先へ飛びたい方用  4話7話10話13話16話



参戦1

「お、冬哉先輩いらないんだ。も〜らいっ‥と」
 学食でのこと。目の前に座っていた鷹神は、俺のラーメンから大事なチャーシューをかっさらっていった。そして何の躊躇もなくそれを口の中に放り込む。
「ちょっと鷹神! 俺のチャーシュー返してよ!」
「え〜っ、だって冬哉先輩、残してたじゃない。いらないのかと思って食べてあげたのに。ああ、旨かった」
「ひっどー、楽しみにしてたのに」
 大事なチャーシューがなくなって泣きたくなっていた俺に天からの助けが‥。
「ほら、そんな肉の切れ端1つで騒ぐな。それから鷹神。食い物の恨みは大きいんだからな。特に冬哉は美味い物は後に取っておくタイプだ。人の楽しみを奪うようなことはするな」
 俺の隣にいた狼帝が自分のチャーシューとメンマもプラスして丼に入れてくれた。箸で移動させつつ、鷹神にも注意する。
「わ〜い、狼帝ありがとう。狼帝はいっつも優しいなぁ」
「何だよー、俺だっていっつも冬哉先輩には優しいでしょう。すっごく気持ちよくなるように、優しく優しく、摘んであげたり、揉んであげたり、捻ってあげたり」
 飲んでいたラーメンの汁を吐き出しかける。‥‥分かった気はしたけど、一応やっぱり聞いてみる。
「なっ、‥何を?」
「あれ、ハッキリ言って欲しいんだ。てっきり分かってるとばかり思ってたけど」
 鷹神はニヤリとすると俺の至近距離に迫り、思い切り低音でゆっくりハッキリ一音ずつ発声した。
「チ・ク・ビ」
「たっ、鷹神!」
「ねっ、いっつも取扱には細心の注意を払って優しくしてるでしょう? 違う? 一度でも痛いコトされたことある?」
 ほらほらと回答を迫られて返事に詰まる。
「いっ、痛い‥思いは‥してない‥けど」
「ほ〜ら、俺っていっつも優しいじゃん」
「痛くないと優しいは一緒じゃないよ」
「そりゃ痛くないと優しいは一緒じゃないけど、優しいは痛くないにしか含まれてないから、痛くなかったら優しいの可能性はある訳でしょう? それどころか確率的にはかなり高い訳だから、痛くなかったのなら概ね優しかったと思っても間違いないんじゃないの?」
「えっ‥えっとお‥。痛くなかったから優しかったってこと?」
「そうそう」
「こら、鷹神。理尽くで冬哉を追い詰めるな。冬哉もちょっとは考えろ。痛くなかったけどイヤだった、痛くはなかったけどキツかった、とか色々あるだろうが」
「そっ、そうだよ! そう。鷹神は嫌って泣くたくなるくらいにしつこいもん。優しいとはちょっと違う」
「もう、狼ちゃんってば邪魔しないでよ。もう少しでいつも俺のしてることは優しくてイイって言わせれたのに」
「まったくお前は口達者だな」
「まったく‥。狼ちゃんは自分も美味しい物は後から食べるタイプだからって冬哉先輩の肩ばかり持って。大体冬哉先輩だって分かってるの? 狼ちゃんの美味しい物って冬哉先輩のことだから、こうやって美味しくご飯を頂いた後、一番美味しい冬哉先輩を頂きたいって思ってるんだよ?」
「なっ何それ」
「いい加減黙れ」
 俺と狼帝がそう言ったのと、狼帝のゲンコツが鷹神の頭に落ちたのとは同時だった。

 まったくもう‥、鷹神ったら。こんな食堂の真ん中で、大きな声で、ちっちっ‥乳首摘むとか、俺を食べたいとか、みんなに聞こえるじゃんか。そっそりゃ胸も触られたら感じちゃうけど、感じすぎて気持ちいいばかりじゃないし、止めてと言っても止めてくれないし、絶対優しいとは違うよ。
 もう、そんな話しをされたら、両方の乳首がズキンズキンと疼いてきちゃった。

 今日だって電車の中で散々触られてきたのに。ほんとに最近は触られすぎて、ムチャクチャ感度が良くなった気がする。これって自分でいつも触られることを意識してるからだろうか。

