12.ショタ
「う‥、う‥、なっ、なっちゃん‥ヤダ」
「なに言ってる? お前が構って欲しいって言ったんだろう」
「だっ‥だけど、耳‥は、ヤって」

 近所のお兄ちゃんのなっちゃんは、俺が遊びに行くとニッコリと笑顔で迎えてくれる。俺にはお姉ちゃんがいるけど、3歳上で弟のことなんか気にせず遊びに行っちゃってるし、両親は共働きだから寂しくて毎日のように遊びにきてた。だけど、なっちゃんは俺が嫌がることが大好きだから困っちゃう。
 小学校で習わなかった? 自分が嫌なことは人にもやっちゃダメって。もちろん人が嫌がってることだってやっちゃダメなんだよ、なっちゃん。
 そうやって何度も言ってるのに、なっちゃんは聞いてくれない。あんまりしつこく言うと嫌われちゃったり、遊んでくれなくなるのが怖いから、一日に一回くらいだけれど。

 俺は中学1年生になったばかりで、なっちゃんは高校3年生。中学生から見た高校生はすっごく大人だ。でも小学校から知ってるなっちゃんは、ずっと子供で変わらない。
 子供って言うのは見た目とか、言ってることとかやってることじゃなくて、一部分だけが凄く我が儘で子供っぽいって感じ。
 それを言うとなっちゃんは大笑いして、俺の方が子供のくせに、って言うんだけど。そりゃ俺はなっちゃんより5つも年下だし、中学生になっても、未だに小学生にしか見られないくらい童顔で背も低いけどさ。性格もどっちかと言えば大人しい方だし、なっちゃんみたいに我が儘なタイプについて行っちゃう方の人間。
 でも人が嫌がることはしないよ。うん、してないと思いたい。だからなっちゃんよりもその部分だけは大人だと思うんだ。

 俺は友達がいないわけではないけど、でもなっちゃんと遊んでる方が楽しいんだからしょうがないよね。それを言うならなっちゃんの方が友達いないんじゃないかな。だっていっつも4時には家にいるんだもん。


 なんて思っていたらなっちゃんにも友達ができちゃったのか、遊べない日が続いてたんだ。俺、寂しくて寂しくて、ずっとなっちゃんの部屋に入り込んで待ってたの。でも7時には母さんが帰ってくるから、それまでにはうちに戻らないといけなくて。高校生のなっちゃんは7時なんて子供の時間には帰ってこなくて。
 なっちゃんのお母さんもちょっと心配してるみたい。ほんと今まではどっこも寄り道せずに帰ってきてたから。
 ゲームして遊んだり、勉強教えてもらったり、コンプリ目指してるカードの見せ合いっこしたり、漫画読んだり。ずっと楽しく過ごしていたのにどうして?

 高校生だから勉強もしなきゃ、って思うかもだけど、なっちゃんは頭がいいから、予備校も塾も行かなくて平気なんだよね。
 今の学校も有名な進学校だし、その中でも上位の成績とってるみたい。だからちょっとなんとかと紙一重って感じで子供っぽいとこがあるのかも。
 平日しか会えないのに、先週は一度も顔すら見れなくて、月曜日には祈るような気分で待ってたの。
 そしたらなっちゃん5時頃帰ってきてくれて。もうめちゃくちゃ嬉しくて、顔を見たら抱きついちゃった。なっちゃん、いつもみたいにヨシヨシってしてくれて、思わず涙ぐんじゃった。

「なっちゃん、俺とはもう遊んでくれないの?」
 また明日からおんなじ思いをするのが嫌で、つい聞いちゃった。そんなこと聞いて、遊ばないって言われたら泣いちゃうのに。
「お前は俺と遊びたいのか?」
 そんなの遊びたいに決まってるじゃん。泣きながらコクコクと頷くと、なっちゃんは俺の涙を舌で舐めた。
「なっ、なっちゃん?」
 一瞬、何をされたのか分からなくて、目がまん丸になっちゃった。

「あのな、俺はショタコンって言われるんだよ。知ってるかショタコン?」
「わっ、分かんない‥」
「お前連れて歩いてると弟にしか見えないんだよ。それももの凄く年の離れた弟。ま、それはそれでもいいんだけどさ、実の弟じゃないって言うと今度はショタコン扱いだ」
 え、で、ショタコンってなあに? 弟じゃいけないの?
 俺の疑問な顔になっちゃんは続けて説明してくれる。
「ショタってのは正太郎って子供の名前の略で小さい男の子、の意味。でもって俺は小さい男の子が好きな変態って言われてんの」
 ええーっ、変態って。下着泥棒したり、女の人のこと付け回したりする人のことじゃないの?

