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「はじめちゃん!!」
毎年恒例の、M2メンバー総出演の超豪華カウントダウンライブの幕がおりた早々、彼が発したその一声とそれに附随する満面の笑みにはじめはその身を震わせた。
「…!!」
正直、かなりヤバい気がする。過去の経験上、彼がこんな声とこんな笑顔をするときはとんでもないことがおこる時だとはじめの本能は悟っている。
だけど多分この瞬間彼をそうさせたのは、つい、実に『つい』(←ここ重要)自分がしてしまったこっぱずかしい行動に違いないとの自覚があるから、何とかそれをごまかすというか、なかったことにするために、はじめはそこで踏み止まる。きっと、いや絶対ここで逃げてしまっては収拾つかない状態になってしまうに違いないとやはり過去の経験に基づいた本能が教えてくれるから。
だから明らかに引きつっているのだが、いま出来る精一杯ではじめはニコリと笑った。
「はい、おつかれさま、江藤さん。お客さん、楽しんでくれたみたいでよかったですね」
そう言って、スポーツタオルを渡すというより押し付けて反転。いかにもすごく忙しそうに、その場を後にしようとする。
けれどそれを亮は許してはくれなかった。そんなはじめを背後からギュッと抱きしめてしまったのだ。
突然の彼のその行動に、はじめは思わず悲鳴をあげる。
「ぎゃっ!!」
冬の寒い時期のことゆえ、厚手のパーカーを着ているはじめにもわかるほど、広い会場内をところ狭しと走り回った直後だから亮の身体は熱かった。いつもより濃厚に薫る汗の香りに、一瞬でくらくらした。
だからいつ鼻血を噴き出してもおかしくないほど真っ赤かになりながら、はじめは絶叫した。
「なっ、何するんですか、江藤さん、こんなところで!!」
するとそんなはじめに対し、亮は実に平然と、当たり前のようにこう言った。
「『抱擁』」
「・・・え?」
単語会話はいつものことだが、通常日常会話で使用することのない単語をハイな状態で理解することは出来なくて、はじめがぽかんと口をあけると、亮ははじめの身体を腕の中で自分の向きに反転させながら、くり返しつつ付け足した。
「だから『抱擁』───いや『お礼』かな?すっごく嬉しかったから」
「なっ!!」
その言葉に今度こそはじめは反応する。
「なっ、何が『お礼』なんですか?!いきなりこんなところでこんなことして!!」
現実に立ち返ってみれば、周囲の誰も彼もが皆、2人の様子を窺っている。
いくら今2人がいる場所が完全なバックヤードでいわゆる身内だけだから恋人同士の行動や言動をしていても見過ごしてもらえる環境にあっても、それでもある意味だからこそはじめはすごく恥ずかしい。
けれど人目に無頓着な亮は平然と言い放つ。
「だって、さっきはじめちゃん、会場から俺に向かって─」
「わぁっ!!!!」
言葉を遮り、はじめはあらん限りに絶叫した。その音量たるや、隣の部屋に置かれていたコップの水が刎ねて周囲を濡らす程。
さすがにこうなると2人のやりとりを見て見ぬふりをしていた周囲もそうし続けるわけにはいかない。
だから亮はじめ双方共にとって大事な人であり、最も間に入りやすい瑞希が、はじめに向かって問いかける。
「いったいどうしたの、はじめちゃん?そんな大声出して」
「みっ、瑞希さん!!」
瑞希からの呼び掛けに、はじめは実際浮き上がったかのようにその場で姿勢を跳ね、それから再び絶叫した。
「なっ、何でもありません、瑞希さん!!何でもありませんたら!!」
だがそう言っているはじめの様子はどう見ても何もなかったとは思えない。
だからもう一方の当事者に、瑞希はその解説を求めて言葉をふった。
「亮」
「うん、あのね瑞希」
それを受け、亮がしゃべり始める。
「さっき、カウントダウンの最中はじめちゃんが─」
「わぁあああああああっ!!!!!!!!!!!!!」