 鷹神の指が先端の感じる部分を挟むと、キュッと力を入れて中の神経だけを磨り潰す。そのビリリとした感触が脳天から股間まで走り回って身体が震えた。
 やっ、やだ‥。想像しただけで凄い感触‥。見つめていた汁だけになったラーメンの丼を箸で掻き回す。でっでも、この刺激、堪らない。
「ほら、優しいでしょう」
「ひっ」
 耳のそばで尾てい骨直下のバリトンを聞かされて、必死で勃ち上がるまいと頑張っていた息子があっさりと勃ってしまった。
 真剣にエッチなことばっかり考えていたので全然気付かなかったけど、いつの間にか隣りに来ていた鷹神が、横から手を伸ばし、シャツのボタンを神業のような早さで1つ外し、直に乳首を摘んでいたのだ。鷹神は驚いて口も聞けないでいる俺に、ニッコリと笑いかけると触っていることを分からせるためにもう一度磨り潰した。
「っっ‥あぁ」
 刺激が強すぎてとうとう声にして漏らしてしまった。
「鷹神、お前ホントにいい加減にしろよ」
 肩を組むような形になって片手を伸ばしてきていたのだけど、反対側にいた狼帝に肩の手を外される。俺に凭れていた分のバランスが崩れて鷹神は手を抜いて立ち上がった。えっ、やっ止めちゃう‥の? ちょっちょっと‥困る‥かも。
 それから俺にだけ聞こえるようこっそり耳に囁いていった。
「冬哉先輩だけで、今から5分後に生徒会室の前に来てね。耐えられないでしょ?」
 パチリとしたウィンクに、その視線上にいた女の子たちから悲鳴が上がった。
 ダッダメだって、そんな‥耳のそばで話したりしたら。鷹神の声を至近距離で食らって無事ではいられない。男だってきっと一緒だと思う。食らった後は耳たぶや耳の中が、こそぐったいような痒いようなムズムズとした感触が長らく残ってる。もちろん響いてる時が一番ゾクゾクしてるんだけど、その後が忘れられないのだ。

 生徒会室‥。何の用事があるのだろう。会長だった狼帝を待ってる時には何回か入ったけど、鷹神が会長になって狼帝が引退した後は一度も入ってないなぁ。
 そう言えば資料室でセックスやりたい放題、とか言ってたっけ。もっ、もしかしたらそう言うこと? 俺がこの状態って分かってるの?
 やっやだ。学校でなんて。でも‥、今のこの状態をなんとかしてくれるなら‥。
「冬哉、そろそろ俺たちも教室へ戻ろう」
「う、うん」
 だっだめだ。石頭で真面目な狼帝にばれたら授業をサボって何してる、って怒られちゃう。さすが鷹神、内緒なんてよく分かってるなぁ。
 俺はとにかくいったん教室へ戻ると、トイレに行って来ると言って、1人で生徒会室の前まで来た。

 ちょっと前までは文化祭で忙しかったから生徒会室も賑やかだったけど、今は人気(ひとけ)がないなぁ、と思ったらすぐに女の子たちが集団で騒いでる声が聞こえてきた。鷹神だ。
 生徒会長の鷹神は女の子たちから絶大な人気があった。虎王先輩もそりゃ人気は高かったけど、でも先輩の場合はそばでじゃれるようにして騒ぐなんて畏れ多くて有り得なかった。狼帝も人気はあったけど、表だって行動する子ではなく、内に秘めてる子が多かった。

 その点鷹神は親しみやすい。気軽に声がかけられ、気楽に遊べる。ミーハーな子ばかりと思われがちだけど、ほんとは違う。
 鷹神は優男に見えて実はケンカが強いらしい。俺は見たことがないから強いって断言は出来ないけど。龍将には負けるみたいだけど、でもその辺で絡まれてる女の子を助けてあげられるほどには強いんだって。
 昔はうちの学校と言えばいいカモだったみたいだけど、虎王先輩が会計に就任してからは変わったみたい。先輩がいなくなっても鷹神の名前を出せばこの界隈の不良はみんな引くんだって、凄いよね。

 女の子はやっぱ強い男には憧れるみたいだから、多少素行が悪くても、そこが逆に魅力になって本当に人気が高かったのだ。
 先輩や狼帝は見てる分には格好いいし、目の保養だけど、マジで付き合うとなれば鷹神が一番だった。確かにね、俺もこの年数がなければ狼帝とは沈黙が耐えられなかったかもしれないし、先輩は怖かったと思うから。女の子の気持ちは良く分かるよ。
 鷹神は俺を見つけるとひらひらと手を振った。すると回りにいた女の子は一斉に鷹神の後ろへ隠れるようにして下がった。
「ねぇねぇ、冬哉先輩。今ね、年下攻めが流行ってるんだって。俺たちって流行の最先端だね。おまけにブレザーって人気アイテムらしいよ」
 なっなに? 年下攻めってなんのこと。俺の表情だけで理解したのか勝手に説明してくれる。
「あのね、攻めってのは簡単に言うと突っ込む方でね、受けってのは突っ込まれる方のこと。ほら、男女間でも普通は彼氏が年上のイメージでしょ? 彼氏が年下だとわざわざ年下の彼、なんて言うくらい。要は突っ込む方が年が下だとちょっとめずらしい訳よ。そんでもって年が下の男にアンアン言わされてる年上の人ってのがいいんだってさ」

 あっ、あんあん‥って。そっそりゃ確かに鷹神の方が年下だけど、でもこういう関係に年齢は関係ないじゃん。どっちが好きか、ってことだけで。おっ俺はどっちって選ばせてはもらえなかったけど、男に自分のものを突き立ててる姿は想像できないし。
 ちょっと考えてる間に鷹神は俺のそばに来て、何故か後ろに回ると、背中から抱き締めてきた。
「たっ鷹神‥なに?」
 両手はブレザーの中へ突っ込んで、顔は俺の顔のすぐ隣へ持ってくる。
 そして俺の頬にキスをして、俺の名前を呼んだ。
「冬哉先輩」

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