「………え?」
総司は久方ぶりに自身で感じた感触に、思わず目を見開いた。
これまではここ数年、自分で感じたことはなかった。だって自分で流さなくとも自分が流す分の涙を流してくれる人が居たから。
けれどこれからはそうはいかないらしい。というか、それはそうだとすぐさま思う。だって今流している涙は自分の代わりに涙を流し続けている人を思っての涙───彼女を失っての涙なのだから。
だから総司はいつか彼女が言っていた通り、自身の意志に反して勝手に滴り落ちてしまう涙を、あまりにひさしぶりに泣く所為で拭い方を忘れた手でなんとか拾い集めながら、そうあることの今と過去をほんの少しだけ思った。
「ホントバカですよね、神谷さん。どうせ私はもうすぐ死ぬのに、私をかばって死ぬだなんて」
そうして漏したつぶやきと涙は、深い緋色に隠れて消えた。事実そうであることの何より確かな証として───。
THE END.
日記に載せた激短文です。あまりの短さに再録はためらったのですが、自分では気に入っている作品なのであえてアップしました。
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