「ど、どして‥そんなことなっちゃんが言われちゃうの」
 なっちゃんは俺のその質問にはすぐに答えてくれず、ベッドに腰掛けて向かい合わせで抱っこしてくれてる腕を引いた。近くなった俺の顔をマジマジと眺めている。
「お前、俺のこと好きか?」
「うん、すっごく好き。なっちゃん、大好き」
 俺はなんにも考えず、素直になっちゃんが好きだと答えていた。
 なっちゃんはそこで小さくため息をついた。
「俺ね、この年で彼女いたことないんだよね。お前も知ってるだろうけど」

 はっ、そう言えばずっと俺と遊んでくれてる訳で、なっちゃんに彼女がいた記憶はない。そう言えばどうしてそんなこと気づかなかったんだろう。でも彼女がいたら俺なんて構ってくれなくなるんだよね‥。
「ああっ、もしかしたら彼女が出来たから先週はいなかったの?」
「お前って子供のくせに賢いよな、そういうとこ」
 そこでまた頭を撫でてくれる。でもいつもは嬉しいその行為がなんだか嬉しくない。子供なんだから子供扱いされて当然と思うんだけど、どうしてか今は子供扱いされたくなかった。
「俺ね、実はもてるんだよ」
 よく考えたらそうだよね。頭は破格にいいんだし、顔だっていいと思う。背も結構高い方だと思うし、女の子にもてる要素はいっぱい!
「今まであんまり興味なかったから、告られても断ってたんだけどさ。周りからショタコンだからだろって言われてムッとして、ついオッケーしちゃったんだよね」
 俺の頭はそこで何かに殴られたように痛んだ。彼女、彼女が出来ちゃったんだ。なっちゃん、これからずっと彼女と遊ぶんだ。俺より彼女の方がいいんだ。
 俺の頭はパニックになり、ボロボロと涙が零れ出る。

「ああ、だから。最後まで聞けよ」
 なっちゃんはまた俺の頬を舐めると、そのまま唇も触れてきた。頬に軽くキスされてそこが真っ赤に染まるのが分かる。泣きながら赤くなって、自分でもおかしいと思うんだけど、どっちも止められない。
「その女ってさ、隣の女子校の子なんだけど、一番美人って有名だったし、落とせない男はいないって豪語してるのでも有名でさ。まあ、途中で止めてもドロドロにはならない相手だったからね」
 そういうとこがなっちゃんの我が儘な所だと思うんだけど、ほんとはその女の人はなっちゃんのことが本気で好きだったのかもしれないのに。でも今回はなっちゃんのその性格に拍手したい気分。

「一週間でセックスまでしてきたんだけど、あんまノらなくて」
「セッ‥セックス?」
「そう、セックス。これは知ってるだろ、いくら言っても中学生だもんな。見た目は小学4年でも」
「よっ、4年は酷い! 5年には見られるもん」
 あんま変わらんぞ、となっちゃんは本当に可笑しそうに笑った。その顔を見たらまた涙が出てくる。今まで全部を独り占めしてたのに、これからは全部が彼女のものになっちゃうのだから。
「ま〜た泣く。最後まで聞けって言ってるだろ。ったく。だからな、ノらなかったから断ってきたの。今日。さっき」
「えっ、断ったの? じゃあまた俺と遊んでくれるの?」
 その時は嬉しくて自分のことだけしか頭になかった。

「ああ、と言いたいところだが、俺はショタコンではない。お前が少しでも大人にならないと一緒には居れない」
「そんな‥。今すぐなんて背は伸びないし、顔だって大人にはならないもん。どうすればいいの」
「お前は俺のことなんだと思ってるんだ? 友達? 兄貴?」
 なっちゃんは自分のペースでしかことを運ばない。質問が出た時点で一つずつ答えてくれれば分かりやすいのに。俺の聞いたことはほったらかしで、自分の知りたいことが先にくるんだから。
「お兄ちゃん」
 そう答えたすぐになっちゃんは両手で俺のこめかみをグリグリした。

