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Piece of Love


− 13 −

 こんなところで下手に躊躇っていても後が苦しくなるばかりだ。俺はできるだけ何気なさを装って腰を上げた。
「出よう」
 原さんにも席を立つよう促しながら、一応訊ねる。
「俺の行きつけでいいよな?」
 原さんはすぐ頷いた。前に酷い目にあってからというもの、俺はよく知らないモテルや地区へ行ってヤることを避けていた。取り締まりのことを考えたら時々は場所を変えた方がいいんだろうけど、知らない場所は怖くてなかなか使う気になれなかった。
 しばらく二人とも無言で歩く。一度だけ原さんがコンビニへ寄りたいというので待っていたが、どうやらコンビニに設置された機械で金を下ろしているらしかった。
 休憩と宿泊料金を書いたごく当たり前の看板のある建物へ入ると、原さんは途端に落ち着かなげに周りをキョロキョロ見回し始めた。
 フロントで適当な部屋のキーを取ると、原さんが後から着いてくる。こんな時に何だが、ついカルガモの親子を連想してしまった。
 部屋に入り二人きりになると、ようやく原さんが口を開いた。
「いつもどんな風にしてるんだ?」
 この人は本当に、俺のような奴をまったく買ったことがないのか。何となく判ってはいたが、少しばかり驚いた。それなのに俺なんかに素直についてくるなんて…。
 俺は事務的に説明した。
「一応料金設定があって、安い方から、フェラをやらせる、手でする、口でする、最後までって分けてるけど。ショートだと手だけとかが多いけど、部屋を取る場合はほとんど最後までだな。ただしマグロで良ければ多少安くなるけど」
 具体的な値段も教えてやる。俺のモノをフェラできれば満足という客も時々いる。何が楽しいのか俺にはよくわからないが。最初の客は大抵金額をしぶってその辺でショートで済ませようとするが、大抵はそれで済まなくなってモテルへ流れ込んだりするものだ。
 原さんはおそらく迷わず最後までと言うだろうとは思ったが、やはりそうだった。
「全部知りたい」
 金額も確かめずに、さっきコンビニで下ろしたらしい札束を無造作に取り出す。
「オッケー。そこに腰掛けて」
 俺は努めて平静を装いつつ、ベッドへ腰掛けた原さんのベルトへ手を伸ばした。
 初めて見た原さんの物に、俺は正直ショックを受けた。
(――デカい!!)
 初めて会ったとき、原さんは振られたところだったと言っていたし、その後話した感じでもイマイチもてないと言っていた。けど……それってもしや、このデカさがネックになっていたのでは……?
 思わずそんなことを考えてしまうほど、それはあまりに普通でない巨きさだった。
 知らず、ゴクリと唾を飲み込む。これからコレを相手にしなければいけないのか!?
 とりあえず手で触れてみた。両手で持って、その重みに原さんを煽ったことへの後悔がじんわりと湧き上がってくる。引きたくなる気持ちを鼓舞してソレを握り、擦り上げ、知っている限りの技巧を施してみた。
 それはあっけなく反応し、みるみるうちに硬く起き上がって更に容量を増していった。
(こんなモン、俺、マジで受け入れられるんだろうか……)
 そうでなくても、俺は入れられるのがあまり好きではない。成長不良で躰が小さいせいか、負担がかかりすぎるようなのだ。
 それなのに……。かなり不安になってきた。
(が、頑張らなきゃ!)
