BLEACH 一護×織姫


PRESENT FOR YOU in the THAT





 

 すべてはほぼ一月前、手作りチョコを差し出された瞬間から始まった。正確にいうならその前の前、ずっと前から始まっていたのだろうけれど、一護にとって今回の事態の始まりはその日だったと言っていい。
 『黒崎くんが好きなの』とこぼれんばかりの大きな瞳をウルウルのウルに潤ませて、恥ずかしそうに見上げてきたのは彼の友人兼幼馴染みの親友で、そして彼が好意を寄せている井上織姫その人だった。
 中学の同窓生だが彼女に関する記憶は彼女が事故に遭った彼女の兄をその小さな身体で担いで父のやっている病院へやってきたその時に関するものだけで、だから本当の意味で彼女を知ったのは高校の入学式の日のことだ。それからたつきを間に挟んで付き合って、挟まなくても挨拶したり会話するようになっていって、気がつけば自分の日常に彼女が居ないことが考えられない程、一護にとって彼女の存在は身近で大切なものとなっていた。
 だから『好き』という言葉を言われた時、正直やったと心から思った。多分、自分が彼女を思うようになるより、彼女が自分を好きになってくれた方が全然早かったと周りや彼女の態度から知っていた。だからいつか告白してくれるかも、なんて甘い期待も抱いていた。
 けれど同時に両思いになって互いに告白がまだな場合、男からしてあげるのが当然だという古風とも言える考え方をしていた一護は告白するタイミングをずっとずっとうかがっていたのだ。
 だけどカッコつけな性格がわざわいして脳内シュミレーションばかりをくり返し、実行出来ずにいてしまったのだ。
 その結果、バレンタインという免罪符を片手に彼女が告白してくれた。だから一護は表には出さずに内心でガッツポーズをし、『俺もお前が好きだよ、井上』と囁いて、それから彼女を抱き締めようと、何度か頭の中でしていたシュミレーションどおりのことを実行しようと試みたのだ。
 しかし、何ごとも思ったとおりいかないのが世の常である。あれ程、鈍い自分でもわかるように『黒崎くんが好き!!』と全身から発しているクセに、その自覚がない彼女は好きだという言葉でいっぱいになって、言うだけ言うと逃げ出してしまったのだ。『返事はいつだってかまわないから。黒碕くんが好きなだけで、それだけで毎日幸せだから!!』と、そんな言葉を言い残し、一護からの返事を待たずに走り出してしまったのだ。
 この時のことを思うと、何故そのときにすぐさま追い掛け、彼女を胸に抱きしめてしまわなかったのか、と一護は後悔せざるを得ない。おかげで今日までというもの、彼女が自分に告白してきたことを知っているたつきからは白い目で見られ、本匠からは睨み付けられ、針のむしろに座らされている気分なのだ。そしてその状況を打開するには自分からも告白するのみ、返事というカタチになるが、実質自分からも彼女に向かい好意を告白してみせる、それ以外しかありえないのだ。
 だがここまでさんざんに機会を逃しまくってきた一護に上手くタイミングがはかれようはずがない。告白してしまった恥ずかしさから彼女の方がちょっぴり彼を避け気味なのだからなおさらだ。
 だから女の子にとっての免罪符がバレンタインなら、男にとっての免罪符となるホワイトデーにすべてを掛けようと覚悟を決め、一護は義理や意中その他もろもろ、とにかくチョコレートを貰ったからにはお返ししなければならない男達がひしめく街にくり出した。
 しかしこれがキツかった。もともと人込みがあまり好きでない上、見た目と尾ひれが付きまくった自分に対する噂の為、これまで妹達以外からチョコレートなど貰ったことがなかった一護は、自分と同世代の女の子にどんなものを贈ればいいか、まったくわからなかったのだ。
 とにかくわかっているのは、恋愛の達人水色からおしえてもらった、ハンカチは『これで涙を拭いてくれ』という意味になるからダメだとか、チョコレートもチョコにチョコを返すのは『くれなくてよかった』もしくは『迷惑だった』という意味になるのでこれもダメだとかいうダメに関するノウハウだけで、じゃあ何を返せばいいのかという問いかけには『それを考えてあげるのが、男としての誠意だよ』と結局教えてもらえず終いだったのだ。
