BLEACH 一護×織姫


Even if I antagonize the world






 ※WJ35号の237話ネタバレです。コミックス派でネタバレゴメンな方はプラウザバックおねがいします。。

 推測、憶測、状況証拠、ついでに消え去った対象の性格から考えて得られた1つの結論に、一護は悲痛な声をあげた。
「畜生ッ!!」
 無力な自分が恨めしかった。時間的にはもう数カ月経っているが、それでも自分的には舌の根も乾いていないその内に守ると誓ったその人に、自ら犠牲となりに行くそんな道を選ばせてしまった。
 だからせめてと気力の限りを振り絞り、ベッドから抜け出すそのために傷だらけの両腕に力を込めた。
 そんな一護にすぐさま叱咤の声が飛ぶ。
「何をしておるんだ、一護!お前はまだ起きれる身体ではない!!」
「ウルセェよ、ルキア!」
 心配し、ベッドに押し戻そうとする華奢な身体を振り払い、一護は絶叫する。
「探しにいく───助けにいくんだ、井上を!」
「無茶言うな、一護!」
 だが振り払われてなお、ルキアは叫んだ。
「その身体で動けるものか!仮に動いて井上にたどり着いたとして、破面の連中になぶり殺されるのが関の山、イイとこ命とひきかえに井上が助かるその程度だ」
 万全の体勢で戦ってここまでぼろぼろにされたのだ。実際まだ完全どころかほとんど傷が癒えていない状態で彼等と戦うことになれば瞬殺されるのがオチだろう。
 一護は基本短気だが、そんなこともわからぬほど愚か者ではないはずだ。
 なのにそれを指摘したルキアの言葉に、一護はきっぱりと頷いた。
「ああ、それで全然かまわねぇ」
「一護?!」
 その言葉に信じられない気持ちでルキアが目を見開くと、そんなルキアに向かって一護はきっぱりと言い切った。
「井上がそれで助かるっていうんなら、俺の命なんて安いモンだ。いますぐアイツらにくれてやる」
「バカを申すでないっ!!」
 まぎれもなく本気だと解る一護からのその言葉に、ルキアは今度こそ激怒して、その勢いのまま怒鳴り飛ばす。
「そんなこと井上が望むものか!!あのお人好しで、優しい井上がお前を犠牲にして助かって、喜ぶなどあるものかっ!ふざけるなっ」
「ふざけてなんかねぇよ、ルキア」
 だがその激しい叱責にも一護はゆるがず首を振り、それからこうつぶやいた。
「だってもう『2度目』なんだ───いや、もしかしたらもっとなのかもしれねぇけど、少なくとも今回で、今度でもう2度目なんだ」
「…一護?」
 その声の響きから、頭に血がのぼっているからだけではない本気の理由を感じ、ルキアは瞳を覗き込む。
 するとそんなルキアに向かい、ルキアの方を向いてはいるが、別のものを見つめた瞳で一護はこう言葉を紡いだ。
「お前がいうとおり井上はいいヤツで、お人好しで、しかも自分の価値ってヤツをぜんぜんわかってねぇヤツだから、他人の命と天秤に掛けちゃ、一瞬だって悩むことなく、自分の方を切り捨ててんだ。前に、ってか一番最初に破面の連中が襲ってきた時、井上、俺をかばって怪我したことがあっただろ?あれはアイツが自分より俺の方を選んだ証拠───アイツの身体の手も足も、一瞬だって迷いなく飛び出してきたんだ」
 あの時のことを一護はよく覚えている。自分の中の虚を怖れた所為で攻撃を受け、それを見た織姫は自分を助けようとして飛び出しひどい怪我を負った。結果として彼女はそれをなす前に攻撃を受け、弾き飛ばされてしまったのだが、あの瞬間、織姫がしようとしていたことは自分の身体で一護をかばうことに他ならなかった。
 その時のことを彼女は身体が勝手に動いた所為だからとそんな風に言い、自分が怪我をしたことで自分を責めないでと傷付き、横たわったそのままで何度も一護にそう訴えた───自分が勝手にしたことだからと、何度も何度もそう訴えた。そしてそれはまぎれもなく本気であり、それどころか自分が怪我をしたせいで一護を余計に苦しめたのだとそんな風に考えて自らを責めているようだった。
 そのことからもわかるように織姫にとっては自分は2の次どころではなく、完全に最後なのだ。特に自分にとって大切だと思う存在と比べた時、迷うどころか考えることすらなく彼女は自分を下にするのだ。
