SWEET


- 3 -

 ときどき抵抗する様子も見せたが、そのたびにきつく睨みつけた。それだけで佐倉は怯えた眼差しで顔を伏せて大人しくなった。
 俺は佐倉を自宅へ連れていった。玄関を上がらせるときに、またしても抵抗し始めた。
「余計な手間かけさせんな」
 焦れた俺は佐倉の襟元を掴むとそのまま絞め上げた。
「…っ、くっ…苦し……」
「大人しくしてるな?」
 佐倉はそれ以上絞められないよう喉元にある俺の手を必死で掴みながら、大慌てで何度も小さくうなづいた。
 俺は佐倉を解放すると、急かすように靴を脱がせて二階の自室へ上がった。
 棚付きの机とベッドとコンポ、俺の部屋にはそれしかなかった。狭くてありきたりだが、個室を持っていることをこの時ほど有り難いと思ったことはなかった。
「脱げ」
 部屋のドアを閉めるなり、俺は簡潔に言った。
 佐倉はビクンと震えると、遠慮がちに口を開いた。
「…せ、せめてシャワーとか……」
(何、女みたいなことを)
 俺は鼻で嗤った。
「お前は俺の物だ。それにお前は頷いたな?」
 懇願するように見開いた目を向けてくるのへ、俺はただ睨み返した。
 観念したように、佐倉はのろのろと腕を上げると制服を脱ぎ始めた。上着を脱ぎ、シャツのボタンを外す。俺も自分の服を脱いだ。
 ベルトを外したところで佐倉の手が止まった。
「全部脱げ」
 ドスの利いた声を出すと、佐倉は慌ててズボンを脱ぎ捨てた。
 それでもさすがに下着は脱ぎ辛いのか、白いトランクスに靴下の半端な姿で立ち尽くしている。
「全部だ」
 苛立ちを込めて口にすると、泣きそうに顔を歪めて下着へ手を掛けた。
 あまり陽に当たっていない様子の、生っ白い躰。筋肉が薄く、貧弱な印象を免れない。ペニスもおそらく平均より小さいと思われる代物で、剥けているのがいっそ不思議だった。
 そんな観賞を一瞬走らせた視線で済ますと、俺は有無を言わせず佐倉をベッドへ押し倒した。
「アッ!」
 佐倉の手が何かに縋るように宙を掴む。間髪置かずバスッと重い音をたててベッドが沈んだ。固めのスプリングはわずかに上下運動を繰り返し、男二人の体重分だけ沈んだ。
 俺は夢中でその貧弱な躰にむしゃぶりついた。一体何が俺をそんなにも駆り立てたのか、俺には判らなかった。佐倉も初めてだろうが、俺にしてもこんなことは初めての経験だった。
 首から胸から背中から、到るところに口吻けて所有の朱印を刻んでいく。俺ばかりが興奮しているのをみっともないと思う余裕もなかった。だが必死に耐えている風情の佐倉に腹が立ち、ペニスへ手を伸ばした。そこをしごきながら乳首を吸い上げると、さすがに平静ではいられずビクンと痙攣した。
「アッ、やっ……」
 抵抗したくとも俺が怖くてどうにもできない佐倉に、俺は更に興奮した。佐倉の肌が思いのほか感触が良かったことも相まって、手淫にも熱が入る。だが佐倉はなかなか反応しなかった。
 一緒に楽しむために時間を掛けるような余裕もなければ、その方法も判らなかった。
 俺は自分から人を抱いたことがない。女相手にしたことはある。寄ってくる奴は少なからずいたし、「躰だけ」と言われれば内心はどうあれヤるだけで面倒なつながりを持たずに済む。そうした女の相手しかしたことがなかったのだ。
 そんなだから、俺は自分からの奉仕などしたことがない。どうしたら佐倉をよくさせられるのか皆目判らなかった。
 俺は欲望のままに佐倉を貪った。ひっくり返してうつ伏せ俯せにし、腰を掴んで引き寄せる。すっかり硬く勃ち上がった己の物を強引にねじ入れようとしたが、そこは強い抵抗で俺を拒んだ。
「痛っ! やだ、痛いよっ!」
 同時に佐倉が悲鳴を上げた。