 なので一護は街をぶらつきながらあれこれ必死に考えた。考えに考えに考えて、考えれば考えるほどわからなくなった。何しろ井上織姫という人間は2人っきりの兄妹で貧しく育ったせいか、とても控えめな、遠慮がちな女の子なのだ。貰えるものは高ければ高い程いいと単純に考えたりしてくれず、もし変に高価な物をあげたりしたら『貰えないよ!!』と突き返される可能性すらあるのだ。
 そんなことになったりしたらそれこそ本末転倒だ。だがそれはせっかくあげたのに受け取って貰えないということに関してではない。断らせる、もしくは受け取って貰えてもそのことで気を使わせるということが本末転倒なのだ。何故ならお返しとはいえプレゼントはプレゼント。そしてプレゼントとは相手を喜ばせるために贈るのであって、困らせる為に贈るものではないからだ。
 だから一護は必死になって考えた。彼女に気をつかわせない金額で気に入ってもらえ、できればずっと側においてもらえるものか、ずっと使ってもらえるもの、となるとまったく思い浮かばなかったのだ。
 それでしばらくその『何か』を求め、街を彷徨い歩いたのだが結局決められないまま疲れ果て、のどの渇きも覚えたので、一護はふと目に入ったコンビニに入った。そしてざっと見回し、店の一番奥にある飲料が陳列してある冷蔵庫の方へ向かって歩き出す。
 しかしその前で女子高生たちが新商品がどうとここうとかたむろっていて近付きづらい雰囲気だったので少し待とうかと思い歩みを止めたその瞬間、とある商品が目に入った。そしてその商品の商品名を見た瞬間、一護の身体に衝撃が突き抜けた。
「─────!!」
 なんというか────そう、何というか、それは偶然というのはおこがましい、実にベタな展開だった。幸福をもたらすという青い鳥を探し求めて歩きまくって疲れ果てて帰ってきた兄妹が、自分チの鳥かごに青い鳥がいたことに後から気がついたときのように実にベタな展開だった。
 だがしかしこれしかないとマジで思った。これ以上に自分の気持ちを彼女に現すことができるお返しはないとこの時の一護は真剣にそう思ったのだ。(余談を付け加えておくなら後日あまりの自分のベタさにもんどりうってもだえまくることになるのだが、それはあくまで後日のこと)
 だって、 それを返せば『君が本命だよ』と一発でわかるマシュマロに、自分を連想させるシロモノが2つも合体しているのだ。これ以上自分が彼女に渡すお返しに相応しいものなどないだろう。
 問題はあきらかにお返しに渡すには安すぎるということだが、それはそれを理由に週末デートにでも誘い、食事を奢るなり、その時に彼女が欲しがるものを買ってあげるなりすればそれでOK。 なので飲み物を買う気で店内に入ったことも忘れ、その商品を1つ掴むと一直線にレジに向かった。そうしてレジの順番が来ると、自分と同じ年頃の店員に向かい、すぐさま速攻でお願いした。
「『これ』、ラッピングしてください。ホワイトデーのお返し用に」
 そういって一護が差し出すというより突き付けた商品名は『《無印良品》いちごチョコレートマシュマロ』お値段1つ105円。
 このお返しはまさに『プレゼントは値段じゃない』を再現する代物として織姫を喜ばせるものとなるのだが、その時がやってくるのは後48時間ばかり後になってのことである。





                                 THE END.







 書いたはいいけど、面白くないので載せるのやめようかと思ってた話です。でも投票でイチオリ結構人気あるので載せることにしました。
 作中に出てくる商品はもちろんあります。某ファミリ−マ○トとかで簡単に買えちゃいます。ですが私はマシュマロが嫌いでイチゴ加工物が苦手なので食したことがありません。でも見た瞬間『ベタだ!!』と思ったのでベタに使ってみました。一護って結構こんなことしそうなイメージが私にはあります。カッコつけようとして失敗しまくるっていう。でもそこが織姫とお似合いだとおもいます、はい。


 
 

 
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