2001.12.18
HAPPY? X’MAS
「はい、これ」
いきなり綺麗に包装された小箱を差し出され、俺は面食らった。
「えっ…と。サンキュー」
一応受け取ったが。これはクリスマス用のラッピング――ということは、クリスマスプレゼントなんだろうか?
俺と恩(めぐむ)が仕事先で再会を果たし、再度付き合い初めて一月経たずにクリスマスがやってきた。
高校生の頃は、お互い無宗教ながらも楽しいイベントとして、映画やウィンドウショッピングに出かけたものだ。
だが今は、いい加減良い大人になった男二人がそんなふうに出かける姿は、サムいことこの上ないだろう。…と話し合った訳ではないが、イブは特に約束もせず、俺は仕事を終えると(日曜・祝祭日・月末は俺の会社の繁忙期だ)恩のアパートへやって来た。
俺もアパート暮らしだが、同じ一人暮らしでも格段に部屋の管理(冷蔵庫の中身や、部屋の掃除具合やら…)が上手い恩のところで過ごすほうが和むのだ。
そうしていつも通り人の部屋でだらりとくつろいでいた訳だが…。
――ヤバい。
プレゼントのことを失念していた。俺も何か用意しておけばよかった。
「ごめん。俺、何も持ってきてねえよ。これクリスマスのプレゼントか?」
「あ、うん。でもたまたま見かけて真惟(まさのぶ)にどうかなって思って買っちゃっただけだから。あんま気にしないで?」
恩はかなりいい奴だ。深く内面を見ると実は曲者だったりするが、普段は甘すぎるほど優しい。それが艶っぽい綺麗な顔で、こんな可愛いことを言われた日には……。
「開けてみてもいいか?」
俺は照れ隠しでぶっきらぼうに訊いた。
「もちろん。開けてみて」
早速バリッと包みを破く。不器用なもので、綺麗に開けようなどとは初めから思わない。(努力しないからいつまでも出来ないとも言うが。)
厚紙の箱に収められていたのは、革製のパスケースだった。
「これって…」
「真惟さ、今使ってる定期入れって、高校んときに俺があげたやつだろう? 今でも使ってくれてるんだなーって嬉しかったけど、さすがにボロボロだったから」
――こいつって……。
俺は思わず我が身の幸せを噛みしめてしまった。
「有り難く使わせてもらうよ」
俺は礼代わりに恩を引き寄せ、頬に軽く口づけた。
「でもやっぱ悪いな」
「何が?」
その晩、ベッドの中で一戦交えた後。
俺は吸い終えた煙草を灰皿に押しつけながら、思い出して言った。
「いや、プレゼントさ。遅くなって悪いけど、やっぱ俺も何か贈るよ。何か欲しい物とかないか?」
「別に気にしなくていいけど……でも、そうだなぁ……」
どうも何やらお目当てがあるらしく、ちょっと考え込んでいる。恩が口にするのを躊躇うような物って、一体なんだろう?
「ね…もしできるなら。一つ甘えてもいいかな?」
「お、おう。俺にやれる物なら何でも言ってみろ!」
目をキラキラさせて訊いてくる恩に一瞬たじろいだが、自分からふっておいて今更引っ込められやしない。俺はかなり怖いものを感じたが、それを気づかれまいと強く頷いた。
それが屈辱の日々の始まりとも知らず……。
「――ね、結構イイでしょ?」
「……うっ……」
ベッドの上で、俺達は第二戦を交えていた。――が、状況は先ほどとは相当に違っていた。
確かに、恩は細身で繊細な雰囲気だった高校の頃と比べると、大柄ではないもののしっかりした躰つきになって、今は体格的にはそれほど俺と変わりない。高校卒業後にしばらく身長も伸びていたようだ。
だが、まさか……まさか恩にこんな形で背中を見せる日が来ようとは……。
恩の要求。それは、
『俺にもヤらせて(はぁと)』
というものだった…………。
「俺って元々、攻めだったみたいなんだ」
俺をうつ伏せにさせ、あらぬ処へたっぷり潤滑液を塗りたくる。俺の反応を伺いつつ中を探りながら、恩は淡々と語った。
「あの人も実はネコだったし」
『あの人』とは、昔恩が好きだった人のことだ。
「まあ、俺とあの人とは躰の関係はなかったけどさ」
恩は俺と初めて会うずっと前から好きな相手がいた。だがその人には既に想い人がいたようで、彼と結ばれることはありえないと悟った恩は、二番目に好きになって両想いな俺と付き合ったのだ。
それでも彼への想いを拭いきれず、次第に俺達はぎくしゃくしていつの間にか離れてしまった。それが高3の話で、今はお互いしかいないと思っているが。(そうだよな?)
