* 注 意 *
この先は本当にキツいので、苦手な方は飛ばして下さい。
不快な思いをされても責任は取れません!
〜 9 〜
それは生き地獄という言葉に相応しい、過酷な日々だった。
与えられた部屋は以前よりも豪華になり専用の風呂も付いていたが、陽の射さない部屋は鬱々として否応にも気を沈める。おまけに無理な奉仕を連夜の如くさせられ続け、ティングは瞬く間に衰弱していった。
いくら高価な薬や魔導の助けがあったとしても、躰に蓄積されていく痛手や疲労の方がずっと勝る。表面的に変化はなくとも、ティングの生命そのものが削れていった。
実際に、強いられた行為によって幾度となく死にかけたティングだが、やがて更に状況は過酷になった。
邸の地下に作られたこの秘密の部屋に、やはり秘密の通路を用いてザビオンと嗜好を同じくする者が夜な夜な集まっては狂宴を繰り広げた。その彼らの相手をすることを強要されたのだ。
彼らは大方、気に入りの少年少女を連れていて、酒や珍味を楽しみながら悦楽に耽る。時に手持ちの性奴を交換し、時に複数が共に交わりつつ自堕落な時を楽しむ程度までは、まだ一般の人間にも想像のつく範疇のことだろう。
そこにティングが加わってから、すっかり会の様相は変わってしまった。
ティングは『お披露目』からして異様な扱いを受けた。
その晩、賓客を招き入れるための入口に、奇妙なオブジェが拵えられていた。まだ幼い少年の両手を一括りにし、足を広げる形で両膝を棒の端と端とで縛って、その手と棒の先の綱を天井から下がった頑丈な鉤へと吊るしてある。
少年は宙に浮いた形で持ち上げられ、腰の位置がちょうど大人の腰の位置に上げられているため、客は好みで少年に触れるなり犯すなりできた。
一人、大分夜更けてやってきた者がいた。既に遊戯に耽っていたメンバー達の中心にいたザビオンが、冷笑を浮かべて告げた。
「ペナルティだ、その子の中に一回出しなさい」
「なんと……これはこれは」
既に精液まみれでぐったりした少年――ティングを見て、遅刻者は驚愕しつつも邪な微笑を浮かべた。
「今夜のメインディッシュはもう随分と食い荒らされてしまったようだが、こんな汚れきった部分が私の取り分なのかい? これは大変なペナルティーだ」
室内に、それを聞いたメンバー達の低い笑声が広がる。
「一番遅刻した者は、なんでも言うことを聞かないといけない。リオネル、決まりだぞ」
中から最もらしい批判の声が上がる。
「ああ、それは判ってるさ。…仕方がない、さっさと済ませるとするか」
肩を竦めた男は、しかし口とは裏腹にすぐにも行為を行える状態になっていた。ぐったりとして意識朦朧なティングの細腰を掴むと、まだ大くの精を蓄えて蜜を滴らせている秘部へ凶器をあてがい一気に突き上げる。
「アァッ!」
ティングの涸れた喉から、反射的に細く悲鳴が洩れた。
周囲から非難の声が上がる。やり方が手ぬるいというのだ。男は心得たりと、ティングの躰が綱からも浮くほど激しく乱暴な動きを始めた。
「アーッ、アアッ、ヒアーッ…!」
ティングの喉から更なる苦鳴が続いた。
男の動きに合わせてティングの躰が大きく揺れる。綱を結んだ鉤が軋み、突き上げられては落とされるたびにティングの縛られた部分の肌が擦れて血を流した。同時に、痛みと不自然な姿勢でティングは全身が軋むのを感じた。
だが強い薬を使われているために、何度酷い行為を受けようと敏感に反応してしまう。悦びを示す幼い性器に、男の動きが益々激しくなった。
「ウッ…ウ、ア…ッ…ア、アッ…アンッ……」
止めどなくこぼれ続ける喘ぎに、刺激された男達が手近の奴隷へと次々とのしかかる。おぼろな蝋燭の明かりに浮かび上がった室内に、淫らな息遣いが満ちていった――。
少年を吊るして突き上げる行為は、しばらく男達の間で流行になった。
残酷な遊戯に、彼らはアッという間にはまった。何をしようと誰はばかることのないティングの存在は、彼らの負の部分をいたく刺激したようだ。
よく仕込まれ、ただ言われるままに奉仕する小姓達に飽いた男達は、無理矢理に開発させられたためか異様なまでに敏感な反応を示すようになったティングに強い支配欲を示した。力無く啜り泣き、泣きながら懇願しつつも快感を表すいたいけな少年を、思う存分いたぶり生死さえその手に握ることは、彼らに強い満足感を与えた。