「いっ痛い‥、なっちゃん痛いって」
「お前がそんなこと言うから、俺がショタコンって言われるんだろうが。いいか、俺はもうすぐ18歳だ。知ってるだろうが誕生日は来月だ。来週から自動車学校へも行く」
「免許‥? 自動車の?」
「そう、免許取ったらもう大人。パチンコだって行けるし、18禁もオッケー」
 えーと、だからどうだって言うんだろう。

「空いてる時間は大人の時間としたいわけだ。分かるか?」
「分かんない」
「だからな、お前が大人の時間に付き合うなら、今までの時間もあっていい。だが、付き合えないなら残念だが俺は女を作る」
 最後はいかにも残念そうな表情を作っていたけど、俺と視線が合うと自信たっぷりにニヤリとした。
 うん、よく分かってる。なっちゃんがこういう顔をしたら注意報、ううん、警報を発令してもいいってことを。まさかこの表情のターゲットが俺になるなんて夢にも思ったことはなかったけど。
 すっごく怖かったけど、なっちゃんがいなくなっちゃう方が嫌だった。

「大人の時間‥ってなんに付き合う‥の?」
「んん? 付き合う気があるって取っていいか?」
 それが相当に酷いことでも断らないって分かってるはずのなっちゃんは、意地悪なのか確認する。それでやっぱりすぐには質問に答えてくれないのだ。そう言うことってきちんと説明してから答えを求めるものじゃないの? もう。
「ど、どういうことか説明してくれなきゃ答えられない」
 それでも言うべきことは言っておかないと、今までのターゲットの無惨な末路を見ているだけにとっても怖い。

 なっちゃんは「それなら実践してやる」と言っていきなり俺の耳を摘んだ。
 何をされるのかと身構えていただけに、気が抜ける。でも‥なっちゃんの指は強く掴むのではなく、弱く、柔らかく耳をこすってくる。
 なっなに? どうして。耳ってこんなにくすぐったいものなの?
 一度くすぐったいと思っちゃうと、それがどんどん大きくなってくる。そーっと撫でられるたびに逃げ出したくなっちゃう。
「なっ、なっちゃ‥ん。くすぐったくて変になる」
 特に耳の裏側がくすぐったい。何度も往復されて降参したくなる。

「やっ‥、こっ降参。もう‥我慢出来ない」
 逃げ出したら大人の時間を付き合うことにはならないと思ってすっごい我慢したけど、身体が言うことを聞いてくれない。これ以上はなっちゃんを蹴っ飛ばしてでも逃げてしまいそうだった。
 それなのに!
 なっちゃんは降参してる俺の頭を引き寄せると、耳を舐めた!
 もう、指で触られるより何倍も攻撃力が強くて、降参どころか、ひれ伏して謝りたい気分。おまけにそのまましゃべっちゃうんだから。

「大人の時間に付き合わないと俺と遊べなくなるんだぞ、いいのか?」
 なっちゃんの声はちゃんと大人の声で、少し低め。それは耳の中も外も直接振動して、舌のくすぐったさがグレードアップする。攻撃力アップなんて違反だって。
「やっやーっ、止めてっ」
 とうとう耐え切れず、なっちゃんを腕で押して頭を遠ざけてしまった。
 身体中が震えてる気がする。
 ぜいぜいと肩で息をする俺になっちゃんは何の気遣いもせず、次の攻撃に出た。

「耳は弱い‥と。次はどうかな」
 至近距離で話していたなっちゃんは、その間隔を広げるどころか、縮めてきた。そして俺の唇になっちゃんの唇が重なった‥。
 えっ、俺‥女の子じゃないのに。男同士でキスって。なんて言うか驚きすぎて、さっきほっぺにちゅうされた時より焦りは来ない。

「お前、口閉じてるなよ。ほら、あーん」
 なっちゃんはすぐに離れるとそんな関係なさそうなことを言う。俺は頭が真っ白になっていたので、素直にあーんと口を開けた。
「そこまで大きくなくていいけどな」
 なっちゃんは笑いながら、また俺の口に口を重ねる。でも今度は口の中まで一緒になっちゃってる。

 頭の後ろを手で押され、顎を掴まれ上を向かされるとよりいっそう深く重なった気がする。そこへなっちゃんの舌が入り込んで、俺の舌に絡まってきた。
 キスするところくらいは想像したこともあるけれど、好きな女の子もいなかったし、そんなにリアルには考えたことなくて。しかもまさか舌までなんて。唇がくっつくだけでどんな気分かと思っていたのに。こんなに激しく絡み合うなんて想像が出来るわけがない。
 それになんなの。この変な感じは。さっき耳を触られたり舐められたりしたときに感じた『くすぐったい』は、舌が絡まってるときにも感じるものなの?