 俺は当初と違う不安に打つ勝つために、その行為に没頭した。
 弄っているうちに、それは先端から蜜をこぼし始めた。それに指先で触れ、ぬめりを広げるように撫で上げる。原さんがウッと息を詰めた。
 口に含むのはあまり好きではないが、ペニスを弄るのは結構好きだ。ほとんどの男はそれをしたいから俺を買うので、反応しないということはない。快感のために眉間に皺を寄せているのを見ると嬉しくなるし、うまくしてあげられると反応も顕著で面白い。
 が、全部やると言ったからにはいつまでも手だけというわけにもいかないだろう。俺は覚悟を決めて、それを口に含んだ。
 途端に独特の臭気が口中へ広がる。
(……濃い、かも……)
 この人、話すと子どもっぽいのに、何でこう……。
(いや、よそう。そういうことを考えるのは)
 余計なことは考えまいと、俺は自分の動きにのみ注意を集中させた。
 唇で吸って、舌を絡めて。今までの知識と経験をフル活動させて、俺はその大作に挑んだ。口に半分も含みきれず、両手を使って必死で奉仕しつつも思うように扱えない。
 モノは嬉しそうにしているようだが、これで原さん自身は本当に満足してくれているのだろうか。表情を伺おうと咥えながら視線を上向けると、気持ちよさげな原さんと目が合った。
(照れるじゃないか……)
 思わず口を離して訊いてしまった。
「いい?」
「ああ。とてもいいよ……」
 言葉にしてもらって、少し安心した。
 しばらく続けていたが、イくまであと少しかなというところで原さんに頭をどけるように額を押された。
 原さんの前に跪いていたのを起こされ、立たされる。服を脱がされそうになって、その手を押し止めた。
「脱ぐよ」
「脱がせたいんだ」
 返って来た返事に俺は失笑しそうになった。なるほど、そういうことをしたいのか。
 やっぱり原さんだな。――可愛らしい。
「好きにしろよ」
 許可を与えると、原さんは嬉しそうに好きなようにした。俺のシャツを半端に捲り上げて胸に触れてくる。そんなことをしても女のような乳房はついていないのだが、やけに嬉しそうに触っているので何も言わないでおいた。
 Gパンの前もはだけさせ、そこへ手が侵入してくる。下着の中へ手を差し込まれ腰を撫でられる。そのやり方にふと、まるで電車で痴漢するエロオヤジのようだと思ってしまった。
 胸の突起にさりげなく触れてはまた離れる。腰を撫でつつ、俺が秘かに弱い尾骶骨の下辺りを刺激され、俺自身も次第に興奮してきた。
 半端な触り方で様子を窺っていた原さんが、俺のTシャツを全部脱がせた。乳首へ顔を寄せたとみるや、いきなりキュッと吸い上げられる。
「アッ…!」
 思わず声が出た。
 ――原さんの手、原さんの唇。
 暖かく包み込まれるようで、安心して感覚に集中できる。
 Gパンも下げられ、現れた俺のモノを握られた。体型に見合った小ささで恥ずかしいが、抱かれる時には大した問題じゃない。
 原さんの手が俺の肩へ回り、抱き寄せられた。顔が近づいたと思うと、唇を重ねられる。与えられた刺激のために呼吸が乱れていた俺は、簡単に舌の侵入を許した。
 まるで小さな子どもがおしゃぶりをするように音を立てて吸われた。唇を吸い、舌を絡めて吸い、まるで俺を取り込んでしまいたいかのように口中をかき回され吸い上げられる。
 行為はあくまで優しいが、容赦なく奪われていく感覚に眩暈がする。キスだけでイけそうなほど気持ちが良かった。
 唇を離してから、原さんは妙に真面目な顔で訊いてきた。
「他の奴ともこんなふうにキスしてるのか?」
「いつもはンなことやってねえよ」
 こんなに愛情込めて口付けてくれる人なんか、今までいなかったよ。俺は憮然として答えた。
 途端に原さんがパァッと笑顔になった。そんなことが嬉しいのかと、少し意外な気がした。普通の男ならそれくらいの独占欲は持っているものかもしれないけど…。
 原さんは、触れていない部分がないくらい丁寧に俺の肌を辿りながら衣服を脱がせていく。そうしながら自分の服も脱いでいった。不器用そうに見えるが案外と器用なところもあるものだ。
 ベッドへ押し倒され、原さんの重みを感じながら再び口吻けられる。この人のキスは、本当に喰われているという感じがする。俺が熱気でポーッとなっている間に躰をひっくり返され、うつ伏せにさせられた。
 背中に息遣いを感じてくすぐったい。左手で俺の胸を支えるように触れながら、右手で下半身に触れてくる。太腿から足首まで愛おしげに撫でられて、俺の気持ちも高まっていく。息が乱れ、時折堪えきれずに掠れた声を洩らしてしまう。
 次第に原さんの顔が下の方へ下がっていく。口も使って足の付根も丁寧に愛撫され、たまらず身悶えた。
「…ッ……」
 直接性器に触れなくとも、その周辺は充分に性感帯だ。尻を撫でられ、割れ目の先に指を入れられて、それまでも好き勝手させてほとんどマグロに近い状態だというのに、更に余裕がなくなってきた。
 テクがあるというより、丁寧なのだ。ひたすら愛情込めてそんな風に触れられたら、こちらとしても愛しさが増す。結果、とても感じてしまう。
 両手両膝を着いている、いわば四つんばいの状態のところを、後ろから手が伸びてきて直接触ってきた。
「ンッ……」
 そこは既に硬くなっている。感じることに慣れた躰は、売りをする前よりずっと敏感になっている。あさましいと思われなかっただろうかと心配になった。
 原さんはそんな俺に意地悪をするように、そこから手を離してすぐ後ろの袋を弄ってきた。大きな手のひらで柔らかく揉まれ、切ないほどの快感に涙が出そうになる。我慢できずにとめどなく喘ぎ声をあげていると、背中から原さんが楽しんでいる気配がした。
(このやろう…!)
