はじめちゃんが一番! 亮×はじめ 

LOVE YOU ONLY




 岡野はじめ、渚家政大学被服科2年、本日9月19日をもって20才は、周囲から守銭奴、商人(あきんど)そしてサドと、言葉のラストに全部ドがつく聞き様によってはあまりイイ感じがしない形容詞を3つ揃えて持ってはいるが、その実じつは小心者で、痛むのが例え自分の財布でなく他人の財布でも彼女なりの『これが世間一般だ』理解の越えてしまうと自分の胃をキリキリさせる精神の持ち主だった。
 だからつい、本当につい、彼に悪気なんてなく、むしろ好意があるからこそ『こういう今』があるとわかっておきながら、痛くなる胃と頭が抑えきれず、思いっきり彼を怒鳴ってしまった。
「バッカじゃないのっ?!江藤さん!ああ、もう全然信じられないっ!こんなに無駄遣いするなんて、ホントいったい何考えてンのよっ!!」
 そう言いつつ、一旦は受け取ってしまったそれをはじめはかなり勢いよく、だけど傷つけたり損なったりはしないように、怒鳴った相手=恋人である江藤亮に突き返す。
 何しろ渡されて先程まで自分の手の中にあったのは、花屋いわくとても珍しい、入手困難な品種らしくおかげで1本700円もするバラ100本、つまり総額7万円もする超高級な花束である。そして7万円といえば8人家族である岡野家のほぼ一月分の食費に相当する金額。そんな高級な花束を亮はあくまで本日の誕生日プレゼントのオプションとしてはじめに渡してきたのだ。
 これほどの無駄遣いをどうして怒らずにいられよう。さっきも言ったが、彼に悪気がないことも、嫌味でもないことも知っている。7万円なんてはじめにとっては信じられない程の大金でも、日本で一番お稼ぎになっている男性アイドルデュオの片割れである彼にとって何でもない金額であるというそのことを暗に提示するつもりでしてきたわけでないことも知っている。
 けれど彼いわく『だって、この花が一番綺麗だと思ったし、年に1回の、それも20才なんて特別な誕生日に贈るんだったら、絶対この花がいいな、ってそう思ったんだもん』であっても、はじめの金銭感覚がおいそれとこれを受け取ることを許してなどくれないのだ。
 だから嬉しいのに怒ってしまい、怒ってしまってる自分が悲しいというパラドックスに苦しみながら、はじめがぜいぜいと怒鳴ってしまったがゆえに乱れた息を堪えていると、突き返された花束の向こうで亮は平然かつあっさりと、こんな言葉を吐き出した。
「う〜ん、何って、はじめちゃんのこと?」
「!!!」
 そのあまりに臆面のない、率直すぎる言葉にはじめは速攻で真っ赤に染まる。
 だが恋人として付き合いはじめてすでに1年の免疫と、発せられた言葉に明らかについていた疑問符ゆえにどうにかこうにか鼻血は堪え、堪えたがゆえに絶叫する。
「なっ、何よそれっ!!ってかどうして疑問系なのよ!?」
 だが言葉では疑問のカタチをとりつつも、はじめは『またどうぜ瑞希さんに何か言われたからなんだろうな〜』勝手に結論を付け、そしてそのとおり発せられるであろう返答に心の準備を整える。
 何しろ付き合い始めて以降今日まですべての恋人同士のイベントおよび記念日は『プロデュースBY和田瑞希』』だ。ミサキと付き合っていたとはいえそれはほとんど形だけのいわゆるおママゴトの域を出なかったもので、女の子とまともに付き合ったことがない亮はそれらのイベントが近付く度に瑞希からアドバイスをされたり、アドバイスされにいったりしているのだ。
 だから今日も今日とて何もかもが瑞希の発案もしくは提案のものであり、下手すれば別に用意されている誕生日プレゼントすら瑞希が選んだものではないかとはじめは疑っている程だ。
 なのでそれが嫌なわけではないけれど、過剰の期待をせぬ為にも自らを律する意味も含めて発した言葉に、亮はさらに疑問を重ねた。
