是非お読みください!!
『White Bell』-1-
作:りつりつさん
カランカラン…
軽やかなカウベルの音。
「いらっしゃいませー、お一人様ですか?」
ウェイトレスの明るい声に混じって蘭の「待ち合わせです」という声が聞こえた。
俺は読んでいた雑誌から目を上げると入口へと視線を廻らせた。
約束の時間5分前。
相変わらず時間に正確な奴だな。
喫茶店の一番奥のボックス席に俺を見つけた蘭が小走りに近寄ってきた。
手には蘭のお気に入りの雑貨屋の袋を抱えている。
「ごめんね、待った?新一」
可愛らしく両手を顔の前で合わせると蘭は申し訳なさそうに微笑んだ。
…か、可愛いじゃねぇか。
走って来た為にほんのりと上気した頬。
さらさらの長い黒髪。
空手をしている割にほっそりとした指先。
ぷるぷると美味しそうな淡い色で染められた唇。
屈んだ拍子にちらりと見えた豊かな胸元。
やはり2週間振りのデートは身体に悪い。
蘭のドコを見ても、在らぬ方へと考えが巡って行く。
「…いや、今来たとこ。オメーこそ早ぇな?」
そんな動揺を悟られないように俺は手にしていた雑誌を閉じると蘭に向かって椅子を勧めた。
「…うん。久し振りに逢えるんだから少しの時間でも勿体無いじゃない」
スカートの乱れを正して椅子に深く座ると蘭は恥かしそうに俺に告げた。
気のせいか頬が少し紅い。
そんな蘭の様子を見て、今日のデートを楽しみにしていたのは俺だけじゃないんだと感じて嬉しくなった。
手を伸ばし一生懸命にメニューを覗き込んでいる蘭の指にそっと触れる。
「なっ、何?」
「いや、ただ触りたくてさ。駄目か?」
「…もう、新一ったら」
2週間振りのせいか普段人前でのスキンシップを嫌がる蘭が今日は怒らずに見詰め返してくれている。
俺はそれに甘えて蘭の指先に自分の指を絡めた。
「…何かお薦めのメニューってある?」
少し照れくさそうに蘭が俺に尋ねた。
やはり、周りの視線が気になるのだろう…
ったく、そんなこと気にしなくったっていいのに。
仕方なく絡めていた指を離すと俺はメニューを指差した。
「そうだな…ここのクラブハウスサンドは以前雑誌に載ったくらいだから旨いんじゃねえかな?」
「じゃ、それをお願いします。それとアイスコーヒーを」
丁度オーダーを取りに来たウェイトレスに注文すると俺達は逢えなかった間の近況を伝え合った。
授業や部活、クラスマッチ。
俺の居ない間のクラスの皆の様子や面白かった話。
事件のせいで満足に授業に出ていない俺の空白を埋めるように蘭は話を続ける。
途中、運ばれて来た料理は評判通りで俺達は大いに満足した。
食後のコーヒーが運ばれて一段落つくと、ポーチを片手に蘭が立ち上がった。
「ちょっと化粧室行ってくるね」
「ああ」
蘭がトイレに立った間に『お土産』と称して渡された2週間分のノートのコピーに目を通す。
どのページも綺麗な文字で判り易く記入されていて有り難かった。
ぱらぱらと捲っていくと最後のページに短く一筆記されていた。
『 今度の課題を提出する迄は優作小父様の新刊はおあずけよ
それ迄は私が預かっておくからね xxx 蘭 』
あん?