「経験は結構あるみたいだったけど、簡単に寝るような人じゃなかったし。敏感な人だから俺の気持ちにも薄々気づいてたかもしれないけど、遊びでなら可能性あったかもしれないけど、そうなると絶対相手はしてくれなかっただろうなぁ」
そういうとこが切なかったんだよな…。
そう淋しげにこぼしつつも、過去の話として言っているのが判って、話してもらえた俺は確かに安心した。
しかし。そんな真面目な話をしながら、恩の指はしっかり器用に俺の敏感な部分を探り当てて攻めてくる。
「うう……ック……ア……」
うーむ。声が出る。
今までまったく声を出したことがなかった訳ではないが、こんなに出しまくったこともなかった。初体験(!)とはいえ、かなり恥ずかしいぞ。
「良さそうだね。大分いい感じになってきたよ」
恩は非常に嬉しそうに、ぐちゅぐちゅ音をたててソコを広げている。
内心「ぎゃー! やめてくれー! そんなこと言うなー!!」と思っていたが――まあ、喜んでくれてるなら……いい、んだろうか……?
自分がされることは今まで全く考えたことがなかったから、いきなりの状況に俺は相当に焦って緊張していた。が、確かに躰はどんどん弛緩してくのが判る。
「……ううぅぁ……」
それにしてもこいつ、上手い。前を巧みに探りながら、中もリズミカルにぐりぐり攻める。脳裏にガーッと熱いものがこみ上げてきて、これまで感じたことのない強い快楽に、俺の思考力は次第に鈍っていく。
「なんかもうイっちゃいそうだね。前はもういいかな?」
だーかーら。いくら俺が頭一杯になってるからって、そいうことを口にしないでくれって…。
俺と別れてからの数年間、恩は一体どのように過ごしてきたのだろう。昔も再会してからも、ずっと俺がヤるほうだった。あまりにも意外な恩の手慣れた様子に、興味と強い嫉妬を感じた。
こいつは一体どれだけの経験を積んできたのだろう。今度、再会するまでの話も聞かなければ。
「…そろそろいいかな?」
恩の手が俺の腰へかけられた。そうしてソコへ、熱くて固い何やらが触れてくるのを感じ――俺は強烈な圧迫感に支配されながら、それが何であるのか極力考えないようにした。
「ごめん、痛む? 大丈夫?」
ベッドにうつ伏せたまま無言の俺に、恩がしきりと声をかけてくる。
確かにかなり痛かったが、気持ちよかったのも事実だ。別に何か凄い反応をしてしまった訳でもないが、俺は戸惑いながらもしっかり楽しんでいた自分に羞恥を感じて顔を上げられなかった。
まだ他の奴だったら対応のしようもあったかもしれないが、恩相手にどう返したものやら途方にくれてしまう。
それでも何も返事しないわけにはいかないので、ぶっきらぼうに応えた。
「まあ……平気だよ」
「ほんと? 辛くない?」
それでも恩は心配そうに再度訊いてくる。俺は赤くなっているだろう顔を強くシーツに押しつけて怒鳴るように言った。
「うるせえよ。こんなん何ともないからさっさと風呂でも入ってこいよ」
「本当に大丈夫? だったら…」
俺の背筋にぞくぞくっと悪寒が走った。何やら嫌な予感がする。
思わずビクッと振り返ると、邪な微笑を浮かべた恩が再度俺を組み伏せようとするところだった。
「お、お前、がっついちゃいけねえよ、な?」
思わず逃げようとするが、それより先にのしかかられる。いつもだったら簡単に逃れられたのだろうが、慣れない運動で躰のあちこちが痛んで反応が鈍っていた。
と、突然恩がアハハと笑い出した。
「真惟、その顔ってば…!」
「な、なんだよ」
俺はむくれてそっぽを向いた。それでも恩の下にいる状況は変わらなかったが。
「嫌ならしないよ。嫌がることはしたくないし、真惟の躰も心配だし。しばらくはちゃんと大人しくしてるよ」
その言葉に、俺は大いに安堵したのだった。
――が。
ほっとしたのも束の間、その後すぐに俺は、「しばらく」の単位が日数ではなく時間だったことを知らされるのだった……。