 途端に腹が立ってくる。あんな切羽詰った顔で告白してきたくせに、随分と余裕じゃねえか!?
 が、反撃する余裕が俺のほうになかった。
「……ちょっ……おま…、いい加減…に…しろよ……」
 悔しいが、頼るしかない。もっと可愛くねだったりすれば原さんもコロッと態度を変えて言うことをきいてくれるんだろうけど、どうも俺は原さんの前で甘えるということができない。
「どうして欲しい?」
「こ…の、むっつりスケベがッ!!」
 そんなジレンマを抱えているときにふざけられて、俺は半分キレて怒鳴ってしまった。
 その唇を塞ぐように、顎を捉えられてまた口吻けられる。感じているときに口中でも柔らかな舌に蹂躙されると、どうにもたまらない。
「っ……ん…ゥ……」
 更に追い詰めるように、原さんの手が本格的に前を触ってきた。
「あっ…」
 軽く握りこまれただけでも簡単に反応してしまうのに、今や悪戯な手は俺のそこを覆うように捕らえ、緩急をつけて刺激を与えてくる。うねるような快感が躰の奥から湧き上がり、その刺激以外考えられなくなっていく。
「あ、ア……ッ、んっ……はぁ…ッ……」
 自分の声がやけに甘く響く。頭の片隅で、それを恥ずかしく思う自分がいるのを感じた。
 原さんの物も勃ち上がっているのが判るが、俺の物は先走りで既に恥ずかしいほどぐじゅぐじゅに濡れてしまっている。このままだといくらも保たないと思ったとき、ようやく後ろへ触れてきた。
 指を入れようとするが、俺の恥ずかしい液で濡らした程度では簡単には侵入できない。さてどうするかと思ったら、急に躰をひっくり返された。
「顔、見せて」
 のしかかられ、紅潮した顔を見下ろされる。
 こんな状態の顔を見られるのは恥ずかしい。せめて顔をそむけたところを胸の突起を撫でられ、そこを指先で摘まれてアッと仰け反った。
 手で弄るだけでなく唇で吸われ、硬くとがったところを舌で転がされる。
「んっ……ウ……ハァッ……」
(もうやだ、コイツしつこいよっ!)
