BLEACH 一護×織姫 

It's a very special day!




 


「────やっぱ何か違う気がする」
 なんて、この期におよんで言い出したのは、空座町のみならず、最近では虚圏にさえ隠れヘタレとしてその名を知られている黒崎一護である。
 そのヘタレっぷりときたら、前から好きで仕方がなかった女の子がすぐそこにいて、そのコから告白らしきものをされ、そのうえに端的に言うのなら『あたしのことを抱いてください』とお願いされちゃったりしたというのに、今こうしてこうやって止まっているほどである。
 もしここに彼の死神代行としてのパートナーであるルキアでもいたら『それでも男か、一護!女に、それも井上に恥をかかせる気か?!』と即座にば倒し、得意の右手1発どころか5、60発お見舞いしていたところだろう。
 だが今回の場合、彼にも彼なりの事情がある。
 というのは。
「だってさ、今日は井上の誕生日だろ?それなのに俺の方がイイ思いするのは、やっぱり違うと思うんだ」
 ということだった。
 だから見た目の派手さからは想像出来ぬほど生真面目で義理堅い彼は、この年頃の青年らしい妄想と欲望の持ち主でありながらもその誘惑に屈し切ることが出来ず、立ち止まってしまったというわけだ。
 だがそんな一護に対し、彼にそんな煩悩満載の悩みを発生させた織姫はあっけらかんとこう言った。
「そうかな〜、あたし的にはまったく全然、そんな風には思わないんだけど」
 だって彼女的には彼を悩ませていることをお願いをしたのは自分自身なのだ。
 『これまでいろいろ世話になったし、これからも世話になるだろうから、今度の井上の誕生日には俺からも何かプレゼントさせて欲しいんだ』と言われ、それで何が欲しいかと言われた時、自分は即座に『じゃあ『黒崎くん』をあたしに下さい!あたしは黒崎くんが欲しいです』と自分から激しく要求したのだ。
 だから彼が自分のことを嫌いもしくは何とも思っていなくて断るつもりでそう言っているのなら、織姫的にも何もいうことはないし、無理強いするつもりもない。だけどこのお願いをした時彼は『それって俺を彼氏にしてくれるって意味?』と確認してきた後、それにそうだと答えると『だったら全然まったくOK。俺も井上が好きだから、ずっと前から好きだったから、俺なんかでよかったらいくらでも貰ってくれ』とギュッと強く抱きしめて、それからキスしてくれたのだ。
 そうして迎えたのが今日の日だ。彼が自分の恋人になってくれると約束してからたったの2日だけだけど、それでもお互い想いあっていたと知って迎えた初めての記念日だ。
 だからその初めての記念日をもっともっと特別な、絶対一生忘れられない日にしたいと願うのは自分の我が儘なのだろうか?そんなにいけないことなのだろうか?────そう思い小首をかしげるが、答えは全然出そうにない。
 だけどただわかるのは、誰より大好きなこの人を困らせるのは絶対イヤだということで、だから織姫は自分のしたお願いを取り下げることにした。
「あ、でも、黒崎くんが『今日は無理』、『今日はイヤ』って言うんなら、黒崎くんがあたしのこと、もっともっと好きになって、もう辛抱たまらん〜〜〜って感じになってからでも全然いいよ。あたしはそれまで全然余裕で待てるし」
 だがそんな織姫としては親切なつもりで言った言葉に一護は思わず天を仰いだ。
「お前なぁ」
 言葉につまるというより思いにつまる。
「『辛抱たまって』なかったら、こんなに思いっきり悩むかよ!俺だって男なんだから『はいそうですか、いただきます』って、すぐにでも井上押し倒してるよ」
「え?そうなの?黒崎くん、辛抱たまってくれてるの?」
「当たり前!」
 思わず大きく目を見開いた織姫の額に、自分のおでこをこつんとぶつけ、軽いというより甘い痛みを共に味わいながら、一護はきっぱりとどこかまだ半信半疑の織姫に向かって言い切る。
「惚れてるよ、俺、すっげぇ、惚れてる。だから井上を大切にしたい────あとから井上に後悔させるかもしれないようなマネ絶対したくねぇんだ。そんなことになったら俺、確実に自分を殺したくなるから」
 だから悩んでる、いくら井上がいいって誘ってくれてても、ホントにいいか悩んでる────そう付け足した一護の言葉に、織姫はふんわり柔らかく微笑みながら、その言葉に対する感想を実にあけすけにこう言った。
「優しいねぇ、黒崎くんは。でも思いっきり大バカだね」
「井上??」
「だってね、黒崎くん」
 一世一代の告白めいたことをしたのに、よりにもよってその彼女から大バカ呼ばわりされたことで一護が目を白黒させると、そんな一護に向かって織姫はますます笑い、重大な何かを聞かせる様に、ややゆっくりと言葉を紡いだ。
「だってあたしはもう後悔してる、『今』後悔してるんだよ?だって黒崎くん言ってくれたじゃない?『《あたしのこと》好きだった』って────『ずっと前から好きだった』って。だったらあたしが勇気を出してもっと早くに告白してたら今頃もっともっとずっと仲良く、もっと好きになれてたのかな〜って、後悔しまくってるところなの」
「────井上」
 まさかそんなこと思われてたとは思っていなくて、初めて明かされたその思いに小さく一護が目を見開くと、織姫はすこしだけ、ほんの少しだけ不機嫌な感じで、一護に向かって言葉を続ける。
「それなのに、もうこれ以上後悔しないために、黒崎くんの全部を貰って、黒崎くんに全部をあげたいの。なのにそんなこと言うンんだもん。黒崎くんたら大バカだよ、あたしを気遣ってくれてるようで、それでいてあたしの気持ちホント全然、まったくわかってくれてない」
「井上────」
 その言葉に、そしてその深さに一護は小さく目を見開き、それらを受け止め瞠目した後、織姫に向かって確認する。
「じゃあ本当にいいんだな?井上、本当に、本当にいいんだな?!多分俺、途中で嫌がられてもやめられねぇぞ?井上の全部に『俺専用』ってとことん全部わからせるまでやめたりとかしてやれねぇぞ。それでもいい────本当にそれでもいいんだな?」
「もちろん」
 ハッキリ、そしてきっぱり頷き、それからニッコリ笑って言う。
「望むところであります」
「わかった」
 その笑顔と迷いない表情に一護は頷き、同じ強さの覚悟と気持ちで、織姫に向かって同じように言い切る。
「じゃあ『誕生日おめでとう、井上』、遠慮なく《俺》を貰ってくれ────んで、井上の全部を俺にくれ」
 だからその言葉に織姫は幸せそうに笑って、それからペコリと頭をさげた。
「はい、ありがとう、黒崎くん。嬉しいです、幸せです、それからフツツカモノですが、今後ともよろしくお願いします」
 そのどこかいつかを思わせる言葉に2人はしばし微笑みあうと、それから同じように抱きしめあってキスをして、互いのモノになりあった。どんなに溶け合っても足りないくらい、それくらい深くたっぷりと、限り無く1つに、永遠に────。



 



                                 THE END.





 ギリギリ間に合った織姫誕生日記念です。
 かなり端折りましたが、この内容の本を『健全本』(←ここ重要)として売ろうとしていたバカは神戸にいます。
 やめといてよかったと思う今日この頃でありんす。。


 
 

 
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