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「ハッピーバレンタイン!皆、大好き!!けどもちろん月への以外は義理だから、そこのところはよろしくね〜」
そう言ってチョコレートを配っているミサはその時それでもその部屋の中の女神だった。
何しろキラ対策本部には彼女を除けば男しかいない。なのでよく言って『男むさく』、ハッキリ言えば『男クサい』状態なのだ。だからハッキリ義理と公言されまくっているとはいえ、それでもテレビでのレギュラーを持つほどの美少女からチョコレートをもらえるなど、とんでもない僥倖だ。
特に最近ではマネージャーとしてミサに四六時中付き添い、彼女の独特な魅力の虜となっている松田などは『当分食べずに飾っておきます!!』と宣言し、実際部屋に持って帰ってテーブルに飾ってきていたりする。
そうしてこの部屋の中に居たメンバーにあらかた配り終えると、ミサは最後の最後にこの部屋というか、ビルの家主であり、この組織のトップであるLの前に立った。
「はい、竜崎にもチョコレート!」
そう言ってミサが差し出したのは、明らかに他のメンバーに配られたチョコとは違う包みの箱だった。その大きさから考えると普通のチョコではなく、ケーキなのだろう。しかも手作り。
そしてそれは事実であり、ミサは箱をLに押し付けながら、恩着せがましくこう言った。
「竜崎甘いもの好きだから、ミサ、手作りしたんだよ〜。会心の出来なんだから、絶対残さず綺麗に食べてね」
そう言ってニコリと笑って見せた姿はどう見ても天使で、よく見れば悪魔。というのは、その普通の人より色素が薄い瞳には明らかに『何かやりました』というのが見え見えな感じでいたずらに輝いていたからだ。
そしてそのことをよく言えば観察力の鋭い、悪く言えばめざといLが気が付かないワケがない。
だから一瞬目をしばたかせ、3度まばたきをくり返すと、明らかに作った様子でうやうやしく、そのドデカい箱を受け取った。
「どうもありがとうございます、ミサさん。嬉しいです」
とりあえず、そう言い、それから付け足す。
「だけど『これ』、本当に私が頂いていいんですか?本当に、『本当に』私が頂いていいんですか?」
「─え??」
その奇妙にふくまれた言葉に、ミサが小さく目を見開いた。それを受け、Lは言う。
「だってそうでしょう?このチョコレートケーキ、ミサさんの研究の成果の固まりじゃないですか。つまり愛情たっぷり!なのに月くんを差し置いて私がいただくのは果たしてどうかと」
「それなら大丈夫!」
Lの言葉にミサはすかさず返答する。
「月のは別に用意してあるの。だから遠慮しないでよ」
「そうですか?」
「そうそう!」
「わかりました」
その満面の笑みでの返答を受け、Lは頷きそして言う。
「じゃあ後でたっぷりガムシロップでも掛けていただきますよ。ミサさんの愛情がたっぷりつまった、カカオ99%のチョコレートを使った、この全然甘くない、それどころかすごく苦いケーキをね」
「・・・え゛っ?」
その言葉に思わずミサは固まる。 事実寸分違わずLの指摘どおりだったからだ。
だから驚愕に目を見開き、 冷や汗をダラダラ流しながら、どうしてわかったのかと問いかけた。
「どっ、どうして??」
「私を甘く見てもらっては困ります、ミサさん」
そんなミサにまずそう言い切り、それから言う。
「私の甘味へのあくなき追求心はとどまるところを知らないんですよ。だからこれくらい朝飯前です」
その言葉と過分無き自信に、ミサは大きなため息をつく。
「はぁあ。。。」
実はミサは普段月を独り占めしてことごとく月との邪魔をしてくるLに腹を立て、このバレンタインを絶好の好機として甘いモノ好きなLに復讐しようとこのケーキを作ってきていたのだ。
それなのに一口食べるどころか、箱をあけるその前からその仕込みを見抜かれてしまうなど、まったくもって完敗だ。ここまでくると悔しいと思うことすら全然出来ない。
だからため息をつくしかなくなってしまったミサに向かい、Lは言う。
「なのでミサさん、この愛情とカカオのいっぱいつまったチョコのお礼はもう注文しておきましたから、1月後のホワイトデーを楽しみにしておいてくださいね。ちょうどいいサイズのピンクダイヤが出回ってましたから、それを指輪にしてもらうよう、ネットで手配しておきましたから」
「え?!」
その言葉に落ち込みも忘れ、ミサは思いっきり目を見開く。
「『ピンクダイヤ』?!、それに『指輪』って?!?」
その激しい疑問符に対し、Lは当たり前のように言う。
「だってこんなに愛情たっぷりなモノを頂いてしまったら私、あなたと結婚するしかないでしょう」
「だっ、誰がッ!!」
ミサはすかさず絶叫する。
「『愛情』なんて込めてないッ!!絶対絶対込めてない!!」
だがそんなミサに向かい、Lは平然と言い放つ。
「フフッ、そんなにテレなくていいですよ、ミサさん。あなたの本当の気持ちはちゃんと私の胸に届いてますから」
「ウソつきっ!!」
「ウソじゃありませんよ。本当ですって」
まずそう言い、それから手をとり、Lはニコリと笑ってこう言い切った。
「だから安心して嫁いできてくださいね、ミサさん。私が必ずあなたのことを幸せにしてあげますから」
そうして軽くこめかみと右目目蓋の間にチュッと口付け、ついでに舌先でペロリとなめるオプション付き。
「!!!!!」
その感触にミサは瞬間身を固まらせ、それから思いっきり絶叫した。
「こら〜〜っ、竜崎〜〜〜!!!!!!!!」
「ハハッ」
そうして振り上げられ、繰り出される拳をどれも綺麗に避けながら、Lは楽しそうに笑う。
この瞬間、この時だけは凶悪犯罪者を追う探偵『L』ではなく、1人の人間、1人の男としての自分をしごく満喫しつつ。
だから最後の最後、あえて1発だけボディーブローを受けながら、Lは心から囁いた。
「ホント、あなたには完敗ですよ、ミサさん。私はあなたには敵わない」
その言葉だけがたった1つ、Lが彼女に告げられる真実であり、彼女に捧げる真実だった。永遠に本当には伝わらない、たった1つ、本気で正真正銘の────。
THE END.
バレンタイン企画再録。初ちゃんとした文章でのLミサです。
私が大嫌いな高カカオチョコレートをネタにしました。そして今年はミサがやったような嫌がらせが続出してそうだということも合せてネタに。。
ぜったいあれ系のチョコレートって詐欺だと思う。間違って買ってしまったときの衝撃たるや凄まじく、きっとLなら私の気持ちをわかってくれるのではないかと思い書きました。
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