BLEACH 一護×織姫


Lovers' talk at the first morning





 

 特別な日にしたかった、その思いも手伝ってくれただろうのか、その夜織姫は実にはいろいろなことを知った。
 たとえば男がどんなふうに女の体に溺れるのか、どんなふうに正気を失って、それでも時々正気を取り戻して、正気を失ったことを詫び、でも詫びたと思ったらまた気が狂ったようになって、そんな状態で男がどんなふうに織姫のカラダの隅々を堪能し尽すのだとか。また自分との行為に夢中になって正気を失っている男に求められるそのことが、織姫の心と身体にどんな影響を与えるのだとか。はたまた男と女の身体の違い、そしてその違いがどんな風に互いに作用しあうのだとか。
 とにかくそんな風に実に織姫は多才なことを知った。中でも衝撃的だったのは、正直あんまり好きじゃなかった自分の大きすぎる胸が、ほかの身体のどのパーツより男を────黒崎一護という人を悦ばせることが出来るというその事実だった。
 だからか、ハッキリ言うならヤるだけヤって、同じようにハジメテだった織姫をほったらかしにして、達しえた歓びがもたらす開放感から一護が、それこそまさに我が物顔で織姫の豊かな胸に触れながらそりゃもう気持ちよさそうに満足げに眠り込んでしまったそのことを織姫は許せるような気がした。
 だってだ、多分それだけ一生懸命だったのだ、彼は。時間にすればたったの20分程度のことだったのに、その間自分に触れ続け、身体を動かし続けていた一護の身体は、初めてゆえの痛みを1人ではこらえきれなくて、ついしがみついてしまったそのとき一瞬ずるっといってしまいそうなほど汗でびっしょり濡れていた。後からまるで織姫の身体を折り畳むようにぐっと突き上げ、揺さぶり続けていたその時には、額から落ちてきた汗が織姫の上に降り注いできたりもした。
 だがまあそれでも結局いわゆる『イッちゃう』ことが出来たのは一護だけだったのだからうがった見方をするならば、彼は自分が気持ちよくなることに一生懸命で、努力が足りなかったということになるのかもしれない。
 けれど自分が気持ちよくなるために正気を失っていたとしても、それでも一護はそんな極限状態の中でも一生懸命正気に戻ろうとしてくれたし、微かに理性が戻ってきている時には、織姫が気持ちよくなることの方を優先させてくれようともした。
 だから100点満点とは言えないけれど、それでも次回以降の期待値と一護への努力点も加えて、自己採点で甘めの85点を心の中に記憶し、織姫はイタすことを終えてからかれこれもう30分以上はたっているというのに、それでもあまりに激しかった運動からか未だに自分より遥かに熱い身体に自分のそれを寄り添わせ、そのまま眠ることにした。
 だが、どうやらそれではいけなかったらしい。そのことを織姫は翌朝一番に知った。
「ゴメンッ!」
 朝起きてまずおはようよりもまだ早く降り注いできたその言葉に、織姫は思わず目をしばたかせた。
「黒崎くん?」
 すると再び、声が降り、そして続いて大きく頭も下げられてしまった。
「ゴメンッ、井上、ホントゴメンッ」
 そのことに織姫の声が震えた。
「くろ、さきくん…?…」
 だってだ。これは2人にとって初めてのこと───本当に『初めて』だったのだ。それなのに翌朝一番に謝られてしまうなど、いくら織姫がちょっぴり世間の皆様と感覚にずれが生じている人間とはいえ、それでも乙女である以上考えうる結論は一つだ。それすなわち後悔している、なかったことにしたいということ。
 だから正直色を失い、顔だけでなく全身が青くなっているのを自覚せざるを得ないまま織姫が寝ぼけ眼を必死で機能させると、するとその目には自分以上にまったく色を失ってしまっている一護の姿が映し出された。
 そのことでますます織姫が不安を募らせ始めると、そんなことはまったく他所に、一護はそのまま言葉を紡いだ。
「だってさ、井上、痛かっただろ?!俺、メチャクチャだったし、それにその上、井上ほったらかしにして寝ちまったしっ」
 その言葉、そして必死に弁明する様子に織姫は心底ほっとした。
「黒崎くん───」
 後悔は後悔でもその種類は違っていた。
 だから織姫はやっぱり黒崎くんは自分が思ってたとおりの人───すっごく優しくて誠実な人なんだって、とてもとても嬉しくなって、だからその気持ち促されるままに、心からの気持ちでこう言った。
「気にしないで、ね?あたし、黒崎くんが知ってるように頑丈だし、あたしも黒崎くんが寝ちゃった後、黒崎くんの寝顔をたっぷり堪能してから、それからすぐに寝ちゃったし」
「けどっ」
「けどじゃないよぉ」
 織姫がいいというのに、それでも納得しきれない様子の一護を何とかなだめようと、織姫は懸命に否定の言葉を紡ぎ、それからそれをもっと顕著にすべく起き上がろうとした。だがそれはあまり上手くいってはくれなかった。言葉を言い切るその前に、織姫は再びシーツの海に沈む結果となったからだ。