 だから───。
「俺は誓ってたんだ。『もう2度と井上にそんな真似させない』って───本当は戦うのはもちろんだけど、戦場にいることにだって向いてない井上に、簡単に『自分』を捨てさせないって───守るって、そう俺は誓ってたんだ。それなのに───」
 なのにまた同じことをさせてしまった。しかも今度は身体の怪我なんかでは済まない、未来を差し出すようなマネを彼女にさせてしまったのだ。
 そのことが一護には許せない。いつのまにかに側にいて、いつも笑っていてくれた彼女に、悲しい、だけど、彼女自身は誇らしげに、笑ってみせるだろう選択をさせた自分が許せない。
 もっともっと自分が強くて皆を守れていれば───いや、守れてはいなくても、彼女に、彼女がそう思うように彼女も誰かにとって自分を捨てても守りたい人なのだということを伝えてあげられていたら、こんな『今』は絶対に存在していないはずなのだ。彼女に、彼女が大切だと───他ならぬ『彼女』が大切だと、伝えることが出来ていたならば───。
 だからそれを思い、一護は言う。
「俺は井上を助けなきゃなんねぇ───会って『バカヤロウ』って言ってやらなきゃならねぇんだ。でないと俺の気が済まない」
「一護───」
 話を聞き、心に触れ、そう思う一護の気持ちはとてもよくわかったが、でもそれでもそれとこれとは話が別だ。もしかしたらこれは一護にとっての『誇りを守る為の戦い』───自分自身である為に譲れない、絶対の戦いなのかもしれないが、それでも今はもう遠い昔、彼によく似た自分の上司を戦いに送りだしたように、彼を行かせるわけにはいかない。そんなことをすれば彼は間違いなく死ぬだろうし、その死を知れば織姫の心は傷付ききっと死ぬ。それがわかっていて彼を行かせるわけには行かなかった。
 だからルキアは想いに流されそうになる自分を抑えながら、思いで一護に訴える。
「ダメだ、井上に助けにいくというのならせめてもう少し、自力で斬魄刀を振れる位に身体が回復してからだ。それがどうしても待てぬというのなら、お前の代わりにわたしが行く。井上の心配しているのはお主だけではないのだからな」
「バカ言うなよっ」
 その言葉に一護は目を見開いた。
「テメェであの連中に歯がたつと思ってんのかよ!渾身の一撃もまったく効かなかったクセに」
「うるさいッ!」
 事実だが、指摘されると面白くない内容にルキアはすかさずこぶしを振り上げ、一護に向かって反論する。
「それでも少なくとも今のお前より数段強いわっ!」
「くそォ、テメェ、ルキア、何すんだ?!怪我人にスクリューアッパー喰らわすか?!」
「ハハッ!情けない!か弱き乙女の一撃ごときでそう簡単にマットに沈むか!」
「テメエの何処がか弱き乙女だ?!それにこれは『マット』じゃなくて『ベッド』だ!歳とりすぎてボケてそんな区別も忘れたか?」
「何ィ?!一護、貴様っ!!」
 途端、始まりかけた乱闘に、楽しげな笑い声が飛ぶ。
「ハハッ、思ったよりも元気そうで───楽しそうですね、黒崎さん」
「「!!」」
 その声に一護もルキアも互いに向けたこぶしをとめると、目に映った存在に目を思いっきり真ん丸にした。
「「浦原(さん)?!」」
「はいな」
 いつものようにトレードマークの帽子を目深にかぶった恰好で、浦原は大きく頷いてみせる。そしてそれに引き続き、彼の肩というか背に乗っていた黒猫も存在を主張した。
「ワシもおるぞ」
「「夜一さん(どの)!」」
 その突然の、正確には2人だが1人と1匹の登場に一護とルキアは唖然とし、けれど解決せねばならない疑問を彼等に対して問いかけた。
「いったいどうして、ってか、どうやって───」
 一護の部屋は2階であり、扉から入ってきたわけではない。しかもだんだん肌寒くなってきている時期なので窓もしまったままなのだ。それなのに文字どおり降って湧いたとしか思えない登場に、問いかけずにはいられなかったのだ。
 だからこそしたその当然の疑問に、2人はこういうカタチで答えた。
「それはですね、黒崎さん───」
