好きでもないのに 1

 とにかく腹が減って目が覚めた。克海(かつみ)は慌てて顔を洗って制服に着替えた。
 どこも朝は忙しいだろうに将人(まさと)は悠然と飯を食っている。
「あーっ、それ最後」
 将人は銀縁メガネを光らせ鼻先だけで笑った。
「お兄さまって呼んだら食わしてやるよ」
 トマトの刺さったフォークを克海の目の前にちらつかせる。
「何でお前を兄さんなんて呼ばなきゃならないんだ。同じ学年だぞ」
「何を言ってるんだ。まるまる一年違うじゃないか。まっ、そういう態度ならいい」
 将人は何の躊躇もなくそのトマトを口に入れる。そして出ていく。
「行って来ます。俺の学校は近くないんでね。それからその作業服も一生着ることはないだろうな」
 カバンと一緒においてある作業服を指さし、分かり切ってることをわざわざ聞かせる。
「義母さん。何であんなに性格悪いの?」
「ご免なさいね。小さいときからちょっと冷めた子だったわ」
「くっそー」
 残された葉っぱばかりのサラダとトーストを食べ、克海も学校へ向かった。

 そう、克海の学校は大変に近かった。ランクが高いとは決して言い難い工業高校だ。そして将人が通っているのは県下で一番の進学校だ。
「何がお兄さまだ」
 腹が立って言葉にしてしまう。克海と将人は同じ学年なのだ。ただ誕生日が将人は4月で克海は3月だ。だから学年が同じでもとしは一年違う。
 なぜかと言えば親が再婚したからである。小学6年のことだ。新しく母親になる人にも子供がいた。それが将人だったのだ。法的には自分が弟になるだろう。だが同じクラスで勉強していたのに兄も何もないだろう。
 なのに将人は兄であることを強調する。克海にも強要する。克海は、あまりに出来がいい将人のすかした顔を何とか困らせてやりたいと思っていた。

 渋い顔をしていたのだろう。学校へ近付くとクラスメイトが話しかけてきた。
「何だよ。また兄貴に馬鹿にされたのか?」
「だから、誰が兄貴だって」
 この不機嫌さがまさしくそうであったことを答えている。
「しょうがないじゃん。敵は天下のT高だぜ。俺たちがどんなに逆立ちしたってかないっこないさ」
「わあってるよ。けどぜってー弱みを掴んでやる」
 何度言ったか解らないことをまた誓う。
「まっ、頑張ってくれ」

 呆れられてしまったが、6年のときからずっと思ってることだった。そして将人に非は見つからなかった。それが余計に腹立たしい。勝ってることと言えば背が少し高いくらいだったが、将人も178ある。だからそれを言うとウドの大木と言われるので勝った気分にならないのだ。

 母親とは割りに上手くやっていた。将人とだって憎らしいと思う気持ちはあれど、兄弟らしく仲がいいときもある。高2になった今では少なくなったが、中学の頃はよくゲームをして遊んだ。
 シューティングや格闘ゲーなら克海の方が断然上手い。パズルゲーやロールプレイングは将人の独壇場だ。だからゲームでは対等でいられたのだ。結構楽しかったことも思い出す。思い出すが、やっぱり憎たらしいのだ。


 ある夜、克海はなぜか目が覚めた。トイレかと思い部屋から出た。隣の将人はまだ起きている。いつも遅くまで勉強してるのだ。そしてふとドアを開けた。
「何だよ。ノックするぐらいの常識ってもんを持ってないのか」
 克海が見ると将人は手を止める。
「もう少しだったのに‥、お前責任取れよ」
「何だよ。いいズリネタがあるんか?」
 それなら貸してもらおうと覗き込んだら目に入ったのはどっから見ても男の写真だった。
「将人‥これ」
 仕方なさそうに自分のモノを仕舞っていた将人が手を伸ばすより早く克海はその写真を取った。
「誰?、これ」
「べっ別にいいだろう。返せよ」
「お前、男が好きなのか?」
 そう思ったら途端に克海の頭はスパークした。