 下はもう限界だというのに焦らすように更に敏感なところへの愛撫で、俺はいい加減、泣きが入るところだった。
 ようやく俺を弄くるのに満足したのか、乳首から顔を離して膝へ手を置かれる。足を広げさせられ、奥へ再び指が侵入してくる。
 先ほどより大分濡れてきていたので、今度は指一本を楽に受け入れることが出来た。指でしばらく解される。
 腰を掴まれ、ひっくり返されそうな勢いで持ち上げられた。まるで赤ん坊がオムツを替えられる時のように尻を上げさせられ、そこへ舌を差し込まれて驚いた。
「ア……んっ!」
 熱い舌の感触がたまらない刺激を与える。中からじんわり広がってくる快感に、躰が小刻みに震えてしまう。
「ハ……はぁ……ン、アッ……」
 もうこれ以上はほんの少しも耐えられないと思った瞬間、ようやく舌が退いて腰を原さんの膝の位置まで下ろされる。
 そこへ原さんの物が当てられたのを感じた。
「あ……」
 少しばかりの緊張の後、それはゆっくり進入してこようとした。だが、普通ならそれで繋がれたかもしれないが、なんといっても原さんのアレだ。到底その程度の前戯では足りない。
「…イテッ!」
 堪えようとしたが、痛みで声が出てしまった。
「ごめん、痛いか?」
 原さんが申し訳なさそうに言うと、動きを止めた。
「ちょっと待って」
 濡らし方が甘いからだろうと、原さんを押しのけてベッド脇に作り付けられた小テーブルの引き出しを開けると、そこに入っていた潤滑剤を取り出した。
(入ってて良かったぁ)
 たまにないこともあるのだ。今日がそうでなくてマジに助かった。
 俺は自分でそこをたっぷり湿らせ、これで大丈夫だろうと納得がいったところで「いいよ」と声をかけた。
 労わるように原さんの手が俺の腰を撫でる。そうして再び当てがわれ、大きなそれがググッと今度こそ進入してきた。
「――ッア!」
 かなり濡らしておいたが、それでもきつい。俺を穿ち、そこをぎちぎちに広げて入ってきた物は、見た目どおりの量感を持って中を充たしていく。
 物に対してそこが狭すぎるのだろう、原さんも苦しそうだった。それでも俺を気遣って、挿入しながら前を弄ってどうにか痛みを和らげようとしてくれる。
 腰が重なり、最後まで入ったのだと実感したとき、俺の上でも原さんが安堵の溜息を吐いたのが判った。
 ゆっくりと腰を引かれ、中の物がズルリと引いていく。最後まで抜けきらないうちに再びググッと押し入られ、快楽か苦しみか判らないうめきが俺の喉から洩れた。
 数回挿送を繰り返す内に、原さんは余裕をなくしていった。その感覚に夢中になるように動きが早まっていき、その動きに引き摺られて俺の躰が激しく揺さぶられる。
「あっ! …ああっ……う、クッ……」
 このときになって、俺はようやく原さんの牡に気づかされた。この優しい人にも人並みの肉欲がある。――いや、それは抑圧されていた分だけ通常の人よりいっそう激しいものかもしれなかった。
 正直かなり痛かった。そこが切れないのが不思議なくらいに俺は限界で、快感も多少はあるが苦しみが強い。
「ん――っ……ん、う……んっ……っ……」
 だが、激しくなった挿送にきつく瞑っていた目を必死に開いて原さんを伺い見ると、彼は眉間に皺を寄せて俺より苦しそうな顔で――その途端、俺の奥にドクンと火が点いた。
「ああっ! んっ、ハッ……ア、あっ……んアアッ……」
 実際は快感が強くてそんな表情になっていただけだろうが、俺はその痛いほどに感じてくれている原さんに感じてしまったのだった。
 中がどんどん熱くなっていく。穿たれ、また引き出されるたびに中から躰をひっくり返されそうな感覚に喘ぐ。苦しいのか気持ちいいのか、次第に俺自身も訳がわからなくなった。
「…ッア……アゥッ……ア、ンッ…ク…アァッ…」
 壊れてしまうかもしれない。そう思った。そうして、壊れてもいいと思った。
 終いには、俺は肩から上しかシーツへついていないほど腰から高く持ち上げられ、上から激しく抉られ続けた。
「…ウァッ…ク、ウゥ…アアッ……」
 痛イ、苦シイ……気持チイイ、嬉シイ…――頭の中を、よく知っている様々な感情がぐるぐる回る。
 もうダメだと思ったとき、一際強く穿たれて、自分の体が烈しく痙攣するのを感じた。
「ヒッ…――!!」
(愛してる…!)
 ほとんど悲鳴に近い喘ぎをあげると、一瞬脳裏が白くなる。
 俺は生まれて初めて意識を失ったのだった。

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