 ここを使うというのは知識では知っている。他に佐倉を俺の物にし、俺の欲を一時的にでも抑えることができるのは、その行為だけだ。
 どうすればいいのか。
「ちょっと待て」
 俺は佐倉から一旦退くと、部屋を出た。隣のお袋の部屋へ入り、鏡台にハンドクリームがあるのを見つけて失敬した。
 自室へ戻ると佐倉が毛布を裸身に引き寄せて、青ざめた顔でこちらを見ていた。
 強張った顔で小刻みに震えている佐倉も美しかった。女でもないのに、こんな貧弱な男が何故こんなにも美しく見えるのか不思議だ。
 だが今はそんなことを悠長に考えているときではない。俺は佐倉から毛布を引き剥いで再びベッドへ上がると、すっかり肌の冷たくなっている佐倉を再びうつ伏せに押さえつけた。
「あ……い、嫌……」
 佐倉が反射的に身を起こそうとしたが、強く背中を押さえつけるとそれ以上抵抗しなかった。力の差ははっきりと身に沁みたようだ。
 腰を上げさせ、足を開かせる。秘処が丸見えになる格好だ。枕に顔を押し付けた佐倉が、低く嗚咽を漏らしていた。
 俺は指先にたっぷりとクリームを取ると、蕾へ塗り込めていった。ずるりと指を差し込しこんだそこは熱く、驚くほどに狭い。
「いたっ……」
 指二本がせいぜいの狭さだが、焦っている俺は無理矢理三本を飲み込ませた。確かにきついが、クリームのおかげでどうにか抜き差しはできる。俺は乱暴に抽送を繰り返し、無理矢理にそこを広げていった。
 右手で中を広げながら、思い出して左手で佐倉の物をしごいてやる。
「……ン、アッ!」
 途端に佐倉の背中が跳ねた。どうやら前と後ろと両方の刺激でようやく感じ始めたらしい。
「あ、あ……やっ、嫌だ!」
 首を振り、必死で耐えているが、前はどんどん硬さを増していく。それでもなかなか完全には勃ち上がらない。
 俺は待たなかった。 
「ヒッ…アーッ!」
 そこへ己をあてがうと、今度こそ佐倉を征服するために、突き上げるように己を埋め込んだ。
「…クッ」
 あまりの狭さに俺の喉から声が漏れる。佐倉はきつくシーツを掴み、身を硬くして悲鳴も上げられないようだった。
 しばらく動きを止め、佐倉が僅かでも慣れて力を抜くのを待った。その一瞬を逃がさず抜けない程度に己を抜くと、再度勢いよく砲身を打ち込んだ。
「アアッ!」
 佐倉が上げる悲痛な叫びでテンポを取るように、俺はより深く奥へと佐倉を蹂躙していった。
 佐倉を手にし、佐倉の熱を感じ、佐倉を犯す。それは俺にかつて感じたことのない陶酔感と満足感を与えた。
 一度目は短かった。中へ放つと反射でかきゅっと締めつけてきて、それがたまらなかった。
 二度目は長く、三度目は正面から執拗に攻め続けた。佐倉はほんの数十分の間に、俺の手の中でぐったりと生気を失っていった。それでも俺は、まるで佐倉の内なる熱に取り付かれたように、躰を重ねる行為を止めることができなかった。
 ――それは本当の意味で初めて知った、甘い蜜の味だった。
 シーツは俺の放った白濁と佐倉の赤い体液とでドロドロに汚れた。
「……やぁっ……も…許してぇ……」
 幼い子どものように啜り泣くのを見下ろしながら、俺は飽くことなくいつまでも揺さぶり続けた。

 自分の足で立てなくなった佐倉に代わって後始末をしてやり、背負って佐倉の家まで送っていった。
 ドアノブに縋るようにしながら持っていた鍵で玄関を開けた佐倉は、ドアを閉める前に、すっかり恐怖で染め上げられた瞳を俺に向けた。
「俺から逃げようとしても無駄だぞ」
 そんな佐倉へ、俺は高圧的にすごんで見せたのだった。

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