※238話ネタバレです。まだ読んでない方、コミックス派の方でバラされたくない方はプラウザバックお願いします。。
すべてを捨てることになる女にひとりだけに別れを告げに行くことを許したのは、同情でも情けでもなく、より深く捕らえる為の作戦の1つだった。
誰にも何も言わず何も残さずその世界から切り離せば、無理矢理連れ去られたものとして、尸魂界の死神達はやっきになって女を取り戻そうとするだろう。それをさせないようにするためには、女自ら裏切ったのだとそう思わせるのが得策だった。
別に尸魂界から派遣される死神共が恐ろしいわけではない。階級が下の連中はヤツラにやられてしまったようだが、自分を含めた上位の者にヤツラの刃は届かない。ただそれでも大事を行う為の大事なこの時に必要以上にわずらわされるのはさけたいので、そうさせず、同時にくだらない結束とやらを壊せる効果もそれに狙って、それを実行させただけだ。
事実それは上手くいき、尸魂界の護廷十三隊の中では亀裂が出来始めている。それに属する存在の数が多ければ多い程、結束など簡単に壊れるものだ。
知る者と知らぬ者、信じきれる者と信じ切れぬ者、他人の為に死ねる者とそうすることが出来ない者。何を基準とし、己の中心とするかはそれは人それぞれによって違う。
だからこそ組織に必要なのは、いついかなる時や場合においてでも不変である規律やルールだと思われているが、だが実際はそうではない。本当は最もそれに必要ないとされる情こそが最も強くそして確かに繋ぐものなのだ。
現に理によって情を切った結果、女が最後にまみえるひとりに選び、そんな女をこの状態でも信じきっている男は、女を信じず裏切り者と決めつけた尸魂界の非情に心をうち砕かれてしまった。そして男がそうなることがわかっていてなお、死神としての法に縛られその場で男と共に歩くことを選べなかった者達は、男の砕けたその有り様に大きく揺らいで揺れている。そしてその波紋はこれから時が立つにつれ、ますます大きな波紋に変わり、いずれ護廷十三隊の根底を揺るがすほどの大きな流れとなるだろう。
そのことにウルキオラはほくそ笑まずにはいられなかった。予想の範疇ではあったが、それでもいくら死神連中が愚かといえど、女を連れ戻る際に自分が付け足し用いた策がこれほど上手くいくなどとは思ってもいなかったのだ。
しかもそのことが自分が攫ってきた女、井上織姫に対しても実に上手く働いている。
いくら傷を治す為だったとはいえ自分が会いに行った痕跡を残してしまった結果、自分が惚れている男が精神的追い詰められ、孤立させられているそのことに、ひどく心を痛めているのだ。どうしてそうなってしまうと予測出来なかったのかと自らを責めつづけ、敵だと思うウルキオラの前などでは涙をみせたりはしないけれど、直接見張る者がいない場所では常に自分を責め続け、心を壊し続けているのだ。
そのことで今はまだ怒りを向ける鉾先は自分自身に向いているが、おそらく後少し───そう、半月かそこかあれば、それが向く方向が変わっていくだろうことを、ウルキオラは予測している。
確かに自分も悪いのだが、自分をこうさせたのは───敵である破面の元に向かわせたのは、彼等と対等もしくはそれ以上の強さで戦えない死神達の弱さが原因で、しかもその上自分にそうさせた連中が自分にとって誰より大切なその人を苦しめ追い込むなど言語道断とそう思い、死神達を恨む気持ちがわき上がってくるだろう。
そうなればそのときこそ真実『太陽』は自分達の手に落ちる。
誰かに会いに行かせることで、真実一番大切な人間が誰かを知ることが出来た自分達は時来れば彼女の耳元で、お前が我々に手を貸せばあの男を───黒崎一護とかいう、お前が愛してやまないあの男には何があっても手を出さないとそう甘く囁いてやれば、彼女は自ら喜んで自分達の元に堕ちてくる。ためらいもなく、とまどいもなく、嬉々としながらまっすぐに───。
その時のことを思うとウルキオラは胸に歓びが満ちるのを自覚せずにはいられなかった。
同時に彼女が変わることを───たとえ敵わぬとはわかっていてもそれでも仲間を守る為なら、内なる恐怖を押さえ込み、誰より強く激しい瞳で挑んでくるその魂がそうなればくすんで歪んでしまっているだろうことに、ほんの少しでない物悲しさを感じているのも自覚しながら───。
THE END.
夏休み企画の再録です。何だかお題に合っているのかいるのかわからない、ウルキオラ視点の238話後妄想です。
ウルちゃん破面メンバーの中では知性派の様ですから、もしかしたらこうなることまで予想して織姫ちゃんに誰かひとりに会いにいかせてたなんてあるかも!と思って思ってしまったが運の尽きでこんな話が出来ました。
ラストのラストでちょっとだけウル→オリテイストを滲ませましたが、これは趣味かつ願望です。
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