* 注 意 *
この先は本当にキツいので、苦手な方は飛ばして下さい。
不快な思いをされても責任は取れません!
〜 8 〜
ティングは外に監視を置いた部屋に軟禁された。
(やっぱり駄目だったか……)
脱走を試みたことを後悔はしていなかった。だが予想はしていたとはいえ、あれだけ何もできないまま簡単に連れ戻されてしまうとは…。
絶望に近い諦めの気持ちで、格子のはまった窓越しに夜空をぼんやり眺めていたときだ。唐突にドアが開かれ、大柄な男二人が部屋に入ってきた。
「来い」
驚いたティングが状況を把握できないうちに、有無を言わさず両腕を掴まれ、半ば引きずるようにして歩かされる。
奴隷棟を出ていくつかの棟を抜け、本邸に入ったところでようやくザビオンの元へ連れて行かれるのだと察しがついた。
二度目のお声がかかったのか。今日の脱走未遂を知って、何事かあるのか。何が待ち受けているのかは判らないが、どう考えても良いことではあるまい。
しかしティングにはもう、ここから逃げ出す機会は与えられまい。
(でも、ある程度長くここにいれば、いろんな穴が見えてくるかもしれないし…)
それでもまだ希望を失いきっていなかったティングは、この先に待ち受けている地獄のような責め苦を全く想像できずにいた。
本邸に入ってしばらく行くと、そこに別の男達が待っていた。おそらく本邸で働いている奴隷なのだろう。
ティングは彼らに引き渡され、先日呼ばれた時とはかなり趣の異なる廊下へ通された。大きな燭台に沢山の蝋燭をさした物を、更に幾つも置かれていた前の廊下と比べて、そこは必要最小限の明かりのみが廊下を照らしている。薄暗い壁をおずおず見上げると、優美さの欠けたいかめしい装飾がおどろおどろしく、何やら見てはいけない邪悪なものでも潜んでいそうで、ティングは慌てて視線を自分の足元へ戻した。
廊下の端へ来ると、そこに更に別の男が待っていた。ティングの見たこともない不思議な紋様を刺繍した、足首までもある長衣を着ている。
男は無言でそこに置かれた見上げるほど大きな彫像へ向かうと、両手をふわりと動かした。一体何をしたのかまるで判らなかったが、意味を考える間もなく彫像が滑るように横へ動き、そこへぽっかりと穴が現れた。穴は階段になっており、地下へと深く続いている。
ティングが驚いて呆然としているのに構わず、男を先頭に階段を下りようとする。
――いやだ!
階段へ一歩踏み込んだ途端、ティングの背筋を言い知れぬ悪寒が走った。この先へ行ったら、もう二度とあの明るい世界へは戻れない。そんな強い予感がしたのだ。
恐怖にひざが崩れ、その場にしゃがみ込んでしまった。
「…進め」
そんなティングを両脇の男が有無を言わさず引きずり立たせる。ティングに選択権はない。担がれるように階段を下りながら、ティングはただギュッと目を瞑って耐えるしかなかった。
永遠に続くかと思われた階段は、実際にはほんの三階分程度だったろう。澱んだ空気の独特のにおいの中、下りきったところに短い廊下があり、いくつかのドアが見えた。
男がその中の一つを開け、先にティング達を通す。それほど広くはないが、なかなかの調度が整えられた部屋だった。部屋の一隅に大きなベッドがおかれていたが、それよりも用途の判らない雑多な物が自己主張しているため、寝室という感じはしない。
あらかじめ命令されていたのだろう、男達が部屋のほぼ中央にある天井の滑車から下げられた縄を、ティングの両手首に巻く。床に爪先がギリギリつくかつかないかという高さまで吊り上げられ、痛みにティングは唇を噛んだ。
男達は去り、ドアが閉じられる。誰もいない、明かりもない部屋に吊るされたまま残されたティングは、激しい焦燥感にかられた。
もしこのまま永遠に誰も来ず、死ぬまでこうされているのだったら……?
