうして?」

 労わるように語りかけ、髪を撫でてくれている新一に、志保は頬を膨らませて見せた。いつもなら、こうして優しい新一の腕の中で眠りにつくところなのだが……。

(今日は、これだけじゃ駄目。蘭さんじゃ、あなたを満足させられないもの。そんなこと、絶対にあっていいはずがないもの! 教えてあげる。彼女との初夜の前に、教えてあげるわ……)

「……新一。あなた、全然満足してないでしょ」

 志保が視線を動かすと、新一の恐るべき愛肉棒は、相変わらず隆々としているのが見えた。

「さっき言ったこと……、嘘じゃないんでしょ」

「あ〜〜、でも……だな……」

 反論する新一の口調は、実に弱々しい。

 志保に無理をさせまいと、思う気持ちはある。あるものの……。

 新一の良心は、悩ましく訴えかけてくる愛しい女の色香と、彼自身の助平心の、両方に抵抗しなければならない。勝負の行く末は、始めから知れていた。

 再び抱き合い、お互いを貪り始める二人。

 志保とって、胸に吹き込む凍てつく風を追い払えるのは、何かが欠けてしまっている彼女の心を満たせるのは、新一の温もり以外に無いのだ……。

 激しく絡み合う志保と新一の周囲では、時間ですら、遠慮をしながら流れていくようだった。


 快楽という名の汚泥の中で、どれ程もがいたことだろう。どれ程のたうち回ったことだろう。一体、何回果てたことか……。

 ソレハ……ソレハ……タトエヨウモナク……アマイセカイ……。

 志保は、混沌の中へと沈んでいった。


「……ん……ん……」

 バタバタと慌てふためいた物音で、やっと志保は目を覚ました。薄目を開けると、血相の変わった新一が、大急ぎで身支度を整えているのが見える。

「……」

 まだ思考が止まった状態のまま、視線を上げると、時計の針が午前八時を示してしているのが見えた。

(そっか……。朝一番では帰れなかったわね。新一……)

 自分の浮かべる笑みが、屈折したものであることを志保は自覚している。だがそれすらも、自分の中に何度も欲望を解き放った相手の様子を見る内に、強ばってしまった。

「新一……」

「ああ、志保。起こしちまったな」

 気遣いと愛情とを絶妙のバランスで調合した、新一の笑顔。思わず志保は、「そんなに急がなくてもいいじゃない」という台詞を飲み込んでしまう。

「その……わりぃ……。俺、先に出るぜ……」

「別に謝らなくていいわよ。いつも通り、私は、ゆっくりシャワーでも浴びてから帰ることにするわ。……あなたは、この部屋に泊まってないんだから、忘れ物なんてしないでよ」

 上体を起こした志保は、胸元を隠しながら、無理に微笑んで見せた。

 本当は新一と、腕を組んで帰りたい。でも、そうしたらどうなるか……。


『工藤新一を激撮! 結婚式直前に愛人と密会!! <東の名探偵>が婚約者そっちのけですごした“熱い一夜”!!!』


 今、工藤新一の社会的立場は、タレントのようなものだ。志保との“関係”が明るみに出れば、さしずめこんな見出しがゴシップ誌を賑わすことだろう。そして、新一の受けるダメージの大きさは……。

(一緒に帰れないのは、いつものことよ。でも……、でも、あなたが急いでるのは、蘭さんの為よね……)

 考えてはいけないことと思っているのに、胸の奥が疼く。

「志保、あの……」

 ネクタイを締めながら話しかけてくる新一の声に、志保は、ふと我に返った。

「何? 大丈夫よ……。ちゃんと薬飲んでるもの。妊娠なんてしないわ」

「いやそうじゃなくてだな」

 新一は、背広に袖を通す。

「次の連絡……。年が明けてからになる」

 ズキリリッ!

 疼きでは済まず、痛みが志保の胸をえぐる。

「そんなこと……。むっ、無理しなくていいわよ。……クリスマスに蘭さんと……結婚式を挙げて……。新婚旅行もそこそこに、年始早々には特番の収録でしょ……。無理なんかしないでいいわ。……え?」

 台詞を紡ぎながら、段々と俯いてしまっていた志保の右肩に、手が添えられた。

 他に、人のあろうはずがない。

 新一だった。

 コートまで着込み、すっかり身支度を終えた彼は、いつの間にか、志保の目前に歩み寄っていたのだ。

 新一の右手が動く……。志保の顎に指をかけ、そっと上を向かせた。

「……ん……んん」

 接吻。

 少しでも温もりを渡しておこうというように、新一は、志保の唇に自分のソレを重ねる。

 暫し時間が、目を伏せて通り過ぎた。

「志保……」

 やっと離れた後、新一は、一夜をかけて愛し合った女の瞳を、じっと見つめる。

 漆黒の瞳を見つめ返しながら、自分の中に思考を強制終了させる痺れが走るのを、志保は感じていた。

(あああっ。……また……だわ。また私、魅入られてく……)

 ぼんやりとしてしまっている志保から、ゆっくりと新一は離れていった。

「出来る限り、早く連絡する。必ず……」

 掠れた声。

 不思議と、心の奥底まで響く声。

(この台詞を言ったら、新一は帰路につく)

 そう気付いた志保が見たのは、まさに閉じようとする部屋のドアだった。

「卑怯者」

 咄嗟に志保の投げかけた言葉は、完全に閉じたドアに弾かれ、力無く部屋の中で砕けるのみ。

「……卑怯者ぉ……」

 この言葉が、本当に相応しいのか解らない。それでも志保は震える声で、そう繰り返すと、再び俯いてしまった。

「訊きたいのに……次に……いつ逢えるのか……本当は訊きたくて……訊きたくて……」

 ベッドに両手をついた志保。彼女の声の震えは、大きくなっていく……。

「……本当は……本当は……」

 堪えきれなかった。

 ギュッと瞑った、力の限りに瞑った志保の目から、熱い滴が落ち、シーツを濡らす。

 押し殺した嗚咽が、部屋の中に零れた。

 時間と嗚咽とは混ざり合い、そして流れていく。

 唯々、新一への愛にすがって生きる志保の苦しみが、少しでも薄らぐまで……。


『 冬の朝 コートを羽織る君の背に 瞳で問うた 次の逢瀬を 』



<了>




(毒々鰻41の負け惜しみ?)

 文章にしてみて、改めて“志保”というキャラクターの持つ「重さ」に気が付かされ、はわわわと、狼狽してしまいました。当初は、もっと軽い話にするはずだったんですけれど……。

 これの続編では、志保の心からの笑みが見られる話にしようと、無い知恵を絞って、話を練っています。(「知恵あるんかい!」のツッコミ多数)


 ここまで拙作を御読みくださいました皆様、心より御礼申し上げます。
 m(_ _)m

 


 

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