男爵の元にはなかなかの力を持つ魔導師がおり、彼らによって瀕死状態にまで傷つけられても、一晩経つ頃には再び奉仕が可能な程度に回復させられることも、彼らの箍を外す要因となった。
普通の子どもならば、そこまでされれば自ら命を絶つことを選びそうなものだが、逃亡と自殺予防の監視は付いているとはいえ、何故かティングは死に安息を求めることをしなかった。
どんなに形振り構わず許しを請い、一晩の間に数え切れぬほど意識を失う行為を成されても、ティングは耐えてそこにいた。思考力の低下したティングの脳裏には、あるいは自らの命を犠牲にして自分を生かした母親の面影しか見えていなかったのかもしれない。
そんなティングを、男達は残酷な子どものように嬉々としていたぶった。新しい玩具を見つけると試し、ありとあらゆる体位を試し、様々な薬や拘束具を試した。
「最近こんな物の蒐集を始めましてね。皆さんのお好みに合う物があれば良いのですが」
そう言って、澄ました顔でザビオンが様々な道具を取り出してみせると、男達は飛び上がって喜んだ。おそらくは国での有力者達だろう彼らに、ザビオンは快楽を与えると同時に弱点を握ることで実力をつけてきたらしかった。
夜毎に繰り広げられる饗宴によって感覚の麻痺した男達は、その玩具に飛びついた。
道具を使われる間、ティングはしばしば勝手に達しないよう性器に管を入れられた。放出するための出口を塞がれ、刺激によって無理に快感を与え続けられながらも達することができない苦痛に狂ったように泣き叫び、喉がすっかり涸れてしまっても荒い息づかいで悶え続ける壮絶なティングの姿に、男達は憐憫の情より欲情をもよおした。
そこに集った者は皆、異様に強い支配欲を持っていた。欲望のままに、ティングへ更なる陵辱を与え続けた。
ティングはここへ連れて来られてから一体どれだけの日数が経ったのか、既にまったく判らなくなっていた。陽に当たらない肌は否応にも白く透け、伸びやかな手足は細って妖しい色香を増していた。度重なる暴行に次第に感情が鈍っていき、まるで生きた人形のようだった。
いつしかティングは、夜に集う男達総ての相手をさせられるようになっていた。
ティングと関わることで凶暴になる主人を普通の性奴や愛妾達が嫌うため、彼らを置いてこざるを得なくなったからだ。当然、その分ティングの負担は増した。
ある時、後孔に一度に二人を受け入れ、さらに複数の道具を使われて、文字通り死にかけた。
自ら作った血溜まりに倒れ込むティングを、順番待ちしていた男が腰掴んで持ち上げ挿入しようとした。
「そこまでです」
その手を、ふいに横から割って入った手が止めた。
「それ以上されると私にも回復させられなくなりますので……」
ティングをこの地下に連れてきた魔導師だった。ギリギリの時にそうして声を掛けることでティングが完全に使い物にならなくなるのを回避するのが、その場にいて唯一ティングを犯さない彼の役目だった。
「それと、かなり重度の怪我でも時間を掛ければ回復させることは可能ですが、死んだ者を生き返らせることはできませんので重々御注意下さい」
それまで彼の存在に気づいていなかった男達は、そのことを知って以来、逆にその声がかかるまでティングを弄り続けるようになった。
――きっとここで、ボロボロになって死ぬんだろう……。
ティングは既に諦めていた。
(そんなことのために母さんは自分を生かしてくれた訳ではないだろうに、このままでは報われないけど、どうしようもない)
まだ完全に感情が消えないまでも、ティングはすっかり希望を失っていた。
その日もまた妖しい力で回復させられ、男達が集まる前に自室で何をするでもなくぼうっとしていた時だった。鍵の音がし、ドアが空いた。いつも通り食事を乗せた盆が運び込まれ、ベッドへ無気力にうつ伏せていたティングはそちらへ目をやって驚いた。そこにティングとそう変わらない年頃の少年がいた。
いつも食事を運んでくるのは、何かあったら直ぐさまティングを捕まえ取り押さえられるような男だった。こんな少年が食事を運んできたことは、この地下の牢獄ではただの一度もなかった。