「もう少しだったんだろう。責任取ってやるよ」

 近寄ると写真は取り替えされたが頭にばっちり残っている。男にしてはかなり綺麗な部類だった。そして将人の股間に手を伸ばす。
「なっ何するんだよ」
「だから責任取ってやるよ。動くなよ。もうその写真の奴の顔は覚えたからな」
 いつものすました顔が少し引きつる。まだ硬さが残ってる将人のモノを手にした。そして扱く。
「止めろって」
「ふーん、命令できる立場だと思ってるわけ?」
 そう言うと不利な立場を理解したのか将人は大人しくなった。
 構造は自分と同じだ。どうすれば気持ちいいかはよく分かっている。もうすぐだったと言うだけあって数回も扱いたら先端から雫が垂れる。
「ほら、この人にしてもらってると思えよ。気持ちいいだろ」
「なっ‥何を‥」
「なんて名前?」
「言‥うか」
 話しながらも手は休めない。クッと腰が揺れてきた。
「これから俺がイかしてやるよ。この人の代わりに。だから自分で勝手にするなよ」
 上り詰めるのを堪えているのか片目だけで睨んでくる。

 しばらくすると将人はティッシュを掴んで先端に当てた。何度か痙攣する。
「何で‥こんなことを」
「俺はお前が困ったところが見たいんだ。言うこと聞けよ」
「誰が」
 将人はぷいっとそっぽを向いた。克海はその場はそれで引いたが、頭の中はすでにやることが決まっていた。


「ほら、足開けよ」
「脅すんならこんな変なことしなくても他にあるだろう」
「啓先輩」
 その名前を言うと諦めて将人は足を開く。すでに下着の下ろされた股間はすべてをさらけだす。また将人の分身を掴んで扱いてやる。しかし脅されていると言うことがひっかかっているのか中々勃ち上がってこない。
 克海は人差し指を舐めると将人の後孔に忍ばせた。
「なっ何するんだ」
「お前知らないだろ。チョー気持ちいいんだぜ」
 指を第二関節ぐらいまで入れるとクイッと曲げた。
「あっ‥」
 将人の腰が引けた。2〜3度動かしてやると見事に勃ち上がった。
「いいだろう?」
 克海はそう言って将人の中を刺激する。将人は腰を少しずつずらしながらも先走りを散らす。メガネの下で眉が切なげに寄る。克海はひどく満足だった。

 今日、将人の高校まで行ってきたのだ。そして校門で待っていたら写真の男が出てきた。すかさず話しかけた。将人の弟だと名乗ると相手は安心したのか名前まで教えてくれた。同じクラブの先輩だった。
 将人の中学時代の話をすると楽しそうに聞いていた。そうやって捕まえていると、将人が出てきた。啓先輩と一緒にいる克海を見つけたときの将人の顔。初めて優越感に浸った。
 そしてイかしてやるとの申し出を断れないようにしたのだった。

 中の将人のいいところを指で擦りながら、分身も扱いてやる。すかした顔はひどく悔しそうになり、それを乗り越えると今度は克海が堪らなくなるほど扇情的になった。自分の感情よりも快感の方が勝ったのだろう。
「ぁ‥でっ出る‥」
 手がティッシュを捜して伸びる。そんな動きですら色っぽい。克海が絶えることなく刺激を送り続けると将人は達した。
「なぁ、すんげぇ気持ちいいだろう?」
 まだヒクついてる将人に訊く。
「じっ‥自分でやっ‥ても‥同じだ」
 すべてを出し切ると将人の顔は元に戻る。克海はもう一度さっきの顔が見たくてまた将人の分身を扱きだした。抜いてない指はずっと動いてる。
「なっ、もう‥やめっ‥」
 両方の快感を追うことを覚えてしまった身体は反応が早い。腰の動きが、零れる雫が、将人が気持ちのいいことを教えてくれる。