「だって今日ははじめちゃんの誕生日でしょ?だから主役ははじめちゃんで、はじめちゃんを喜ばせるのが恋人である俺の仕事で、俺のしなきゃならないことじゃない。けど、そのことはちゃんとわかってるんだけどさ、どうしても『はじめちゃんのことだけ』を考えるのは無理っていうか、考えることが出来なくて…」
 その言葉にさすがのはじめもカチンとくる。
「何ィ?!」
 江藤亮がこういう人間というか、こういう生き物であることは充分重々承知している。けどこれはあんまりだ、あんまりすぎるっていうか、いくら何でも、何でもすぎる。
 だからたとえ相手が天下のアイドルさんとはいえ、あまりにひどすぎるこの言い様に顔面に一発ぶち込んでやらなきゃ気が済まないと思わず手を振り上げかけたその時、亮はいつものようにぽつぽつと、自分の口調で吐き出した。
「だってどうしても『どうやったらはじめちゃん、もっと笑ってくれるかな〜』とか、『何あげたらはじめちゃん、喜んでくれるかな〜』とか、『どうしたらはじめちゃん、俺のこともっともっと好きになってくれるかな〜』って、そんな風に考えちゃってさ、どうしてもはじめちゃんを喜ばせたいというより、結果俺が嬉しくなることばっかり、ついつい考えちゃってるんだ」
 その言葉に怒りも忘れ、はじめはただただ絶句する。
「…なッ!…」
 ホント、何でよりにもよってこんな男に、こんなタチの悪すぎる男に惚れてしまったんだろうと、はじめは己の不覚を反省する。
 だって彼は無意識なのだ。意識せずこんな熱烈な、イコール『それだけはじめちゃんが大好きです』もしくは『はじめちゃんを愛してるんです』なんて言葉を素で吐いてくるのだ。
 こんな男を好きになって、しかも愛してしまうだなんて、自分があまりに愚かすぎる。
 しかもその証拠に、こんな言葉まで続けてきたのだ。
「ホントゴメンね、はじめちゃん。けど代わりって言っちゃなんだけどさ、俺、瑞希からはじめちゃんの20才を最高の形で祝う方法しっかりレクチャーされてきたから、それで俺を許してよ。都合がよすぎるっていうか、勝手だとは思うけどさ」
「ホントに、よ」
 そう言われてしまったら、そう返すしか出来なくて、はじめはどうしても乱れてしまう心臓と心のドキドキを必死で押さえ込みながら、だけど彼は彼なりに彼ができる精一杯で自分の為に何かしようとしていることはわかっていると伝えたいから、さらに続けてこう告げる。
「じゃないとあたし、そんな身勝手な江藤さんを絶対絶対許さないし、もうこれ以上絶対に好きになったりしないから、しっかりちゃんと祝ってよ」
「了解、はじめちゃん」
 そんな思いっきり照れまくった、照れまくったが故にぶっきらぼうになっているはじめの言葉に亮は笑い、絶対として彼女に向かいそのことを強く誓ってみせた。
「最高の夜をプレゼントするよ」

 ────こうして和田瑞希プロデュースによる最高の夜は幕をあけたのだが、この後メインイベントであるオプションでない誕生日プレゼントに3カラットはあるダイヤとサファイアの婚約指輪を渡されて、はじめがついにこらえにこらえた鼻血を噴いてしまうのだが、それはそれの別のお話。


   THE END.   






 はじめちゃん誕生日記念です。無意識に告白し悩殺しまくる亮が書きたかっただけの話っす。
 にしても、亮さん、瑞希が乗り移ったみたいにタラシ。。。これも瑞希レクチャーなんすかね??
 あ、毎度恒例ジャニ曲タイトル、今回はTOKIOです。もうこのバカらぶっぷりはこれしかないでしょう(断言)


 
 

 
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