White Labyrinth


〜 プロローグ 〜


   ――…ハァ……ハ…ァッ……
 何もなく、どこまでも果てしなく続く白い空間に、快楽とも苦痛ともつかぬ喘ぎ声が響く。
 胡座をかくように座った浅黒い肌の男の上に、白く艶かしい者が腰を落として淫らに髪を振り乱していた。
 ――…ッ…ア……フゥッ……ハッ……
 その様子はどうみても、激しい快楽を追っているように見える。だが、
 ――…ハ……ッ…グ、ウァッ……アーッ!
 堪えきれない悦楽に夢中になっていたかのような喘ぎが、突如それまでとは違う様子で乱れた。
 ――ア、アッ……ヒィィッ! ……ア…アアァァァ………
 突然、男の上に乗っていた者が激しく苦しみだした。そうして見る間に艶やかだった若い肌が萎びて縮み、哀れな木乃伊と化してゆく。
 断末魔が収まると男は満悦の溜息を吐いて、自分の上に被さった憐れにも醜い皮の塊と成り果てたものを無造作に傍らへ投げ捨てた。
 何ものにも興味を無くしたように食後の肉食獣の体でしどけなく寝そべると、精悍な裸体を伸ばす。
 そのまま眠りにつこうとし、一度はごろりと横になったのを何かに気づいたらしく、ピクリと反応して身を起こした。
 何もないはずの空間の向こうに、男の目には何かが映っている様子だった。視野に捕らえた何かに微笑を浮かべ、物騒な仕草で舌なめずりをする。どうやら新たな獲物の気配を捕らえたようだった。
 野生の動物ならば、空腹が充たされればしばらくは狩りをすることはない。だが、男はそうした動物とは違った。
 ――危険なもの――
 男はゆっくりと立ち上がった。

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