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散歩は好きだけど人込みが嫌いな類との初詣デートは、明治神宮や浅草寺などメジャーで定番なところではなく、つくしの住んでいるアパートと類の家のほぼ中間にあるこじんまりした神社だった。
しかも今日はすでにもう6日────元日はおろか三が日も通り越した、巷では正月気分が抜け始めている頃である。
というのは、確かに類の為に人込みをさける意図もあったがそれ以上に、大学は英徳ではなく外部の国立大学に進み、さらに父親が再就職出来た為、高校時代ほどではないが、それでもまだまだ貧乏なつくしは時給が通常時の5割り増しになるお正月期間はかき入れ時だったし、類の方も大学に進んでからぼちぼち花沢の跡取りとして将来を見越して活動しはじめていたため、挨拶周りのパーティー等で忙しかったため、のんびり出来る時間がとれたのがやっと今日だったのだ。
だからF4のお祭り男たち、あきらと総二郎主催による年末28日のつくしの誕生日パーティーで会って部屋まで送って貰って以降、9日ぶりの恋人との逢瀬に、つくしは浮かれ気分だった。
なので小銭を持ち歩かない類の分も用意しておいた5円玉を景気良く2つ放り込んで、柏手をうち、大きな鈴を勢いよく鳴らした後、神様にお願いしたことは英徳に進学して以降毎年すっかり恒例となってしまっていた『今年こそ貧乏脱出出来ますように』ではなく、『今年はもっと花沢類と一緒にいられますように』という、年頃の恋する乙女らしい、幸せに満ちたものだった。
そうして2人参拝を終え、すっかり冷えきった身体をあたためるべく暖をとろうと近所にある、舌の肥えた類の口にも合う、美味しいコーヒーショップに向かった。
その道すがら、つくしは類に問いかけた。
「ねえ花沢類、花沢類は何を神様にお願いしたの?」
「何も」
「え?」
そのまさかの解答につくしは小さく目を見開く。
「『何も』って、花沢類、なんにもお願いしなかったの?」
「うん」
まず頷き、それから付け足す。
「だって別に神様に頼まなきゃなんないような欲しいもの、いま別に俺ないし」
「確かに」
その理由につくしは素直に納得する。
「花沢類『欲』っていう『欲』がないもんね〜」
自分なら5円もお賽銭にあげたのだから、絶対叶えろと目一杯神様に、渾身の力でお願いをする。けれどそんなことをしなくても彼は何でも持っているのだ。見た目も身長も、健康で健全な肉体も、欲しいモノを何でも買える充分すぎるほどのお金も。
ただそれでも強いて言うなら。
「花沢類にある唯一の『欲』って『睡眠欲』ぐらい?」
それしか思い付かないくらい、彼は何でも持っていて、何でも出来るような気がする。
そしてそんなつくしの納得に対し、類自身も同意した。
「確かにそうかもね」
そう頷き、それからその証拠とばかりに言葉を紡ぐ。
「俺、寝ることとテレビ見ることくらいしか趣味らしい趣味ってないし、服も着れてりゃ充分だし、クルマも今持ってるあれで充分だし、性欲っていう性欲もないし」
「せっ、『性欲』ゥ?!」
いきなり出てきたその言葉につくしは真っ赤になる。
だがそんなつくしを類はおもしろそうに笑って、きっぱり頷きこう言った。
「うん。俺、自分で言うのもなんだけど、このトシの男にしたら性欲少ない方だと思うけど?」
「えっ!!あれで?!」
思わずますます真っ赤になり、ますます目を見開いたつくしをからかうように類は笑う。
「あれ、牧野、何か想像した?」
「!!、〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
その言葉につくしはますますの上にさらにますます真っ赤になり、限界を越えた恥ずかしさから、両目を思いっきり潤ませ、小さく小刻みにフルフル震えた。
そしてそんなどんなに身体を重ねるようになっても、いつまでも慣れるというかすれることのないつくしの純真っぷりに、類は幸せそうに微笑んで、そっとその手を差し出した。
「じゃあ行こうか、牧野。早くコーヒー飲んであったまって、それから牧野の部屋に戻ってもっとカラダ温め合おう。それとも」
いったん意味ありげに区切り、そして付け足す。
「それとも牧野、今日は正月だから、俺にホテル代奢らせてくれる?」
その明け透けすぎる発言に、つくしは思わず飛び上がっても不思議でない程、全身をびくりと震わせてしまった。
「!!!」
もう、何がなんだか判らなくなるほどに、恥ずかしくて、恥ずかしすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
けれど花沢類が────世界で一番大好きな花沢類が、こんな風にからかって、こんな風に求めてくれるのは世界で自分だけだから、だから恥ずかしさを乗り越えて、懸命に口を開く。
「───────……でいい」
「ん?」
うつむき加減だし、その声があまりに小さすぎて聞き取れなかった類が、その顔を覗き込むように、長身の背中を少し丸めて、首を斜めに傾けると、つくしは真っ赤すぎるほど真っ赤なまま、ガバリと勢いよく頭をあげ、潤み切った瞳のまま、だけどきっぱりとこう言った。
「『あたしの部屋でいい』って言ってんの!ホテルなんてそんなのお金もったいないじゃない」
「!!」
その実につくしらしい言葉と勢いに類は一瞬目を見開き、それからいつものようにクスリと小さく綺麗に笑った。
「わかった」
そうしてつくしの右手を自分の左手で握り、自分のコートのポケットに握ったまま突っ込んで、うっすら雪が舞い出した街をいつものペースで歩き出した。
いつものことが一番幸せなんだという、そんな当たり前をあらためて噛み締めながら────。
THE END.
新年お年玉企画兼花男ドラマ放映開始記念を兼ねた類つく再録です。
先程公開された読み切りでつくしが類を呼び捨てにしておりましたが、あれ、ちょっと私的に好きじゃないので、あえてフルネーム呼びを続行させていただきました。
ひさしぶりに書いたのでテンポ出てたかちょっと心配っす。
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