海外でオヤジの新刊が発売されたのに送られて来ないからおかしいと思ったぜ。
オフクロの奴、蘭宛てに送ってたのか…
それにしても『おあずけ』とはな。
俺としては『新刊』よりも『蘭』がおあずけ状態の方が辛いんだが…
なぜかというと、この後東都美術館へ『ペカソ展』を見に行く予定なんだが
俺としては一刻も早く蘭と二人っきりになりたかった。
もちろん『密室』で。
簡単に頭の中でデートの所要時間を計算する。
「えーと、今から東都美術館に行って2時間だろ、それから蘭の買い物に付き合って2時間、それから…」
やはり、夜の8時ぐらいまでは家に帰れそうもない。
うーん。
本当は今日は家でゆっくりイチャイチャしたかったんだがな。
しょうがねぇ、少し汚い手だが『あれ』を使うっきゃねーか。
俺はポケットに忍ばせたモノを握り締めるとトイレへと向かった。
◇
レトロな店の雰囲気に合わせて装飾を施された重厚な扉を開けると丁度蘭が出て来るところだった。
化粧直しが済んだのだろう、秋桜色の淡い色で唇が彩られている。
うっすらとグロスを施した唇は瑞々しい果実のようで俺の『蘭』への食欲をそそった。
「あ、新一もトイレ?」
「ん、まぁな」
「そう、じゃ私先に戻って…きゃ!」
俺は入れ違いに出て行こうとする蘭の二の腕を掴むとそのまま個室に引きずり込んだ。
力を入れて抱きすくめ唇を重ねる。
薄く開いた唇に強引に舌を差し込むと空いた左手で豊満な乳房を揉みしだいた。
「…ふっ…んんっ…んっ」
蘭が頭を振って必死に唇を引き剥がそうとするが、
がっちりと押さえ込まれた体勢では例え空手の都大会優勝経験者の蘭でも無理だった。
俺は舌先を使い歯列を突付くと、思いのままに蘭の咥内を舌で犯した。
深く舌を差し込んで蘭の舌を捕らえ、嬲り、吸い上げる。
敏感な唇の縁を啄ばむ様に甘いキスを繰り返すと蘭は、漸く俺の舌を求め始めた。
せっかく塗り直したルージュが剥げるのも気にせずに唇を激しく貪り喰らう。
唇の端から流れ落ちた唾液が蘭の顎を伝い、その細く白い喉を濡らした。
俺は丹念に舌を這わせるとそれを一滴残らず拭い取りながら、熱くなった俺自身を蘭の腰に押し付け欲していることをアピールした。
「!」
硬くなった『俺』を感じて蘭が困ったような仕草で身をよじった。
その拍子に左手に捕らえていた乳房がぷるんと逃げうつ。
そんな動きが余計に俺の官能を刺激してるなんて、コイツは考えもしないだろう。
俺はキスに蕩けそうな表情の蘭の瞳を真直ぐに見詰めたまま優しく、時には激しく舌を動かし続けた。
しばらく舌を動かし続けると、カクン―――と、蘭の全身から力が抜けた。
そのままズルズルと座り込もうとする蘭の身体を慌てて抱き留めると自分の肩に寄り掛からせる。
「大丈夫か?」
返事の代わりに俺のシャツをぎゅっと掴むと蘭はふるふるとかぶりを振った。
抱き締めた背中は荒く上下し、押し付けられた豊かな胸の膨らみからは早鐘の様な鼓動が伝わってくる。
俺は腕の中でハァ、ハァと呼吸を整える蘭に休む間を与えず、柔らかな太腿に手を伸ばした。
下から撫で上げるようにしてミニスカートをたくし上げる。
「やっ!駄目」
蘭が小声で抗議の声を上げた。
それもそうだろう、客が少ないとはいえ俺達のいる個室には鍵を掛けていなかった。
だが俺はお構い無しに指を進めるとショーツの脇から差し入れた。
ぴくりと蘭の身体が反応する。
指先にぬるりとした感触を確かめると、俺は蘭の耳元でそっと囁いた。
「何が駄目なんだよ?ぬるぬるじゃねぇか」
途端に蘭の頬が羞恥に染まった。
「だって…」
「だって何だよ?…俺に逢いたかったんだろ?」
「…うん」
軽く耳朶を噛みながら指先に花芯を捕らえると、少し押さえ付ける様にして包皮の上から擦り上げる。
痛みを与えない様に丹念に愛液を絡ませながら小刻みに円を描いた。
「あっ…ん…あん」
徐々に花弁に添えた指が湿り気を帯び、蘭の股間はびちゃびちゃと淫猥な音を立て始めた。
「俺に…抱いて欲しかったんだろ?」
花芯だけでなく、柔らかな洞窟を刺激しながら甘く囁く。
「…あ…はぁん…んっ…」
薄いセーターの上から捕らえた乳房の突起は既に硬く隆起して、俺の愛撫に敏感に応えていた。
「入れて…欲しい?」
ぷっくりと膨れた花弁に包まれた秘所に指先を出し入れしながら意地悪く問い続ける。
俺自身を受け入れ慣れた蘭の秘所は、もう指なんかじゃ物足りなくなってるハズだ。
「なあ、答えろよ?蘭」
蘭の細い首筋に唇を這わせ、ゆっくりと下から舐め上げる。
ピクピクと面白い様に反応を返す蘭の顎を捕らえて固定すると俺は首筋に朱色の花を一つ散らした。
「だ…め…」
「大丈夫、髪で見えねー位置だから」
そう言って俺は又唇を這わせた。
同時に第一関節までしか入れていなかった指を一気に根元まで差し込む。
「ああっ!…んっんん!」
突然の侵入に声を上げまいと蘭は必死に俺に縋り付いた。
俺のシャツを噛んで悦びを堪えるが、鼻孔からは荒い呼吸音が漏れ聞こえる。
「うっ…ふっ…ふんんっ…ふっ…っふっ…んっ」
易々と俺の指を受け入れた洞窟は健気な上半身の抵抗に反し俺自身を受け入れる準備を完璧に整えていた。
そろそろかな?
