2003.01.12

 仔犬がおせち背負って

 

「あーあ、今年の正月はつまんねえなぁ」
 深春(みはる)がさっきから何度も同じことを言っては、こたつに潜ったまま寝返りを打っている。
 テレビでは正月特番の隠し芸をやっていてなかなか面白いのだが、深春は愚痴るばかりでちっとも見ていなかった。
 かくいう俺も、それほどじっくり見ているわけじゃないが。
「俺は深春のおかげでちっとは楽しいけどな」
 そう俺が言うと、
「そりゃーね、たいっちゃんはいいよ。おれが来て、好きなおせちは食えるし一人じゃなくなったし。でもおれはさあ、本当だったら友達と初詣行ってカラオケしてるはずだったんだぜ」
深春はそう言って口を尖らせた。
 藤枝(ふじえだ)深春(みはる)は、弟の同級生で高校二年生だ。大学三年の俺とは四歳離れている。
 深春が小学校に上がったとき、弟と共に親に「よろしくね」と面倒を見させられるようになったのが、付き合いの始まりだった。
 佐古(さこ)多一郎(たいちろう)という俺の名前は呼びづらいらしく、深春も弟を真似して「たい兄ちゃん」と呼んでいたのが、最近は「たいっちゃん」と呼ぶようになった。
 深春は最近人気らしい長毛種の小型犬に似ていると思う。愛嬌ある可愛らしい姿で、性格も素直な(悪く言うと子どもっぽい)深春は、俺のお気に入りだ。深春も俺によく懐き、弟抜きでも俺のところに遊びに来るようになった。
 俺が大学に入って実家から一時間半のアパートで一人暮らしを始めてからも、何度か遊びに来ている。たださすがに用事もなく一人で電車を乗り継いでまで来るのは躊躇われるらしく、アパートへ遊びに来るときは弟と一緒だった。
 この正月に、初めて一人で来てくれた。――おせちを持って。
 深春が来てくれたことで、俺の正月は先ほどの言葉通り楽しいものになった。暮れは散々だった。バイトは忙しいし風邪は引くし、無理して出たら悪化させて帰省はできなくなるし。
 バイトを大晦日まで入れたのがまずかった。その晩に実家へ帰る予定だったが、風邪が酷くてとてもじゃないが帰る気になれず、仕方なくある程度治るまでアパートで寝正月を決め込むことにした。
 一時間半なら帰るのが大変というほどの距離ではないが、実家のそばに有名な神社があるせいで、大晦日の夜から参拝客で非常な混雑になる。駅の係員や警備員が大声を張り上げて誘導するあれを耐えきるだけの体力は、その時の俺にはなかった。
 一人で寝ながら紅白を見て越した年明けは最悪だった。おまけに飯もない。弟もちょうどインフルエンザにかかったということで、母は俺の見舞いに来る余裕がなかった。
 俺は不思議とおせち料理が好きだ。特に母さんが煮る黒砂糖を使った黒豆は絶品で、あれを食べないと正月という気分がしない。
 そこへおせち片手にやってきたのが、深春だったというわけだ。どうやら親にせっつかれて仕方なく友達との約束をキャンセルして来てくれたらしいが、まったく有り難い。
 深春は一泊してくれて、正月二日の今日は俺も大分良くなった。今朝は二日ぶりに躰を洗ってさっぱりしたところだ。
 ずっと心配そうにあれこれしてくれた深春だが、俺が元気になったとみるや、途端に気を抜いてゴロゴロしながら愚痴り始めた。病気の俺にかなり気を使っていたらしく、ようやくいつもの深春らしくなったことに俺としてはほっとした。
「去年の正月なんて、彼女の家でまったりしてたのになぁ」
 深春がまたその話をし始める。
