都築家の母より

 うちの息子たちの話しって言ってもねぇ。本当に私が生んだのかしら、って言うくらいに二人とも出来が良くって。何も心配することがないって言うのもちょっと寂しいくらいよ。
 あっ、でもお父さんにはよく似てるかしら。あの人も頭が良くってね、学生の頃から憧れてたのよ。そしたら向こうから声を掛けてくれて。どんなに嬉しかったか。
 えっ、私の話しはいいの? あら、残念ねぇ。そう、息子たちの話しね、分かったわ。

 とにかくお兄ちゃんのことで頭を悩ませたことは一度もないわね。これはほんとにハッキリ言わせて貰うわ。赤ちゃんの時からどこの王子様かしらってくらいに可愛くて。こんなに可愛い子ならもう1人欲しいって思ってすぐに頑張ったのよ。でもちょっと間があいてしまったけれど。そしたらまたまたとっても可愛い子が出来て。お父さんと二人で凄く可愛がったのよ。ただお父さんは社長って立場もあって余り家にはいなかったけれど。彼は25歳で跡を継いだから、可哀想なくらいに忙しかったのよね。それでも今では先代の時よりも会社は大きくなって。
 でもお兄ちゃんがむずがったり、駄々捏ねたりって一切しなかったから子育ては凄く楽だったわ。狼ちゃんの面倒もそりゃよく見てくれて。一回言ったことは二度と言う必要がなかったから。あのときは子供って素直だからそういうものだと思っていたんだけど、今考えると幼児の頃から違っていたのね。
 狼ちゃんだっていい子だったんだけど、彼にはちょっとだけ困ったかしら‥。だってね、何でもお兄ちゃんの真似したがって、お兄ちゃんのものが良くって、自分はお兄ちゃんみたいになるんだって、無理なことまで頑張ってたから。

 そうね、お兄ちゃんが幼稚園へ行ったときはそりゃもう泣いて泣いて。自分も幼稚園へ行くんだって言って。だから一緒に幼稚園へ行けるようになったときは大喜びで。
 えっ、パンツの話し? 幼稚園の頃はね、キャラクターのパンツが喜ぶとばかり思ってたから二人とも同じのを買ってたのよ。狼ちゃんはお兄ちゃんと一緒なら何でも喜んでたんだけどね。お兄ちゃんだってみんなと一緒で嬉しいとばっかり思いこんでたわ。そしたらお風呂上がりにパンツを見つめて一言。「ダサい」って言ってるのが聞こえてしまって。もう大人なのね、ってショックだったわよ〜。
 次の日に慌てて真っ白なパンツを買ってきたのよ。勿論お兄ちゃんのだけね。だって、狼ちゃんはまだ大好きなキャラクターが付いてるのでいいと思ったんですもの。そうしたら絶対に自分も白くなきゃ嫌だって、パンツもはかずに泣くから、また次の日に買い物に走ったわよ。その日、狼ちゃんはお兄ちゃんのぶかぶかのパンツ履いてはしゃいでたけれど。

 とにかく狼ちゃんはお兄ちゃんっ子でね。一番記憶に残ってるのはおやつよね。今でも時々その話しをするんだけど、そしたら怖いくらい睨まれちゃって。でもあれは照れてるのよね。小さいときのことって恥ずかしいらしいから。
 私は長いことおやつの時間が怖かったわ〜。例えばケーキを切って出すでしょう? 普通の兄弟ならどっちが大きいってケンカするじゃない。それがお兄ちゃんは一切拘らないから、狼ちゃんに好きな方を選ばせる訳よ。ところが狼ちゃんはお兄ちゃんが選んだ方が欲しいわけ。だからしばらく睨んで、それからお兄ちゃんが先って言うのよ。お兄ちゃんはあっさりとしてるから近くに置いてある方を取るでしょ。そしたら狼ちゃんはそれが欲しいのよ。大好きなお兄ちゃんが選んだ方だから。
 お兄ちゃんはまたそれを渡すでしょ。そして違う方を取る。すると狼ちゃんはそっちが良くなる。ケンカはしないんだけど、取り合いって言うか延々と交換してるの。そのうち狼ちゃんはどっちも自分が食べるって言い出して。お兄ちゃんもお腹は減ってるから「なら違う物でいい」って言い出して。そしたらそれも自分が欲しいって‥。どれだけ続くか分からないくらいに繰り返したわ〜。お兄ちゃんも怒ったりしたら良かったのに、いつも仕方ないなって感じで。
 でも困ったのはそう言うことだけで仲が良かったわよ。二人とも。