 くちゅくちゅと吸われたり絡まれたりしてる音が熱くなった耳にも響いてくる。やだ、なんか身体も熱くなってるみたい。凄く変な気分。
 なっちゃんの舌はざらざらしているはずなのに、もの凄くぬるぬるしていて柔らかい。そのざらざらとぬるぬるが俺の舌を撫でてくる。背筋がピンとなって頭の中がくらくらする。なっちゃんは舌だけじゃなく、上あごも歯ぐきも全部を舐めてきた。なっちゃんの舌がうねうねと口の中を動き回ると俺の頭も変になる。
 おまけに時々、ズキン‥とか、ビクン‥とか頭に何かが走ってその度に身体が震え、声が出そうになるのはどうしてだろう。走った何かを声に乗せて追い出したい感じ。

 しばらくその何かと戦っていたけれど、なっちゃんの口は俺の口をぴっちり塞いでいるので苦しくなってきた。
 一生懸命声を出して訴える。それはお互いの口中でくぐもって、うー、としか聞こえない。この苦しさはなっちゃんには伝わらないみたい。
 そう思ったらほんの少しだけなっちゃんは口をずらしてくれた。少しの隙間から必死になって空気を吸う。その間に顎にあった手が移動していた。

 その手は腰に回り、いきなりと思えるくらい急激に引き付けられた。グッと力を入れて抱き締められると、お尻を残してお腹が突き出たような形。腰を前に倒してるって言えばいいのか。
 するとなっちゃんの股間に硬くなってるものがあった。それは俺の股間に擦り付けられて、同じものが自分にもあると気付かされる。
 えっ、どして。なんで。
 男同士という思いが、エッチなことをしている、ということに中々考えが追いつかない。
 とにかく凄く変な気分になって、擦り付けられる硬い部分が最高に熱くなっていた。

 それなのに、そこでなっちゃんはキスを止め、俺を抱き締めたままで顔を離した。
「分かった? これが大人の時間。男同士でも大人の時間。付き合える?」
 フルマラソンでも走った後みたいに息を切らした俺に、なっちゃんは涼しい顔でニッコリとした。
 ここまでしといて今更付き合えない、なんて言えるわけないじゃん。俺は勢いに流されて頷いちゃった。
 ででも、これが後悔先に立たずだと思っても遅かったみたい。

 遊ぶよりも何するよりも、なっちゃんはまずは俺の耳を舐めたり、キスしたりする。
 耳を舐められるのは嫌だって言ってるのに!
 なっちゃんは全然聞いてくれない。

 でも‥‥、キスは嫌じゃない‥かも。
10/03/29

百題に戻る ・分校目次 ・妄想部室

 ショタと聞いてかなりに幼い男の子を想像していた方はすいません‥。(^^;;;
 これでも最初はお題の通り、と思って小学生を考えておりました。でもどうしても小学生では萌えない‥。萌えないと言うことはどんなにしても話しを書けず、仕方なく年齢をアップ。6年生ならなんとかなるかと思ったんですが、やっぱりダメ。
 それで今度はいっそもっと上げちゃえ、と思い中学2年生にしてみましたが、2年生で幼い可愛らしいのは逆にまた想像できず。息子がいるので頭の中から現実が抜けず。150センチ切るのはどうやっても中1まで。中学あがった最初ならこれくらいの身長の男の子もいたかな、となんとかセーフな所で折り合いをつけたのでした。
 本来このショタってのはきっとイラストや漫画でビジュアルを楽しむものだと思います。だってそれなら中1設定でも小学生くらいに見える絵があって、その絵の子がメッチャ可愛ければなんの問題も無いわけで。(そう言うのが規制されちゃうのかな?)

 でも私にしてみればかなり頑張って幼く可愛く書きました! のでこれで許して下さいませ。(^^;;;
 ええ、どうか可愛らしい男の子を描いてやって下さい。超、楽しみにしてます。(^^)