俺は小指と薬指で隠し持っていた『それ』を充分に潤んだ入口に当てがうと中指の腹で押し込んだ。
子宮口付近まで確実に届いた事を確認し指を抜く。
「あんっ!な…に?」
快楽に霞む意識の中でも蘭は異常に気付いたらしい。
「なんでもねーよ、さっ早く行かねぇと混みだすぜ」
上気した頬に軽くキスすると俺は手早く蘭の身嗜みを整えてやり個室を後にした。
蘭の「勝手なんだから…」という声を背にしながら…
◇
本来なら東都美術館まではバスを使う予定だったのだが、
『少し歩きたい』との蘭の提案に従って俺達は銀杏並木を手を繋いで歩いていた
。
銀杏並木と言ってもすっかり銀杏の葉も落ちてしまい見る影も無かったが雰囲気だけでも味わおうってトコだ。
あれから30分。
隣を歩く蘭には何の変化も見られない。
いつも通り俺の冗談に笑い、楽しそうに過している。
その無邪気な笑顔を見ていて俺は期待した結果に成らなかった事に心底安心していた。
大体『あれ』に頼ろうなんて10年早えーよな。
倦怠期の夫婦じゃあるまいし、今迄の蘭の反応で充分じゃねぇか。
いつも俺ばかりが求めてる感がして否めないが、処女喪失してまだ半年。
急いで結論を出す必要は無いよな。
たっぷり時間はあるんだ。
これから時間を掛けて二人で秘密を増やしていけばいいじゃねぇか。
そう自分自身を無理矢理納得させると俺は気持ちを切り替えるべく、頭を軽く振った。
空を見上げると一面灰色の雲に覆われていて、今にも雪が降りそうな気配だった。
そういえば『今年一番の寒さ』って朝、天気予報で言ってたっけ。
「なぁ、そろそろバス乗らねーか?」
隣を歩く蘭にそう声を掛けると、突然蘭が立ち止まった。
眉間に皺を寄せ唇を噛み締め、なにやら真剣な表情で考え込んでいる。
「蘭?」
俺の問い掛けにハッとして蘭が顔を上げた。
その表情は何処と無く熱っぽくボーッとしているように見える。
「どうした?顔赤いぞ」
正面に廻って視線を合わせると一気に蘭の顔がカーッと耳まで赤くなった。
な、なんだよ?
なんで急に赤くなんだよ?
突然の蘭の変化に俺は慌てて繋いでいた手を離してしまった。
「ら、蘭?」
「ううん、なんでもない」
ちらりと俺を見て微笑むと蘭はパッと視線を逸らした。
「?」
何だかいつもと違う蘭の素振りが妙に引っ掛かった。
そういえば指先もしっとりと汗をかいていたし、頬もまるで熱でも有るかのように紅潮している。
「おい…蘭。なんでもねー訳ねーだろ?具合悪いのか?」
…もしかして、効いているのか?