 高校に入って初めて深春に出来た彼女は、深春の綺麗な容姿に惹かれたらしいが、見た目に反してずっと子どもっぽく繊細さのカケラもない内面に失望したらしい。告白されながら向こうから別れ話を持ち出されたことに深春は少なからずショックを受けて、当時しばらく沈み込んでいた。
 ちなみにそれらの話は、すべて深春が逐一報告してくれたのだ。
「彼女んとこの家族が出かけてたもんだから、膝枕なんかしてもらっちゃって。思いっきりイチャコラしてたのに。今年はさぁ、ムサい〜男とォ、ふた〜りィ〜」
 最後の方を妙な節回しで歌うように言った深春は、唐突にこたつに潜ると、俺のすぐ横にもそもそと顔を出して来た。
「ねー、せっかく来てあげたんだからさ。お年玉でもちょうだいよ」
「イヤだね」
 唇を尖らせてねだる顔を可愛いと思いつつ、形のいい額に思いきりデコピンしてやった。
「いってー! なにすんだよ!」
 ぶうたれて額を押さえるのに、笑いが洩れてしまう。
「なにって……そうだなぁ。俺はアパート代のためにバイト三昧の貧乏人だからお年玉はやれねえけど、ナニしてやろうか」
「えっ、ホントに何かくれんの?」
 深春は現金にも急に目を輝かせ始めた。
「形のある物じゃないけどな。ま、彼女の代わりにイイコトしてやろうか」
「……たいっちゃん。なに、ちょっと……」
 目つきの変わった俺に危機感を抱いたのか、深春は俺から離れようとした。だが狭いこたつで急に逃げるのは無理だ。俺は難なく深春を押さえ込むと、上から顔を覗き込んだ。
「な、何する気だよ?」
 赤くなりながら虚勢を張るように低い声を出す。そんなところも仔犬っぽい。
 そんな深春に足を絡め、完全に捕らえた状態でグッと腰を押し付けた。
「何って、ナニだろう」
「ほっ、本気っ!?」
 深春の焦った顔を楽しみつつ、俺はニヤリと笑ってみせた。
「知ってるか? 男同士ってな女とやるよりずっと快感が強いんだ。一度覚えると病みつきになるってな」
「…たいっちゃん、したことあるの?」
「さあてな。試してみるか?」
 柔らかい頬を撫でるように深春の顔を両手で挟むと、俺はゆっくりと瑞々しい唇へ自分の唇を重ねた。
 俺が深春をそうした目で見始めたのは、一体いつ頃だっただろう。
 深春がやってくるのを心待ちにしている自分に気づいたとき、恋心を自覚した。可愛くて仕方がなく、自覚がないときから過剰なスキンシップをよく仕掛けていた。
 深春が小学校の高学年になったくらいの頃、自慰を教えてやった。その後何度かふざけ半分に互いの物を弄りっこしたことがある。
 その気がないわけじゃないと感じていたが、二人きりになるチャンスが滅多になかったことと、そろそろ手を出したいと思ったときに深春に彼女が出来たことで機会を逸していた。
 その彼女とも別れ、カモネギならぬ、仔犬がおせちを背負(しょ)ってやってきたのだ、こんな美味しいものを見逃す手はない。
 柔らかい唇を吸いながら、顎を軽く挟んで口を開かせ、すかさず舌を潜り込ませる。逃げを打つ深春の舌を捕らえると、有無を言わせず絡ませ深く口吻けた。
「……んぅっ……たい…ァ……」
 深春とする初めてのキスだが、遠慮なく存分に貪るうちに、いくらも経たず深春はとろんとろんになった。
「深春、好きだよ」
 どさくさまぎれに告白する。
「た、たいっちゃ……」
 これで落とせなかった奴はいない極上の笑みを浮かべてみせると、深春がカァッと赤くなった。
(よっしゃ、これで落ちたな!)