 またいい顔になった。

 克海は将人から手を離すと自分の勃ち上がり掛けたモノを取りだし、擦る。
 指の動きと腰の動きが合う。くっくっと圧を掛けると吐息が漏れる。その姿を見てると、自分がそうさせてるのだと思うと克海も高まる。そして克海も溜まったモノを吐き出した。
 今までにない充足感があった。
「もっかいイかせてやるからな。喜べよ」
 屈辱で歪んだ顔はすぐに快楽に負ける。

 将人は2回目も達すると荒い息をつく。
「‥気‥が済ん‥だか?」
「済むわけないだろう。これからは俺の許可なく抜くなよ。抜きたくなったら俺に頼むこと。頭を下げてな。分かったか?」
 将人には克海が何をしたいのか、目的が分からない。狐につままれたような表情がこれまた克海を満足さす。
「俺が一番気持ちいい方法でイかしてやるからな。期待してろよ」
 克海はそう言うと自分の部屋に戻った。
 そして呟いた。
「こんな面白いことができるなんて」


「なんだよ、お前どういうつもりだ」
「どういうって、こういうつもりだ。勝手にやれないよう、見張ってるだけだ。気にするな」
 次の日の晩。克海は布団持参で将人の部屋に来た。ベッドの横に布団を敷く。将人はくるりと後ろを向いてしまった。まだ勉強するつもりらしい。

 それから3日後。
 浅い眠りの克海はごそごそする気配にすぐ気がついた。学校から帰るとしっかり昼寝をして、熟睡しないようにしてる。そろそろ溜まってくる頃だった。自分だって抜かずにいられない。
 でも絶対に将人から言わしたかったのだ。屈辱に震えながら自分にお願いする姿を想像しただけで心が躍る。こんなに楽しいことはない。
 真っ暗な中、起きあがると向こうも気配に気がついた。
「なっ‥克海‥」
 二の句がつげないようだ。克海は電気を点けると抵抗できない将人のパジャマを乱暴に下ろし、先端に触れた。ぬめっている。
「何してた?」
「‥くっ‥」
「まさか自分でやろうとしてたんじゃないよな? ふーん、啓先輩におかずにされてますよって教えてもいいわけだ」
「なんだよ。お前何がしたいんだよ。そうだよ。やろうとしてたよ。溜まってムラムラするんだよ。悪いか。健康な証拠なんだ」
「全然悪かないよ。もっと気持ちよく抜けばいいじゃないか。俺がしてやるって言ってるんだから」
 メガネを外した顔はいつもより柔らかく見えるが、今は怒りで満ちていた。
「ほら、お願いしろよ。抜きたいんだろ」
「お前、男が好きなわけじゃないだろ。こんなことしてなんか楽しいのか?」
「ああ、すっげー楽しい。楽しくてワクワクしてるよ。お前が俺に頼み事してくるなんてな」
「なっ何? 俺はそんなことしない」
「ふーん、じゃあそのままでいいわけね。勝手にやったらどうなるか、分かってるんだろうな」
「〜〜〜分かったよ。抜いてくれ。これでいいんだろ」
「よーし、良く言った。お前にお願いされたから、わざわざ抜いてやるんだからな。分かってるか?」

 将人はあまりに理不尽な言いように顔が赤くなるほど怒っていたが、前回と同じように足を開くよう言われて大人しくなる。
 溜まっていた将人は短い時間で達し、同じく溜まっていた克海もすぐにイった。そしてもう一度将人を導いてやる。
「今度からは我慢しないで俺に言うんだな」
 圧倒的に優位に立てて克海はほくそ笑む。


 それからだんだんと慣れ、ひと月もすると2日に1回はするようになり、後ろに入れる指も3本に増え、将人もそれを貪るように腰を擦り付けるようになっていた。

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