「『こうする為』じゃよ」
「!?!」
 途端、腹部に感じた激しい圧迫感に、一護は意識を落としつつ言葉をこぼす。
「……よるいちさん……」
「一護?!」
 あまりに高速な動きで行われた為、正直完全には捉え切れてはなかったが、それでも吐き出す言葉の最中に本来の姿に戻った夜一が一護の腹部にこぶしを突きいれたのは確認出来ていたルキアは、その攻撃を受け崩れ落ちていく一護を見ながら、すぐさま、その元凶に声を飛ばす。
「夜一どの?!」
「心配するな、薬じゃ」
 そのルキアの悲痛な声に夜一は安心させるようにそう言い切り、それからこう言葉を付け足す。
「こうして無理矢理にでも寝かせておかんと、こやつのことだから井上を追うというに決まっておると思ったのでな」
「あ───」
 その言葉に納得し、それですぐさまルキアは頭を下げた。
「ありがとうございます!夜一どの」
 悔しいというより、むしろ仕方ないといった感覚だが、きっと自分では一護を止め切ることは出来なかった。何しろ一護がいるからこそ自分も持っている今すぐ井上を助けにいきたいという衝動を押さえられているにすぎないのだ。だからある意味一護と同じ気持ちの自分では彼を抑えきれなかったに違いない。
 なのでその意味も込めてさげたルキアの頭の上に、そんなルキアの感情も理解した夜一の言葉が降り注ぐ。
「何たいしたことではないわ。礼をいわれるほどのことではない。じゃが───」
「?」
 言葉尻に何かニュアンスの違う響きを感じ、ルキアが目をしばたかせると、夜一は面白そうに笑いながら意味深な言葉を吐き出した。
「まさかこれほどまでに心を固めていようとはな。一護も少しは大人になった───いや『男』になった、ということか?」
「そうですね」
 一応疑問符だが、本当は肯定の意味の言葉に浦原が頷き、それから同じように付け足す。
「でもこれで黒崎さん、もっと強くなりますよ。下手したら我々でも一瞬でやられちゃう位に」
「違いない」
「??」
 そうして笑い出してしまった2人のやりとりに、ますます何だか解らなくなり、ますます目を丸くしたルキアに向かい、浦原は少し説明口調で言う。
「ですからね、朽木さん。黒崎さんは強くなった───いや、強くなるのに必要なモノを手に入れられたようなんですよ。それこそ世界を敵にまわしても譲れないし、譲りたくない、自分にとっての『絶対』を」
「???」
 だがそう確信を持って言われても、相変わらず抽象的で繋がらない言葉たちにルキアは目を丸くするしかない。
 なのでただこのまま話したとしても多分2人の言葉の意味は解らないということだけはハッキリ理解出来たので再びベッドの中に、というか、上で眠っている一護を見下ろした。腹を突かれた際に打ち込まれた睡眠薬がよく効いているのだろう。かなり大きな声で会話しているのに一護はぐっすり眠っている。
 しかし手だけは───これまで運命を切り開き、望む未来をつかみ取ってきていたその手だけは眠っていないようだった。しっかり強く握りしめられ、だけれど何かを求めて彷徨い───。
 だからそのことにルキアはただ『そうか』と思った。何も解らず、解らぬままに、ただ『そうなのだ』とそう思った。


                                 THE END.







 夏休み企画再録、237話を見て書かずにはいられなかったセルフ補完、ブリーチの237話後妄想です。こちらに移すにあたり、タイトルだった『世界を敵にまわしても』をそのまま訳した英題に変更しました。
 んで、原作とかな〜りずれてしまいまいたが、気に入っている作品なのでそのままアップしました。
 話に出てくるのは一護とルキアと浦原さんと夜一さんだけですが、内容は『一護→(←)織姫』でちょっぴり『一護←ルキア』風味です。しかもこれだけガンガンに織姫への思いを語っておきながら一護は無自覚という恐ろしい設定。。でも実際そうなんじゃないかな〜と思ってたり。皆さんはどう思ってらっしゃいます?

                    


 
 

 
 ← OTHERSトップに戻る