再びはじめは大絶叫、しかも音量先ほどの3割増し。
さすがにこの音量には慣れない内は鼓膜をいためることがある程大きなライブのスピーカーでの音にも慣れている瑞希でさえ、思わず目を白黒させる。
「?!?!?!?」
しかしこのことが逆に瑞希やそして近くに居て成り行きをみまもっていた5つ子たちの好奇心に火をつけた。
あれほどの絶叫をするほどの何かが2人の間にあったということだ。これを知らずしてとても新年を始められない。
だからその瞬間屈託した5つ子プラスWEのWは、目配せしあい、行動に移す。
「ちょっとこっち来い、亮」
「「「ねぇねぇねぇねぇはじめちゃん!!」」」
綺麗にわかれた3人ずつが、それぞれはじめと亮を取り囲む。
「ちょっ、ちょっと!!」
「「「まあまあまあまあはじめちゃん」」」
その行動に意図に気が付いたはじめは抗議の声をあげるが、はじめ押さえ込み班あつきとたくみとなおとは瞬時に亮との間を遮り、その行動の邪魔をする。
その隙に瑞希は亮を控え室のはしっこへと導き、やや音量を抑えた、こそこそ声で問いかける。
「で、本当のところは何があったんだ?亮。はじめちゃん相当恥ずかしがってるみたいだけど」
その問いを受け、亮はやはり平然と、だけど嬉しくて仕方がないといった様子で、瑞希に向かって解答する。
「うん、あのね、さっきね──」
「わぁあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!」
再び三たびの大絶叫。
しかもそれだけで飽き足らず、はじめはこう付け足した。
「瑞希さんにさっきのことしゃべったらぶっ殺すわよ、江藤さん!!簀巻きにして東京湾にコンクリートつけて沈めてやるッ!!」
だがこの剣呑なひとことが、墓穴を掘る羽目となった。
ノリと勢いとそして怒りで絶叫したはじめに対し絶妙なタイミングをつき、なおとがこう問いかけたのだ。
「『さっきのこと』って?」
「だからあたしがみんなが新年のカウントダウンした直後客席から『亮、愛してる』って叫んでたってことって───あ。」
完全自爆───完膚なきまでの自滅である。
はじめとしてはこれだけは他の誰にも───特に亮本人には知られたくない事実だったのだ。
だっていくらたくさんの女の子達が亮に対し彼の事を呼び捨てにし、『大好き』だの『愛してる』だのを連呼しているのが何だかうらやましいやら、でもそんな彼女らより自分の方が絶対に亮のことを好きに決まってると思ってしまったやら、どうにも一言では言い表せない、複雑な思いを抱いてしまったからとはいえ、普段言えない『愛してる』を他の女の子達の声援にまぎれて呼び捨てで叫んでしまっただなんて、いくらなんでもこっぱずかしすぎる。絶対人に知られるワケにはいかない、墓まで持っていく重大な秘密の1つだったのだ。
なのにそれを亮当人にはどうやら見られてしまったか聞かれてしまっていたようだし、弟たちや瑞希およびその他大勢の人々に自ら暴露してしまった。
そのことで鼻血を吹くことも忘れるほどとんでもなく舞い上がってしまったはじめに対し、弟たちはからかうように言う。
「わ〜『愛してる』なんてはじめちゃん大胆だねぇ!」
「すごいよ、はじめちゃん。よくそんな本当のこと言えたね」
「うわ〜、はじめちゃん江藤さんスキスキなんだぁ」
「よく言った、はじめちゃん、エラいエラい」
「いくら大好きでもはじめちゃん、まだお嫁にはいかないでね!!」
しかもその横では瑞希が感涙までしながら亮の肩をバシバシたたき亮に祝福を述べ、そしてその祝福に亮は満面の笑みでこたえていた。
「よかったなぁ、亮。やっと大好きなはじめちゃんに『愛してる』って言って貰えて。しかも呼び捨てにしてもらえて」
「うん!」
そんな実にほのぼのとした、このときばかりはアイドルというより年齢相応の男の子達のやりとりにはじめは絶句する。