そんな嫌な予想ばかり脳裏に浮かび、落ち着こうと思うほどに焦りが募っていった。
何とか縄から抜けられないかと腕をよじろうとしたが、何の支えもない躰は逆に手首により一層の重みをかけ、痛みが増すだけだ。必死で爪先を伸ばして立とうとしても無駄だった。
手首がすり切れ血が滲み出す。肩が抜けそうに痛い。
どうにもならないと知って抵抗する気力をなくしたティングがぐったりしていると、静かにドアが開いて部屋に明かりが射した。その眩しさに目を眇める。
立派な燭台を手に、ザビオンが入ってきた。
ザビオンが壁にはめ込まれた小さな燭台へ自らが手にした燭台で火を移すと、どういう仕組みか部屋中の燭台へ次々と明かりが灯っていく。一瞬のうちに眩しい明かりにあますところなく晒け出された室内を目にして、ティングから血の気が引いた。
先刻連れてこられた時は小さな燭台のみで照らされていたためよく判らなかったが、そこに置かれた様々な物は家具などではなく、明らかに拷問やその他よからぬことに使われる道具だったのだ。
まだ明かりに慣れずに目を瞬かせながらも、そのあまりの情景に茫然とする。そんなティングを一瞥して、ザビオンがティングへ近寄っていった。
吊り下げられていても、まだ子どものティングよりザビオンのほうが高い。ザビオンはティングをじっと見下ろしていたが、恐怖と不安におののき畏縮しているティングの頬を突如張り飛ばした。
「…ッ!!」
声にならない悲鳴をもらし、ティングの躰が大きく揺れる。ティングの手首を拘束する縄がギシッ…と軋んだ。
「一人前に」
憤怒を宿した声で嘲るように言うと、ザビオンは傍らに置かれてあった鞭を手に取った。
「莫迦な考えを起こしたことを、骨身に沁みるまで後悔させてやろう」
ヒュンと勢い良く鞭が振り下ろされた。
「アッ!」
ティングの背中に無数の赤い痕ができる。
皮を細く裂いて更に所々に切れ目を入れて棘状にさせ、樹液で固めた鞭は、傷つけることよりも長く痛めつけることを目的とした物だった。傷は浅いが数多くつき、振り下ろされた瞬間鋭い痛みが走る。その後もじくじくと長く痛みが続いた。
ティングの細い悲鳴と懇願とがしばらく続いた。やがて小さな背中は真っ赤に染まり、ティングの足元に赤い水溜まりが出来始めた。
声もなくぐったりし、反応の薄くなったティングに、ザビオンはようやく鞭を使うことをやめた。代わりに香油を取り出すと、手に取ったそれをティングの後孔に塗り込める。
また犯されるのか――諦めの気持ちでティングが思ったとき。
「ヒアァーッ!!」
すっかり涸れてしまったかと思ったティングの喉から、断末魔の如き悲鳴が上がった。内蔵にまで達する勢いで、ティングの後孔に固く冷たい異物が容赦なく挿入された。それはティングの身に余り、その箇所は裂けて更に赤い水溜まりを広げさせた。
殺さないギリギリの拷問だった。
が、その責め苦もまだ始まったばかりだったのだ。
血塗れの異物は、ティングの体温を吸収して次第に柔らかく溶け始めた。多くは足を伝って流れ落ちていったそれは、じわじわと身体の内部から浸透してティングを狂わせ始めた。
「……ア、アッ……ハァッ…ンアッ…アゥ、アァ……」
ティングを犯す張形は、少量ならば普通に楽しめる程度の媚薬を固めた物だった。あまりにも多すぎる量を敏感な箇所から無理に摂取させられ、激しすぎる快感にティングは我を忘れて身悶えた。
縄が激しく軋み、縛られた腕が裂けて血が滲む。全身を赤く染め、足の間から飴状になった媚薬を滴らせるティングの姿に、ザビオンの口元に酷薄な微笑が浮かんだ。
「お前はいやらしいな」
ティングの顎を捕らえると、まるで愛おしむようにそっと囁く。
「そんなになってまで快楽が勝るか?」
全身を巡る快楽に躰を痙攣させ、意識朦朧としたティングには、何を言われているかも判っていなかった。
「…ア、ハァ……あ、イヤ…ァ…助けて……」
ただ自分を解放できるのは目の前の人物だけだということのみ記憶していて、麻痺した思考で必死にそれだけ告げる。
だが待っていたのは更なる苦痛だった。
「地下の部屋はあまり数がないのだ。あまり部屋を汚されたら困るな」
悦に入って一人呟くと、ザビオンは小さなリング状の枷を取り出した。それを薬の刺激によって腫れ上がったティングの性器の根本にカチリと嵌める。
「アアァッ…!」
ティングの口から一際大きな吠口が洩れた。
もはや精を解放して一時楽になることさえできなくなった。激痛と悦楽とで、脳裏まで真っ赤に染まっていく。
全身を赤く染めて呻き、細かく痙攣しつつ耐え難い欲情に我を忘れて暴れ苦しむティングを、ザビオンは酒を注いだグラスを片手に気の済むまで観賞していた。そのうち眠気を催したのか小さく欠伸すると、苦しみ続けるティングを放って眠りに行ってしまった。
挿入された物が完全に溶けて躰から流れ落ちるまで、なかば吊るされた状態で半日近くをティングは苦しみ続けたのだった
すっかり陽が昇ってからようやくザビオンが暗い地下室に戻ってきた。乾ききらない背中の傷と、すっかり鬱血してしまった性器を晒し、瀕死で痙攣しているティングに満足そうな薄笑いを浮かべる。
一度後孔を洗浄した後、ゆっくりと犯された。ザビオンがティングの中に解放する時、ようやくリングを外される。解放された衝撃からきつく締め上げることで、奉仕させられた。
意識をなくせないほど痛めつけられたティングは、その後、専用の魔導師と奴隷達によって手厚い治療が施されたが、それは再び奉仕するためにすぎなかった。
そうして地下の一室を与えられて完全な監禁状態になったティングに、まったく日の光を浴びることのない生活が始まった。
拷問と奉仕のための治療とを繰り返す日々に、ティングは逃亡という言葉さえ忘れるほどに傷つけられ、自我を失っていった。
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