猿@さんから素晴らしい小説をいただきました♪

是非お読みください!!

初めてお書きになったとのことですが、

とても初めてとは思えないほどの力作です♪


人体実験の報復

第一章

作:猿@さん

 

 

深夜三時を廻ると言うのに、小沢は寝付けないでいた。

「ふはは。“復讐”には最高の獲物だ。身内にこんな上玉がいるなんてな、初めて心から感謝するよ、鮎川博士。」

一枚の写真を見つめながら、これからやっと起こせる念願の復讐計画に興奮していた。

写真に写っているのは、一人の女子高生の通学風景だった。

女子高生の名は、―鮎川まどか―。芸能界にもなかなか御目に掛れないような美少女だ。

「お休み、まどかちゃん。明日、君と会えるのを楽しみにしているよ。」と、写真に向かって言うと、まどかの写真を下品にべろっと舐めた。

そして、高ぶる興奮を何とか押さえつけようと、煎餅布団に無理矢理潜り込み、明日からの体力の為に目を閉じた。

また、同じような時刻に同じ興奮を抱き、寝付けない獣が四匹、夜が明けるのを心待ちにしていた。

 

 

「まどかさ〜ん。夏休みどうするんですか〜?」

ひかるが、梅雨明けの夏の陽射しに負けないくらいの明るい笑顔で尋ねた。

−檜山ひかる−まどかの幼なじみで妹的存在である。

「う〜ん、そうねぇ。まだ何も考えてないけど、アバカブでバイトくらいかな。」

「春日先輩は、どうするんですかぁ?」

ひかるは、まどかに向ける笑顔とは別の笑顔を恭介に向けて尋ねた。

−春日恭介−まどかのさえない同級生であり、ひそかに好意を寄せていた男でもある。

「え?う〜ん、この通知表の為に、まだ何も考えられないよ。」

通知表をひらつかせながら肩を落として答えた。彼だけは、まだ梅雨が明けないようである。

「あはは!春日君てば、相当悪かったみたいね!」

まどかは、輝いた笑顔で笑った。

「は〜…おかげで、明日から一週間の補習だよ。みっちりとね。」

「まぁ、私というお姉さんが、普段からしっかり言ってるのに全然聞かなかった罰よね。」

と、まどかは、うつむく恭介の顔を覗き込んだ。小悪魔的な笑顔だった。

「まぁ、そう言わないでよ。そうだ!補習終わっったら、みんなでどこかに行こうよ!」

恭介は、これ以上突っ込まれたくないと、照れながら言った。

「うわ〜い!先輩!海に行きましょうよ!せっかくの夏だし!まどかさんも海で良いですよね?」

ひかるは、嬉しそうに飛び跳ねた。

「私はどこでもいいわよ。ま、せっかくの夏だし。海に行きましょうか。」

冷静に装うが、思わず笑顔が溢れてしまう。

「じゃあ、みんなで海に行こう!」

恭介は、嫌な事を忘れようと空元気に叫んだ。

「う〜ん、水着どうしよう?まどかさん、今度一緒に買いに行きません?」

「いいわよ、私も買わなくちゃいけないから。去年のは、もう着れないかもしれないし…」

「え?鮎川って、また胸大きくなったの?」

ぼそっと、恭介が何気なく聞いた瞬間、その場の空気が張り詰めた。

「もう、春日君のエッチ!!