俺は試しに蘭の肩を掴むとワザと指先に力を込め、すっと外側へ滑らせた。
「やっ!」
反射的に振り払われ、俺は『あれ』の効果を確信した。
『あれ』とは、先日服部が俺の家に遊びに来た時にこっそりと渡してくれた催淫剤、いわゆる合法ドラッグってやつだ。
コナンから工藤新一に戻り、蘭に告白して、めでたく恋人同士になったのは良いが、
肌を重ねる機会が多くなっても羞恥心が邪魔してか蘭のノリがイマイチだと話たのを覚えていたのだろう。
おせっかいにも部活の仲間から貰って来たらしい。
「なあ、試しに一回つこーてみぃ。もの凄いらしいで」
キッチンで夕飯の支度をしている蘭や遠山さんに聞こえないように、服部が耳打ちした。
「でもなぁ、体に悪くねぇのかよ?」
半信半疑に手渡された錠剤を眺めながら俺は呟いた。
薬の副作用で自分自身が小さくされた経験が薬物への不信感を大きくしているみたいだ。
大体『合法』って頭に付いてても、中身はヤバイ材料が主じゃねーか。
体質に合わなくて吐いたり、頭痛がしたり、眩暈がしたって話は結構聞くし。
呼吸困難になったり、意識不明になったり、ぐにゃぐにゃの変な模様が見えたらどーすんだ!
バッドトリップした蘭なんて見たくねーぜ。
それに…
それに万が一、俺みたいに成らないとは限らないし…
真剣に錠剤を眺めていたら突然背中を思いっきり叩かれた。
「ってぇ!」
「ほんっまに工藤は心配症やな〜。お前の好きな姉ーちゃんが小っこくなったりせんから、そう心配すなや」
何で思ってる事が判んだよ…
ムスッとした顔で思いっきり上目遣いに睨み返してやったが、服部の奴すっと視線を外しただけでトボケやがった。
ほんっと喰えねー奴。
仕方ないので服部が土産に持ってきた『お好み焼き煎餅』をバリバリと噛み砕きながら錠剤を突き返した。
「いらねー」
「んな殺生な〜工藤の為を思うて貰て来たのに」
がっくりと肩を落とした大袈裟な仕草で服部が残念がる。
「大きなお世話だ」
「そう言わんと、なぁ?」
「必要ねぇって!」
「天国見れまっせ」
浪花商人宜しく、揉み手までしやがった。
「いらねーったら、いらねーってんだろ!しつーけーぞ!」
「ほー、そう来るんかいな?ほな」
何を思ったか服部はクルリと向きを変えるとキッチンの方に声を掛けた。
「なぁ姉ーちゃん、工藤がなぁ〜」
「だぁーっ!バ、バーロー!ヤメロ!」
俺は慌てて服部を後ろから羽交い絞めにすると両手で奴の口を塞いだ。
幸い蘭達は気付く事も無く料理を作っている。
男同士すぐ傍でこんな会話をしてるなんてバレたら只じゃすまねーだろう。
ったく、服部の奴無茶しやがる。
「で、オメーがそこまで薦めるって事は大丈夫なんだろーな?」
ソファに座り直すと俺はもう一度確認した。
服部は無言で俺の目を見詰めるとキッチンの方へ軽く顎をしゃくった。
「和葉を見てみい、すっきりした顔しとるやろ?」
「なっ!オメー使ったのか?」
「しーっ!あほう!声がデカイわ!」
今度は俺が口を塞がれる番だった。
こそこそとキッチンの気配を探りつつ、男二人ソファーでの内緒話。
「…で、どうだった?」
無駄だと知りつつも一応聞いてみる。
「そんなん、例え工藤でも答えられへんわ。…ま、ごっつう良かったとだけ言うとこか」
服部は俺の掌にギュッと錠剤のシートを握らせると、にまにまと得意気な笑みを残してキッチンへと手伝いに行ってしまった。
「…そうか…良いのか…」
何のかんのと言いつつも俺は己の欲望の為に服部のくれた錠剤をこっそりポケットに仕舞ったのだった。
「…んいち、ねぇ新一?」
やべっ!薬の事を考えていたので蘭が呼んでいたのに気付くのが遅れちまった。
慌てて視線を蘭に向けると、俺の手を振り払った事を気にしてか心配そうに俺を見上げていた。
「ああ…気にすんな。痛かったか?」
今度は頬に添えた指先で耳の後ろをスーッと撫でてみた。
「!」
敏感に反応を返すが何とか持ち堪えた様だ。