「だって、これはあたしが頼んだ──────ッ」
 そのため、言いかけた言葉が中途半端になってしまったことも手伝って、一護が激しく、思いきり慌てた。
「井上ッ!?!」
 その慌てふためく姿は空座町周辺の不良達すべてから一目を置かれている強面の男子高校生のイメージからはかなり程遠かった。心配のあまり今にも泣きだったし、何より織姫が崩れ落ちた原因イコール昨夜のご乱行の所為というれっきとした事実を自覚している彼は、自分を責めずにはいられなかったのだ。
 だからその瞬間、ある意味実に奇妙なカオをしていた一護に対し、織姫はこう言葉を紡いだ。
「ねえ、黒崎くん。黒崎くん、今、まるで人殺しした後みたいなカオしてるよ」
 それは織姫としては笑って欲しいがゆえの、冗談のつもりだった。
 けれどそれは一護には冗談にはならなかったらしい。その証拠に表情に苦笑のニュアンスをさらに加えながら、ぼつりとこうつぶやいた。
「───ん、まあ、気分的にはそれに近いな」
 聞き取れなければ無視出来たのだが、聞き取れてしまったから、織姫はその言葉に怯え、怯えつつ、それでも名を呼ぶことで問いかける。
「黒崎…くん??」
 今、織姫の脳裏には、一護が謝ってきた直後に導きだした答えが再び、それも3割り増の強さでリフレインしている。だって、人を殺した後と同じような気持ちだということの意味はそういうことだとしか思えなかったからだ。
 だから泣きたい思いで覚悟を決め、今度こそ何を言われても平然と受け止めようと決意を固めかけたその時、一護は今度はハッキリと織姫に視線をあわせるような形で、思いのたけを口にした。
「だってさ、惚れた女を自分の身勝手で傷つけた、しかもその上、初めてでその女の誕生日だったっていうのに、自分だけ気持ちよくなって寝ちまったなんて、最低最悪の人殺しと変わらねぇ」
 その言葉に織姫は激しく打たれた。
「黒崎くん───」
 気が付けば涙がぽろぽろぽろぽろ溢れていた。
 この瞬間織姫は生まれて初めて幸福でも泣けるのだということを実感し、そして今はこの幸福に身をゆだねるべき時なのだと本能的に理解した。
 だってだ、一護の言葉はすべてを語ってくれていた。自分が一護にとってどれだけ大切な存在になれているかということ───そしてこれから先もずっとずっと、ずっと一生このままで居てくれようとしてくれているそのことが、全部すべてわかったのだ。
 だから溢れ出る涙が止められなくて、ただ一護を見上げるしかなくなっていた織姫に向かい、一護はただ問いかけてきた。
「───こんな男じゃ嫌か?」
 一瞬、織姫にとって一護の言葉があまりに見当違いだった為に呆然としてしまったその瞬間に、一護はさらに問いを重ねた。
「こんな男はもう嫌いか?」
 その瞬間、織姫は叫んでいた。
「バカぁっ!!」
 そしてその勢いのまま、火事場のバカ力的な力を発揮し、一護に向かって飛びかかった。
「ワッ!!」
 その反動で受け止めたはいいけれど、一護は織姫共々後ろにばたりと倒れ込み、激しく後頭部を強打した。
「────ッ!!…タァ…」
 余りの痛さに声も出ず、ただ目の中で星を飛ばすしかない一護に織姫はぎゅっとしがみつき、半分以上痛みに意識をとられたままの一護のその身体の上で、思いのすべてでつぶやいた。
「…大好き…」
「───井上?」
 聞こえていたのであろうが、それでもここまでの流れからして確認したい一護が名前を呼ぶことでその確認を織姫に向かって実行すると、織姫は泣いたままのカオで笑って、その笑顔のままに囁いた。
「大好き───『大好き』ですっ」
「井上───」
 今度はその言葉の余韻が消えやらぬ内に、2人ともがしばらくの間、声を発言することが不可能な行為を開始した。
 だって愛しくて仕方がない───相手のことが好きで好きで、好きで仕方がなくなってしまったのだ。だから互いの本能と感情が赴くままにキスをしあい、抱きしめあわずにはいられない。
 それゆえそれらの行為を互いにたっぷり堪能しあい、それからあえて改めて思いを言葉に直しあった。
「大好きだよ、黒崎くん」
「愛してるぜ、井上」
 そうしてそれからまた再び愛の行為に没頭する。そう出来る幸福がたまらなく貴重で奇跡なことを実感し、そして感謝しながら─────。




                                 THE END.







 かろうじて一護のセリフでわかりますが、織姫の誕生日もののつもりで書いてます。なんか、この2人、記念日とかのきっかけがなければ初Hはしなさそうな組み合わせなので(苦笑)
 一応、織姫が17の誕生日のつもりで書いてます。1年後のこの日には黒崎くんもこんな無様な真似はしてないと信じてます(笑)


 
 

 
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