と、言うか早いか恭介を平手打ちした。

「うわ〜、先輩って大胆に聞き過ぎですよぉ」

ひかるは笑って二人のやりとりを見ていた。

「うわわ!鮎川、ごめんなさい!そんなつもりで聞いた訳じゃないんだって!」

「もう、本当に春日君て、エッチなんだから!」

怒りながらも、まどかの顔は笑顔で満ちていた。

いつもの情景。いつもの当たり前の幸せな一時だった。

そして、いつもの別れ道で、まどかは二人と別れた。

「じゃあね!せいぜい補習頑張りなさいよ!」

まどかは悪戯な笑顔を振り向かせて手を振った。

夏服のセーラー服、今時の短めのスカートが輝しくなびいていた。

 

 

「今からそちらに向かいます。おそらく15分くらいで着くと思われますよ。」

まどかの横を、すっと通り過ぎたスーツ姿の男が携帯電話で話した。話し先は、小沢である。

「わかった。では、これから予定通りに実行に移る。原君、今度はこちらから連絡する。」

口元に邪気に満ちた笑みを形作ると、携帯を切った。

「ふはは!とうとう実行出来るぞ!」と小沢が叫ぶと、

「とうとう出来るんですね!やったぜ!!」

「せいぜい楽しませてくれよ!まどかちゃんよぉ!」

「くくく、こんな可愛い子とできるなんて夢のようだぜ!」

車内にいた他の男三人も、歓喜と期待感で満ち足りた。

「まあ、喜ぶのは実際に獲物を捕らえてからだ。時間があまり無い。すぐ行くぞ!」

小沢は、車内の異様な空気を戒めるように言った。

そして、まどかの家の脇に止めてあった黒いワンボックスカーから、ぞろぞろと四人が降りた。

閑静な高級住宅街には、あまりにも不似合いで異様な四人である。

しかし、変装のために電気工事の制服を着ている事で、かろうじてこの住宅街に足を入れるのを許されているようであった。

 

四人は門を開けると、鮎川家の敷地に素早く入り、裏庭へと廻った。

人通りが非常に少ない為、造作も無い事だった。

裏庭の小道には、大きな蜘蛛の巣が張ってあった。一人暮らしの為、裏庭の手入れに手が廻らないのかもしれない。

夏の眩しい陽射しを反射する蜘蛛の巣の輝きは、小沢たちの期待感の輝きを象徴しているようだ。

身体に引っ掛かった蜘蛛の巣を払いながら、「この蜘蛛の巣と俺達は同じだな」と、小沢は思った。

さながら、獲物のまどかは“アゲハ蝶”というところか。変な冗談が浮かぶ程、心踊っていた。

静かに歩いていくと勝手口があった。なんでもない、ただの勝手口であるが、彼等にとっては神々しく思えた。

「じゃ、早速頼むよ。安部くん。」小沢は、小声で言った。

「任せて下さいよ。こんなの簡単ですから。」

待ってましたとばかりに、安部は勝手口の鍵口に針金を挿し込んだ。

針金の形を変えながら、少しだけちょこちょこと出し入れすると、“ガチャッ”と音がした。鍵が外された。

その音に、大の男四人とも驚き、辺りを見渡した。緊張のせいか、静かすぎる住宅街にはあまりにも大きい音に思われたのである。

「ふぅ。ここまではなんとか大丈夫のようだな。」

小沢は、しばらく辺りの様子を確認した後、安堵の息を漏らした。

そして、静かに勝手口のドアを開けると、誰もいないまどかの家の中に素早く忍び込んで行った。

「よっしゃ!第一関門突破ですね!」

大きなカバンを抱えながら、最後に入った後藤は緊張の糸が切れたように言った。

ここまで、3分も掛かっていないが、ずいぶんと長い時間を要したように思える。

「ここまでくれば、後はお嬢様の御帰宅を待つだけだな。」

サブリーダー的な存在である野坂が、眼鏡越しの細い目を一層細めた表情をすると、

「御帰宅されてから困らないように、準備だけはしとかないとな。何事も用意周到にしとかなきゃイカン。」

小沢は緊張の糸が切れかかっているのを、また結ぶように戒めた。

 

息を入れ直すと、四人は、どかどかと家の中に入り込み、目的の部屋を探し始めた。

もちろん、“復讐”を果たす為の部屋である。

(音楽家の家だ。防音設備の部屋があるに決まっている。)