 お父さんの方針で男らしい子に育って欲しかったから、小さいときから空手や水泳なんかを習わせてたんだけど、お兄ちゃんが小学校に上がってからはついて行かなくなったわ。だって自分たちで行けるからって言われたんですもの。でもでも何をさせても誰よりも上手だったから、後からこっそり行って覗いてたんだけどね。きゃ〜、うちの息子たちってなんて格好いいんでしょう、なんて思って。
 それから親のひいき目じゃなくてもため息が出るくらいにいい男に育ってくれて。ああ、ほんと、こんなに幸せな母親はいないかもしれないわね。

 だからね、着るものなんかは彼らに似合うものをって思うとついついブランドモノに手が出ちゃうのよね。モデルが着てるよりうちの子が着た方が格好いいわ、とか思っちゃうのよ。それに最近じゃ、背が高くって日本のものだとサイズが合わないって言うのもあるかしら。何を着せても二人ともよく似合うから、かなり買い物してる量は多いと思うわ。いらないって言われてるんだけど。そんなの寂しいじゃない? ねぇ。
 だから下着もブランドモノばかりよ。ただお兄ちゃんは高校の頃からプレゼントが多くって。えっ、こんなの履いてていいの? って洗濯するときにびっくりしたんだけど、ビキニなのよねぇ。しかも黒よ、黒。ちょっとだけ心配しちゃったけれど、うちは15過ぎたら一人前の男ってことになってるから何も言わないけれどね。
 狼ちゃんは私が買ってきた暗い色合いの無地に近いようなトランクス履いてるわ。楽でいいんですって。トランクス。でも最近よく出てるボクサータイプも買っておいたら履いてるみたいよ。結局彼もあんまり拘ってないのよね。そう言うところまでお兄ちゃんにそっくりになってしまって。

 そうね、少し言わせてもらうなら二人とももう少し欲とかあると子供らしいのになぁって。だって一度でいいからあれがしたい、とかあれが欲しい、とか、駄々捏ねたりするのを、お手伝いこれだけしたらね、とか言いたかったのに。特にお兄ちゃんには欲しいものが無くって。クリスマスとか、誕生日とか困ったわねぇ。だから毎年バレーの体育館用の靴をあげてたから、ちょっと寂しかったわね。
 狼ちゃんはお友達と遊ぶのにそれなりのものは欲しいって言ってくれたから良かったけれど。でももう二人とも15歳を超えてしまったからそう言うこともなくなって。着るものだけなのよ。私が出来ることは。だからちょっとくらい沢山買ってもいいでしょう?

 えっと息子自慢しかしなかったけれど良かったのかしら。えっ、冬哉くん? 彼も小さい頃から可愛かったわよ。お母様も可愛らしい方でね。よく似てるのよね。でも狼ちゃんとはあんまり仲良くなかったのよ。二人で並んでると女の子だって霞んじゃうくらいに可愛かったのに。あっ、だけど間違わないでね。可愛いって言っても凛々しい可愛らしさだから。女の子とは違ってるのよね。
 5年生になって同じクラスになると冬哉くんの方から遊びに来てくれてね。狼ちゃんは人見知りが激しい割にはきついこと言っちゃう子だったから、お友達とも少し距離を置いた感じだったんだけどね。冬哉くんって凄く素直ないい子でね。狼ちゃんの言うことなんでもうんうん、って聞いてくれて。初めて自分の言うきついことにも逃げずに真剣に耳を傾けてくれたって、ほんとに嬉しそうだったわ。それからはずっと冬哉くんとは仲良しかしら。一度もケンカしたって聞かないわね。男の子同士でそう言うのも珍しいかしら。
 でもおかげでやっとお兄ちゃんは狼ちゃんから離れられたかな。う〜ん、それともちょっと寂しかったかもしれないわね。弟をとられちゃったって。そんな態度は少しも出ない子だけど。

 えっと、親のひいき目抜いてもうちの息子たちはお奨め出来ます。彼女って一度だって連れてきてくれないんだけど、どんな可愛い子が来てくれるかって楽しみにしてます。だからどんどん立候補して下さいね。

 こんな感じで良かったかしら。でもこれで終わりにするわ。それでは長らく語ってしまいましたけど、これで失礼します。

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