ティングの視線に少年はすぐ気がついた。驚くティングへ、少年は明るい笑顔を向けた。
「冷めないうちに食べろよ。その方が美味いし消化しやすい。力つけとかないと、いざって時に動けないからな」
少年の言葉にティングは眉を顰めた。彼が何を言っているのか理解できない。
「助けてやる」
そんなティングへ、少年は力強く言った。
「俺、最近マシウ中佐って人に買われたばっかなんだけど、前に一度ここに連れてこられた。それで、お前のこと見てびっくりした。その前にも酷いことしている奴は沢山見てきたけど、お前のは酷すぎる」
少年は声を潜めつつも、熱心に語りかけた。
「俺は両親も奴隷で、生まれたときからこうして奴隷になることが決まってた。けど、奴隷っていっても親も普通に町で働いてる。財は蓄えれられなくとも、生きていくのが嫌ってほどじゃない。それに、俺達の主人は民から悪い奴って言われるのを嫌がるから、待遇はそんなに悪くない。自分がどんなに酷いことをしていようと極悪人なんて呼ばれたくないらしいから、表だっては大したことはできないんだ。だから俺はまだ大丈夫なんだけど、お前は誰にも知られてなくて生きてない奴だから……逃げなきゃダメだ。とにかく表にいかなきゃ。オレ、お前のこと気になって、またここに連れてきてくれるように頼んだんだ」
ティングは少年の話を聞き、不思議な面持ちで盆へ目をやった。
「それ、オレが運んでみたいって言ったらあっさり許可されたぞ」
少年は得意そうに言った。
「地下からは抜け出せないってタカくくってるみたいだな。でもオレ知ってるんだ、ここには抜け道がいくつかあるんだぜ。ちょっとしたツテがあって、こっそり教えてもらったんだ」
少年は愛嬌のある顔でニカッと笑った。
「お前のこと、絶対助けてやる。だからもう少しだけ待っててくれ」
一方的にそれだけ告げると、少年は何事もなかった顔をしてスイッと部屋を出ていった。
その晩も行為は激しく酷かった。
まず媚薬をかがされてから縛られ、吊るされて、「手始めに」その場にいる者に一通り犯される。その後うやうやしく取り出された新しい玩具を後孔に入れられた。
最初は小さな棒だった物が、ティングの体液と体内に出された精液とで膨れ上がり、内蔵を圧迫してティングを苦しめ始めた。
秘部が裂けて血を流し始め、文字どおり死にそうな苦しみに痙攣する。それでも薬の働きのためにティングの下腹では幼い印が快感を示す。
「よいのだろう? 強情を張らずに悦い顔をしてみせろ」
嘲りを含んだ声が更にティングを苦しめた。
あまりの痛みに目の前が真っ赤になる。快楽より苦痛が増して失神し、ようやく異物を取り出された。
気付け薬を嗅がされ、気がつくと再び男の物を受け入れさせられて、全身に這い回る手の感触に悲鳴をあげて悶えまくった。
ティングには、いつ終わりが来たのか全く判らなかった。
「おい、生きてるか? お願いだから起きてくれ!」
肩を揺さぶられ、必死な声に呼ばれてようやくうっすら目を開ける。夕方食事を運んでくれた少年が、不安そうな顔でティングを見下ろしていた。
「ああ、気がついたか」
少年は明らかにほっとした顔をした。
「うまい具合に今、人がいないんだ。みんな腹ごなしに隣りの部屋へ行ってる。逃げ出すなら今のうちだ!」
少年がティングの肩を抱えるようにして、ティングを抱き起こそうとした。だが少年自体も華奢なため、そう簡単には立ち上がらせることが出来ない。
「お願いだから、今だけ辛抱してくれ。何とか歩けないか?」
ティングは霞がかかったような頭で小さく頷いた。
助かる、とは思わなかった。きっと今回もダメに決まっている。それでも少年の気持ちを無碍にすることができなかった。少年は、自分は大丈夫だと言った。ティングはその言葉を深く考えることなく素直に納得していた。
それがまったくの間違いであったと知らされたのは、その直後だった。
少年がティングを抱えるようにしてドアへ向かうと、そこには待ちかまえるように男達が薄笑いを浮かべて立っていた。
「おや、まだ宴は終わっていないというのにおまえ達は一体どこへ行くつもりなんだ?」
「あ……」
少年は硬直した。ティングを支える手が小刻みに震えだす。
――罠か!