四人は、家の中をうろうろと歩き回った。が、いくら大きい家といっても何分、個人宅である。すぐに見つかった。

「小沢さん、ありました。見つけましたよ。」

その声に、他の三人が駆けつけた。

目の前には、20畳程度のピアノルームがあった。都合の良い事にカーテンは閉められている。

豪華なグランドピアノが入り口近くにあった。

部屋の奥の大部分を敷き詰めている毛足の長い絨毯の上にはと小さ目のソファーと小奇麗なテーブルが置かれている。

壁には大きな絵画が何枚か飾られ、アンティーク調の棚にはいくつもの楽譜やレコードなどがぎっしりと並べられていた。

「十分な部屋じゃないか。」小沢は笑みを浮かべた。

「じゃ、ここで決まりですね。」

「ああ。もちろん。」

小沢の許諾が出ると、他の三人の緊張がどっと取れた。

四人は、初めてこの真夏に閉め切られた家の中の暑さを感じ、流れ出る汗を拭い取った。

「じゃ、用意しますか!」

おもむろに、後藤はそれまで抱えていた大きなカバンを開き、中から用意していた道具を取り出し、他の男達に手渡した。

ビデオカメラ2台、カメラ1台、沢山のフィルム、ビデオテープ、縄、幾種かのバイブレーター等々…

男達は、テーブルとソファーを手際良く動かし、渡された道具を絨毯の上に適当に置いていった。

素早く手配していくと、ちょっとしたアダルトビデオの撮影現場のようになった。

 

小沢は、その手配の準備を背にして、まどかの後を付けている原に電話した。

「こっちはもう準備が整った。そっちは、どうだい?」

小沢の連絡を聞いた原は、

「もう出来たんですか!順調ですね!こっちも順調に向かってますよ。ふふ。」

原は、あまりにも順調な事態に笑みを浮かべて答えた。

原とまどかの距離は50M程である。なんとか気付かれにくい距離を上手く保っていた。

「あとどれくらいで着きそうかな?」

「ま、5分くらいでしょう。じゃ、私も少し遅れて到着しますんで、よろしく。出入りは勝手口で良いんですか?」

「ああ。でも、君の格好なら、表から堂々と来ても大丈夫だろう。セールスマンにでも成りすまして、インターホンを押してくれればこちらで丁重にお迎えするよ。」

「ははは、有り難う御座います。では、お言葉に甘えて、そうさせて頂きますよ。」

あまりにも順調な為、二人の会話はこれから起こす“復讐劇”には不似合いなほど軽いものだった。

しかし、軽いほど、“復讐劇”がまどかにとって重くつらいものとなっていく。

 

まどかは、そんなことなど微塵とも思わず、獣の待つ巣窟へと足を運んで行く。

「ふう…、暑い。」

暑さで流れ出る汗をハンカチで拭き、一歩一歩、何事もないはずの我が家へと向かって行く

 

「もうそろそろ、お嬢様の御帰宅だ。」

四人は玄関脇の廊下に身を潜め、固唾を飲んで玄関の鍵が開かれるのを待っていた。

静かに時を刻む時計の秒針の音がやけに大きく感じる。

しかし、一秒一秒が、これから始まるお祭りのカウントダウンを聞いているようで妙に心地良い。

滝のように汗は流れ出ているが、部屋の中の暑さなど、とうに感じないでいた。

 

“カチャ”…門が開かれた。

“コツコツ”…玄関に近づくまどかの革靴の音が聞こえる。

まどかは、手にした鍵が地獄への導きの鍵だと、つゆとも知らない

「ふん♪ふふん♪ふふ〜ん♪」鼻歌を交えながら、鍵を錠口に挿し込んだ。

玄関越しに様子を伺っていた四人は、激しい鼓動の中、タイミングを計っていた。

そして…

“ガチャ!”

鍵が開かれた…!

まどかは、地獄への扉を自ら開いてしまった。

 

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