 俺は手応えを感じたとみるや、早速深春の服を脱がせにかかった。
「ま、待って……」
 焦った声音にかまわずズボンからシャツを引っぱり出し、中へ手を潜り込ませる。
 こたつが邪魔だが、まだ気は抜けない。移動はしないで、その場で行為を開始した。
 再び唇を重ね、手探りで乳首を摘むと丹念に刺激を与え続ける。
「……んっ……んふっ……」
 深春の喉から甘い声が漏れだした頃、前をさぐってソコを握った。ビクンと深春の躰が震える。身を捩って逃れようとする気配があったが、足を絡めて押さえ込んだ。
 きゅっきゅっと数回しごいてやっただけで、深春のそれはすぐ固くなった。
「深春、布団に移動するぞ」
「……あ……」
 声を掛けると手の中で小さく震えながらくったりしていた深春が俺を見上げてきたが、性急に与えられた刺激のせいで上手く声を出せないらしい。
 俺は苦笑すると、抱えるように深春をこたつから引っぱり出して、敷きっぱなしになっていた布団の上へ細い躰を横たえた。
 深春が我に返る前にと、さっさと服を脱がせてしまう。下を脱がせる時さすがに恥ずかしがったが、強引に引き下げてしまった。
 この状態なら逃げられることもないだろうと、ようやく安心して俺は自分の服を脱ぎ捨てた。
 時間をロスしている間に、深春のモノはまたうなだれてきていた。
 まずは乳首からゆっくり攻めた。片方を口に含みキュッと吸うと、ビクンと反応する。ぞろりと舐め上げ、舌先を尖らせて乳首の先をつつく。
「んっ……」
 もどかしげに深春が身を捩る。
 下半身へ手を伸ばすと、反応し始めている。乳首は弱いようだ。
 服を脱ぎながらちゃっかり用意したローションを手に取ると、自分の手と深春のそこへたっぷり垂らした。
「ひゃっ!」
 冷たかったのか深春が声を上げたが、どうせすぐに気持ちよくなるんだからと気にしなかった。
 足を割り広げるように深春の両足の間に躰を入れると、性器全体をたっぷり濡らすようにローションを伸ばす。そうしながら、また乳首への刺激を続けた。
 あくまでも片方だけを執拗に舐め嬲る。立ち上がった乳首の先を転がすように舌先で弄り、何度も舐め上げてはときどきカリッと甘噛みして刺激を与えてやる。
「…っ、んっ……ふうっ…んぅ……」
 深春は声をこらえようとしているようだが、我慢しきれず鼻から抜けるような喘ぎがこぼれていた。
 その声を楽しみながら、片手でペニスの先を掌で包むように揉み込んでやる。ときどき扱くように大きく上下させてやると、深春の躰がビクビク震えて顕著な反応を示した。
 細かい手の動きにはちょっと自信がある。空いた片手で、後ろの袋にローションを染み込ませるように柔らかく揉んでやると、深春はついに堪えきれずに声を上げ始めた。
「んっ、んんっ……あ、はぁっ……」
 すっかり固くなったそこは、先端からとろとろと蜜をこぼし始めていた。蜜を掻き出すように敏感なそこを指先でグッと強く擦り上げると、深春が「アアッ!」と一際大きな嬌声を上げた。
 散々舐められてすっかり紅く染まった乳首を見ながら、まったく触れていなかったもう片方の乳首へ目をやると、肌と同様にしっとり汗ばんで色づき、半分立ち上がって物欲しげにしている。
 そちらへ顔を近づけると、快感で震えている深春が期待するように躰をぴくんと硬直させた。ごく近くまで唇を寄せ、意地悪くフッと熱い息を吹きかける。
「ンンッ!」
 深春がたまらないように身を捩った。鼻先でちょんと触れただけで「ンアッ!」と声を上げた。
 だがそれ以上は触れず、また片側の乳首へ戻る。唇と舌と歯を使い、乳首全体を吸っては舐め、敏感な割れ目の部分へ歯を滑らせたり、尖った乳首を舌先で転がして存分に喘がせる。
「っ……た、たいっちゃ……アッ……」