「!!!!!〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
何か非常に叫びたい。とってもとっても叫びたい。
けれど叫ぶ言葉が見つけられずにただ立ち尽くすだけのはじめの前で、はじめの恋人とその友人はこんな会話をし始めてしまった。
「おい、そうだ、亮。お前、はじめちゃんに『愛してる』って言ってもらったんだから、お前もちゃんとはじめちゃんに言えよ。『はじめちゃんのことが大好きだ』って、『世界で一番愛してる』って」
「うん、わかってる」
そうして亮はその言葉のままにくるりとはじめの方に振り返り、これまでになく真剣な瞳ではじめを見つめ、口を開く。
「ねぇ、はじめちゃん、俺─」
「きゃあああぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
その瞬間、新年4度目の大絶叫を残し、ついでに自分の周りを取り囲んでいた弟たちをそれぞれ1発でKOし、はじめは逃げ出していた。
そんなはじめの姿(&声)に瑞希は目を白黒させる。
「はっ、はじめちゃんっ!!」
はじめの奥手っぷり、初心っぷりは瑞希もよく知っている。はじめは下手すればそれ系の恥ずかしさに耐えるくらいなら、すべてをきっぱりなかったことにしかねないイコール亮と別れることをしかねない性格だ。
なのに少々やリ過ぎた、大分からかい過ぎたかと血の気が思いっきり引いてしまう。
だがそんな瑞希に対し、亮は『愛してる』の余韻でボケが増しているのか、のほほんとした表情のまま、小さく小首を傾げている。
「どうしてはじめちゃんってあんなに恥ずかしがるのかなぁ。ベッドの中じゃあんなに大胆で、すっごく素直な欲しがり屋さんなのに」
その言葉に瑞希は絶句する。
「亮──────」
その発言で親友とその恋人が思ってた以上にナカヨクやっていたことは理解出来たが、それでもこの時この瞬間にそれが思うことかよと、そうするのが亮と熟知しておきながらも思わずにはいられない。
だがとにかくそんな瑞希に、亮はどうして瑞希がそんな反応をするのか理解しきれぬまま、これからの行動について述べた。
「ま、とにかくこれから俺ははじめちゃんを追い掛けるよ。早くしないと死んじゃいそうだし」
「『死んじゃう』?!」
「うん」
その剣呑な響きに瑞希が思わず『まさか自殺?!』とますます顔を青くすると、亮はひとつ頷きその根拠を指で示してみせた。
「ほら、かなり大量みたい」
そう言って亮が示した先には赤というより緋色の斑点がほぼ一直線に、等間隔で並んでいた。それが示す事実はたった1つ。いつものように興奮しすぎたはじめが鼻血を吹き、鼻血を吹いたそのままで飛び出して行ったことに他ならない。
だから言葉少なにそれを示して、それから亮は瑞希に言う。
「だから5つ子たちの方は頼んだね。はじめちゃんは俺が責任持って、ちゃんと守ってみせるから」
そうして亮はヘンデルとグレーテルよろしくはじめの落とした鼻血の跡を追い、ライブ直後の疲労などまったく感じさせぬ足取りで颯爽と駆け出して行ってしまった。
その背中とその鮮やかさに瑞希は一瞬唖然とし、それから何だかおかしくなってつい小さくクスリと笑った。新年早々、幸せのおこぼれを貰えたようなそんな気がして───。
THE END.
新年お年玉企画の再録です。いつものようにジャニのカウントダウンをみながら妄想したネタです。タイトルは今後はじいちものは全部ジャニの曲からつけてやろうということで、タッキー&翼の曲からいただきました。ノリのイイナンバーで、06年クリスマスコンのラストの曲でもあったので、ちょうどいいかな〜ということで。。
とりあえずはじめちゃんが新年早々出血多量で死なないことを祈ります。。
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