鼻先までマフラーに埋め込んで顔を真っ赤にしている。
「ううん、痛いんじゃないの…ただ…」
そう言うと蘭は又俺から視線を逸らして俯いてしまった。
「ただ…何だよ?」
「…さっきから変なの…身体が熱くて…」
其処まで言うと又言い淀む。
確かになぁ。
『セックスしたい』なんて薬の力を借りたって蘭が口に出来る言葉じゃねぇよな。
「風邪じゃねぇのか?」
救いの手を差し伸べるように助け舟を出すと蘭はこれ幸いと縋り付いた。
「そ、そうね風邪かも…熱っぽいのかなぁ?」
蘭は両掌で軽く頬を押しながら、うんうんと頷いた。
「どうする?行くの辞めるか?」
少し屈んで蘭に視線を合わせると俺は問い掛けた。
「大丈夫!別に頭痛がする訳じゃないし、ずっと暖かい場所にいたからだと思う」
「そーだよな、自家発電だもんな」
「もーっ!新一のスケベ!!」
バチンと力一杯背中を叩かれた。
「悪りぃ、悪りぃははは」
他人様が聞いたら目も当てられないような軽口を叩きながら俺達は又歩き出した。
が、まもなくカシミヤのコートの肘が控えめながらグイッと引かれた。
「…ごめん…新一…」
「どした?」
振り返るとコートの袖を掴んだまま蘭がハァハァと荒い息を吐いている。
「やっぱり駄目みたい…」
瞳いっぱいに涙を溜めて苦しそうに蘭が訴えた。
「…ちょっと…」
そう言うと余程辛いのか人目も憚らず、歩道の真ん中で抱き付いて来た。
これには俺の方がうろたえてしまった。
別に往来で抱き付かれた事じゃねぇ、蘭の全身から漂うフェロモンとでも言えば判るだろうか?
そいつの所為で一発で『俺』が勃っちまったからだ。
なんったって誘うように開かれた唇は絶え間なく甘い吐息を吐き、潤んだ瞳はアノ最中を思い出させるし、
息も絶え絶えに訴える蘭の表情はあどけなさの中に色気が感じられて、俺の背筋にゾクリとするモノが走り抜ける。
うわぁ、色っぺぇ〜。
そう思った瞬間、すれ違った男と視線が合った。
ん?
まぁ『たまたま』っー事もあるだろう。
と納得しかけた俺は今度はサラリーマンらしき中年男と視線が合った。
んん?
次は仲の良さそうなカップルとすれ違う瞬間に彼氏らしき男の方と目が合う。
間違いねぇ。
どうやら俺達(厳密に言うと発情状態の蘭)は道行く男達の視線を集めているようだった。
確かに真っ昼間から銀杏並木の真ん中で抱き合っている俺達は目立っているのは間違い無いが、…やはりセックスの雰囲気を人は敏感に感じ取るんだろう。
すれ違う男達は皆、にやにやと露骨な笑みを浮かべながら通り過ぎて行く。
小声で「頑張れよ」とか「ヒューヒュー」と冷やかして行く奴もいる。
ったく、計算外だったぜ。
これ以上こんな蘭を他人の視線に晒す事なんか出来るかよ!
俺は自分の幅広のマフラーを蘭の頭から被せるとタクシーを拾うべく大通りへと歩を進めた。
「大丈夫か?今タクシー停めてやるからな」
蘭の体調不良の原因を知る俺は口調だけは心配を装いながら燻る蘭の官能を消さない様に優しく背中を撫で擦った。
少しだけ力を入れて撫でると蘭の身体は俺の腕の中でピクピクと面白い様に反応を返す。
よしよし。
俺は蘭に気付かれない様にこっそりと微笑んだ。
もう少しで極上の快楽が手に入る。
と、その時腕の中から今にも消え入りそうな蘭の声が聞こえた。
「…新一…折角の美術館…ごめんね」
「ああ、別に又今度行きゃいーじゃねーか」
俺の心の隅に押しやっていた『良心』がチクリと痛んだ。
…蘭
…俺の方こそごめんな。
その代わりにメチャメチャ気持ちよくしてやっからな。
運良く1台のタクシーを拾うと、蘭を抱きかかえる様にして急いで乗り込む。
「オメーんち戻るか?」
後ろめたさから一応蘭の意向を聞いてみた。
「ううん、新一の家がいい」
ぐったりと俺に寄り掛かったまま蘭が答えた。
よし。
「すみません、米花町221番地へ」
運転手に行き先を告げると車は滑る様に走り出した。
本HPのBBSにお願いしますね(*^^*) !