 次第に赤味を強めていくそこに、深春が嘆願するような声を出す。艶っぽくて可愛すぎる姿に仏心が出そうになるが、ここでやめるわけにはいかないと弄り続けた。
 無論手も休めない。竿と袋をリズミカルにしごき続けていた手を、更にその後ろへと滑らせる。ペニスの先端からこぼれた蜜とローションとで深春の下半身はすっかりぐじゅぐじゅになっている。それを後孔の周囲へ塗り広げた。
 谷間がすっかり濡れて滑りが良くなると、気を遣いながら狭い秘孔へ蜜を塗り込めていった。ごく浅い入口を何度も指で往復され、快感に断続的に痙攣していた深春の腰がはっきり揺れ始めた。
「もう我慢できなくなったのか? 案外いやらしい躰だな」
「んああっ!」
 乳首を含んだまま揶揄するように言うと、今までと違う刺激を与えられた乳首と言葉から受けた責めとで、深春がビクビクッと躰を震わせた。
「ああっ…ハッ……ハアッ……ふっ、ンンッ……」
 深春の先端からこぼれる蜜を更に絞り出すように、手を動かし続ける。手を濡らした蜜は後孔へと運び、深春の中へ戻すように熱い洞を満たしていく。
 乳首とペニスと後孔と、三点を執拗なまでに攻められ続けて、深春は既に限界に達していた。簡単にイッてしまわないように根本をギュッと握ると、後孔の攻めを中心に切り替える。
「アッ、やぁっ!」
 達せないようソコを握られたと知って、深春が慌てて膝を立ててずり上がるように俺の手から逃れようとする。それを許さず、乳首から顔を上げて腰を抱え上げた。俺の腹へ深春の腰を乗せるような体勢だ。秘部が眼前に来るため、そこがすっかりあらわになる。
「やだぁっ!」
 深春が涙声で抗議したが、聞き入れなかった。まだイかないようにするためと、暴れられないようにペニスの根本を持ったまま、後孔へ初めて指を一本根本まで挿入させた。
「ふあっ!」
 初めての行為だが、それまで散々弄られたおかげで強い快楽の持続している深春は、その刺激からも快感を得たようで大きな声を上げた。中は塗り込められた蜜でしとどに濡れそぼり、熱く蠢いて俺の指へ絡み付いてくる。
 何度か出し入れしてほぐした後、中を探るように指先を曲げる。ここか、と思ったところを強く擦ると、途端に深春の腰が跳ね上がった。
「アアッ!」
 そこを攻めるように指を上下させ、一度引き抜いて今度は二本挿入する。柔らかく解けた入口は、難なく俺の太い指を飲み込んだ。
 深春のひっきりなしにあげる嬌声をBGMに、グッグッとリズミカルに中を攻め続ける。
「…アッ、アアッ、アンッ…アッ、ンンーッ……」
 深春の腰が揺れ、快楽を告げる嬌声が続く。俺は指を三本に増やした。
 さすがにきつく、激しい動きが難しい。だがそれも根気よく攻め続ける内にやがてスムーズになっていった。
「……アアッ、もっ……もう、やぁッ……ヤ、い、いかせてよォ…っ!!」
 本気で泣きが入ってきた深春に、俺は指を引き抜いて、抱え上げていた深春の腰を一度シーツへ戻した。
「ふっ……う、んっ……」
 既に耐え難いまでの快楽に浸り込んでいる深春は、何も触れられなくても声が止まらないらしい。
 涙の滲んだ目元へ顔を寄せ、塩気を含んだ滴を舐めとってやると、ぼんやりとして焦点の定まらない視線が俺のそれと合う。ピンク色に染まった頬を撫で、顎を捉えると、俺は深春の唇へ口吻けた。
 深春の喉の奥からくぐもった声が響く。激しく唇を吸い熱い舌を絡めると、深春からも舌を絡めてきた。
 高まりすぎた快感を鎮めるためにキスしたはずが、深春の喘ぎは止まるどころかどんどん切羽詰まったものへなっていく。唇を離したとき、深春の口端から飲み込みきれなかった唾液がこぼれて光っているのが扇情的だった。
 俺は再び乳首へ顔を寄せると、しばらく離している内に乾いてきたそれを舐め濡らしてやった。
「んんっ、ンッ、アンッ…だ、だめっ、もぅ……」