ティングはようやく気づいた。少年の浅薄な考えが見通せないほど、ここへ集う男達は愚かではなかったということか。
突如踊りかかってきた男達によって、ティングと少年は引き離された。少年はティングの代わりに吊るし上げられた。
「今日はとっておきがあるのだよ」
少年へ、ザビオンが優しげな口調で言った。
「例の物をこれへ」
ザビオンが手を叩くと、魔導師が小さな鉄の箱を持ってきた。蓋を開けると、中から慎重に何やら小さな物を取り出す。
「これは非常に珍しい物でね、一種の寄生虫なのだが、特別に魔導を施して作った奇形なのだよ」
悦に入った声でザビオンは説明してみせた。
「これが体内に入ると、表面的には何も変わらないのだが、少しずつ内蔵が喰い荒らされていく。その際当然ながら排泄物を出す訳だが、これに強烈な媚薬のような効果が含まれていてね。こんな卑小な虫だが、その効果は驚嘆に値するよ! この虫に憑かれた者は、死の恐怖にさらされながら快感にのたうつという訳だ」
薄茶色の芋虫に似たそれを見せられ、少年の顔から血の気が失せた。
「これはそれの更に改良型でね、効果はすさまじいよ……」
少年の腹部にナイフで小さな傷がつけられる。
「やっ……やだ、やめろやめろーっ!!」
少年は叫んで暴れたが、細いからだをしっかり拘束した綱はびくともしない。
虫はあっけなく少年の体内へ消えていった。
――もう、何もいらない。何も見ない、何も聞かない……
少年の苦しみは、いつ終わったのだったか。
全身を回る痛みに間断無く悲鳴が洩れる。なのに、同時に躰の芯を巡る快感のため、少年は勃起しては白濁を飛ばす反応を繰り返した。次第に白濁は透明に近くなり、射精する量も少なくなっていったが、快感は際限なく強くなっていくらしかった。
その合間に、少年は幾度となく吐血した。外から見て判るほど肌色が赤黒く変わり、腹部が波打つ。顔色は青冷めて、躰を壊されていく恐怖に痙攣していた。
いつしか反応が鈍くなり、やがてまったく動かなくなるまで、ティングは代わる代わる犯されながらそんな少年の姿を見続けさせられた。
『いつまでもこんなことしてられると思うなよ!』
今際の際に、弱々しく叫んだ少年の声が耳にこびりついていた。
少年が息をしていないのが確認されると、虫が取り除かれ、遺体は奴隷によって速やかに運び去られた。
「これを使ってみたかったのだが、お前はまだ殺したくはないし、適当な罪状を持つ者もみつからずに難儀していたところだったのだよ」
ザビオンは満足げな顔でティングを覗き込んだ。
「お前は本当に愉しませてくれるな」
その言葉に、ティングの心は弾けてしまった……。
急に反応が鈍くなったティングに、ザビオン他、男達は大いに不満を抱いた。少年の一件以来、感情が薄れ、本能的な痛みや快感にのみ弱々しい反応を示すだけのティングに、男達は飽き始めた。
衰弱も激しかった。ティングは物を食べられなくなっていた。スープのような飲み物だけを僅かに口にできるのみで、体力の回復もはかばかしくいかなくなる。
助けも何も求めず、無論人間らしい欲も夢も持たず――何の感情も持たない。それは死人に等しかった。
「外傷ならば私の力で治すことができますが、心の傷ばかりはそうもいきません。反応をお楽しみになりたいなら魔導の力で感情を持たせることもできますが……」
「あんな物、ただ笑うか泣くかで肝心のこともまるで人形だ。面白味の欠片もない」
「困りましたね。それではさすがの私も手の打ちようがありません」
「こいつは割と気に入ってたんだが、こうなるともう何の役にも立たんな」
そうしてティングの『破棄』が決定された。
ティングはまだ生きていたが、死体同様に奴隷達を葬る墓穴――ただ大きく穴を掘っただけで、いっぱいになったら埋められるもの――に放り込まれた。
久方ぶりに見る星空にも、何の感慨も浮かばなかった。意識はあっても、ティングにはもう何をする気力もまるで残っていなかった。
何を考えることもできない。脳裏には、今まで何度となく魘された、瓦礫の下敷きになる母や川に沈んでいく人々の姿が映っていた。
ティングの頬を一筋、ツゥッ…と涙が流れ落ちた。それだけが、ティングの心を表した総てだった。
冷たい骸が折り重なる上で、ティングはようやく訪れそうな優しい闇に身をゆだねた。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
グラシアスは愕然として自分の腕の中にいる少年を見下ろしていた。
「そりゃ……多少はそういうこともあるだろうとは思ってたが……」
思わず洩れた独白も、全ては言葉に出来ない。
――でも。
グラシアスは呟いた。
ここに来たこいつは、そんな感情のない人間なんかじゃなかった。……そう、きっと『ラムス』とかいう奴が絡んでいるはずだ。
それはグラシアスがティングを犯そうとした際、ティングが咄嗟に叫んだ名前だった。きっとその人物が、ティングのその後に関する大きな鍵を握っているはずだ。
――この術では対象の過去を探ると同時に過去を追体験させることになる。どっちみち、続けなければこいつの心はここに戻って来られないしな。
そう諦めつつも、グラシアスはティングを見下ろし、ふっと唇を歪めた。
――ま、俺の力をもってすれば、ある程度省略することは可能だけどな……
グラシアスは涙で汚れたティングの頬を指先でそっと拭ってやった。幼い頬がいたいけだった。
そうして気を入れ直すと、再び術の続きを始めた。
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