 前戯が長すぎたようで、深春が必死の眼差しで涙をぽろぽろ流し出した。仕方がないので、乳首とペニスへの刺激で一度イかせてやった。
「ンッ、アッ、アアッ…アアアーッ!!」
 背を仰け反らせ、思いきり白濁を吹き上げると深春は達した。
 荒い息をつき、苦しげに肩を震わせている深春の腰を再び抱え上げると、俺は深春の後孔へ己のものを当てがい挿入し始めた。
「…あ、なにっ!?」
 深春が侵入してくるものに気づいて手をばたつかせたが、俺はそれを機にしっかりと腰をつかんで一気に挿入してしまった。
「あ……く、るし……」
 深春がぎゅっと眉をしかめる。初物の締まりはさすがにきつい。俺は無理しないよう、ゆっくりと抽送を開始した。
「…うっ、く……んっ、う、クゥッ…アッ……」
 さきほど指で確認したポイントを探るように攻めてやると、次第に苦しそうだった深春の声に艶が増してきた。何度も行き来するうちにそこも解れてくる。
 そろそろ激しく動いても大丈夫そうだとみるや、俺は自らのタガを外して強く腰を打ちつけ始めた。
「ンッ、アッ、ハァッ…やっ、たいっ、ちゃ……きついっ…!」
 深春が悲鳴を上げるように非難するが、ソコはしっかり勃っているのでまあ平気だろう。しかし初めてであまり激しくしても可哀想かと、俺はそれまで散々焦らして触れずにおいた乳首へ顔を寄せ、ぞろりと舐め上げた。
「アンッ!」
 これでもかという甘い声を上げた深春は、自分の上げた声に気づいて火照った頬を更にカーッと赤く染めた。
 腰を重ねた状態で乳首に顔を寄せるのが難しいので、俺は手で刺激してやることにした。そこへたっぷりローションを落とすと、胸へ手をついて揉み込むようにする。
 そうすると、今度は腰の支えがなくなって後ろの抽送がしにくい。
「ほら、深春。ちゃんと足上げてろよ」
「やぁっ、たいっちゃ…」
 深春は甘えた声を出しつつ、膝を曲げてしっかり俺を受け入れる体勢を作った。
 俺は深春の胸に手を置き、ときどき前も刺激してやりながら中を抉り続けた。グッグッと強く押し付けるたび深春は苦しみと快楽の混じった嬌声をあげた。
「アッ、ウッ、ア、アッ…アアッ……アアーッ!!」
 激しい叫びが断続的に続いたと思うと、深春はついにイッてしまった。
 俺はまだだったので、動きを止めずに抽送を続けた。激しく腰を打ちつけ、力の抜けた深春を揺さぶる。
 と、深春のソコが再び固く立ち上がってきた。
「ンウッ…ウッ、ア……アッ、アァ……」
 歓びを訴えるのに気をよくして、俺は自分が達した後も、深春への刺激を続けた。
 結局抜かずに二回した。深春は四回も達し、俺の物を引き抜く際、後孔から泡立ちながらこぼれた白濁がいやらしい音を立てた。


 二人でシャワーを浴び、さっぱりして再びこたつでまったりしていた。
 ところが深春は、恥ずかしいのか怒っているのか、終わってから今までちっとも口をきいてくれない。
「随分と()かったみたいだな」
 なだめてダメなら、からかってみたらどうだろうと思ってそう言うと、真っ赤になってうつむいた。
「お初が姫初めってのもオツなもんだな」
 そう言うとますます赤くなって背中を向けてしまった。その背中から、腕を回して深春をぎゅっと抱き締める。
「なんだよ、もう。たいっちゃんなんか……」
 深春が拗ねた声を出して身を捩る。ようやく口を開いたな、と安心してヨシヨシするように頭を擦り付けた。
 そんな俺から逃れようと軽く暴れ続けていた深春だが、しばらくする内に観念したように大人しくなった。
 手の中の重みと温もりに幸せを感じつつ、俺は思いがけないお年玉に口元を綻ばせたのだった。

おわり。


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